六十話
新章九尾と歌を探す旅の開始です
宿、中庭
キスを終えた二人は暫く抱き合っていたが明日奈から離れると背を向ける
(・・・落ち着け、もう!落ち着きなさい!私!)
どうやらウィリアムに会えた事で舞い上がった気持ちを落ち着かせようとしているらしい
「ふぅ・・・」
そして一分後落ち着いたようだ
「それでウィリアム君?なんでこの世界に居るのかしら?」
明日奈はウィリアムの方に向き直るとウィリアムに何故この世界に居るのか聞く
「ん?響に手伝って貰ってたまに開くって言う次元の狭間の入り口を探したんだ、それで次元の狭間の入り口を見つけてさ、飛び込んでみたらこの世界に来れたって訳さ」
「そう、でも待っていたら私は絶対にあなたの所に帰ったのに・・・」
そう言うと明日奈は俯向く
「待ってられるかよ、もうすぐ結婚って言う自分の嫁さんが目の前から消えたんだぞ?いても立ってもいられねぇよ」
ウィリアムはそう言うと俯いている明日奈の頭を撫でる、頭を撫でられた明日奈は嬉しそうな顔をして顔を上げる
「そうね、私達あの後結婚式を挙げる予定だったのよね・・・」
明日奈とウィリアムは明日奈が前回の最後の戦いを終えた後結婚式を挙げる予定であった、だがその結婚式は明日奈がこの世界に迷い込んでしまったので、挙げることは出来なかった
「そうだ、それなのにお前は居なくなっちまった、そんな状況で俺が大人しく待ってられると思うか?」
「ふふふ、無理ね」
明日奈はウィリアムの性格を考えると待つのは不可能だと思い微笑む
「よく分かってるじゃねーか」
「だって私はあなたのお嫁さんだもの」
よく分かってると言われた明日奈はフフンと胸を張る
「そうだな、だから早く帰って結婚式を挙げよう、皆待ってるぜ?」
「ええそうね、絶対に帰りましょう、それでね?ウィリアム一つあなたに言わなきゃいけない事があるの」
「なんだ?」
嬉しそうに微笑みながら言わなくてはいけない事があると言う明日奈に、ウィリアムはどうしたのか聞く
「私のお腹にね?」
「うん」
「私達の赤ちゃんがいるの」
「・・・マジ?」
明日奈の言葉にウィリアムは一瞬固まったがすぐに本当か聞く
「うん、マジよ」
「そうか・・・そうか!ハハハ!やったぜ!」
明日奈が自分との子供を身篭ったと聞き嬉しくなったウィリアムは、明日奈の腋を持ち抱き上げるとクルクルと回る
「尚更早くあっちに帰らないと行けねぇな」
そして落ち着いたウィリアムは明日奈を降ろしまた抱き締める
「頑張ろうな」
「うん」
そしてウィリアムと明日奈はもう一度キスをした
ウィリアムと明日奈は宿の中に入ると誰もいない食堂に向かい椅子に座る
「それで明日奈、お前仲間はいるのか?」
「いるわよ三人ね、もうすぐ起きてくるだろうからその時に紹介するわね」
「分かった」
ウィリアムは立ち上がると明日奈の横に座り右手で明日奈のお腹に触れる
「ここに俺達の子供がいるんだな、何人いるのか分かってるのか?」
「ホワイトローズが言うには二人いるみたい」
「双子かぁ、可愛いんだろうなぁ」
「ええ、早く顔を見たいわ」
二人は生まれて来る子供達の事を思い幸せそうに笑い合う
二人が互いにこれまであった事を話し合っていると、一人食堂に入って来るものがいた、シュルクだ
「おっ明日奈起きてたのか、あれ?あんたは昨日の」
「おう、風呂場以来だな」
前日のお風呂での会話で何か通じ合った二人はグッと握手をする、明日奈はそれを見て首を傾げるしかない
「ねぇシュルク、ウィリアムとあった事あるの?」
互いの事を知っているような様子の二人を見て、明日奈はシュルクにウィリアムの事を知っているのか聞く
「おう、昨日風呂場でな」
「ふぅん」
「明日奈もこの人と知り合いなのか?」
今度はシュルクが明日奈とほぼ同じ質問をする
「ええ、私の未来の夫なの」
「は?夫?」
「そう夫、これを見たら分かると思うわ」
明日奈はウィリアムが同じく首に付けている指輪と自分の指輪をシュルクに見せる、それはペアとなる者達の結婚指輪だ
「ああ、よーく分かった、それでウィリアムはなんでこの世界に?」
シュルクは何故ウィリアムがこの世界にいるのか聞いて来る
「私を追って次元の狭間の入り口を探し出して見つけて、飛び込んでここに来たみたい」
「そうか、すげぇな」
そして明日奈がこの世界に来た理由を軽く説明し、シュルクはウィリアムの行動を大切な人の為ならそこまで出来るのかと思い、素直に凄いと思った
「それでウィリアムは俺達の仲間になるのか?」
そしてシュルクは話を変えウィリアムが仲間になるのかと二人に聞く
「そう言えば聞いてなかったわ、どうするの?」
ウィリアムがこの後どう行動するのか明日奈も聞いていない、なので明日奈からもウィリアムはどうするのか聞く、勿論明日奈としては側に居て欲しい
「勿論お前の側に居るさ」
ウィリアムは明日奈の頭を撫でながら、明日奈の側に居ると言った
「そう」
明日奈はそんなウィリアムの言葉に顔を赤くして俯いた
「そうかならよろしくな!ウィリアム」
「おう!よろしく頼むぜ、シュルク」
男二人はまたグッと握手した
メリアと白花も起きて来てウィリアムの事について明日奈が紹介をし明日奈のお腹に子供がいる事も説明された、そして現在明日奈はメリアの質問攻めにあっていた
「それじゃあ最後!私達も二人の結婚式に呼んでくれるよね?」
どうやら最後の質問のようだ
「勿論、あなた達にも来て貰うわ絶対にね」
「それなら安心、ねぇお腹の赤ちゃんの音聞いてみても良い?」
「私も聞いてみたいです!」
「ええ」
明日奈の許可が出たメリアと白花は明日奈のお腹に耳を当てる
「何にも聞こえないね」
「まだまだ小さいもの」
「もうちょっと大きくなったら聞こえるのでしょうか?」
「多分ね」
音を聞けなかったメリアと白花は少し残念そうに明日奈のお腹から頭を離すと明日奈から離れた
「それじゃそろそろダンジョンに向かいましょうか」
明日奈が四人にダンジョンに向かおうと号令を出し五人は宿を後にし世界脱出クエストに向かった




