四十七話
ダーマフィール平原
タチの町を後にした明日奈達は首都グランラミスに向かう為ダーマフィール地方平原を歩いている、途中大きな山と深い森を経由し越えた先がグランラミスだ
「・・・」
「明日奈、どうしたの?」
メリアは頭の上の狐の耳を少し後ろに向けて音を聞いているらしい明日奈にどうしたのか聞く
「・・・なんか付けられてる気がするの」
勘ではあるが、なんとなくタチの町に居た頃から現在まで同じ気配がずっと着いて来て居る気がしているのだ、なのでその者の足音などが聞こえないかと耳を済ませている
「え?居ないよ?」
メリアは振り返って明日奈が言う付けて来て居る者が居ないかと確認してみるが、そんな姿は見えない
「気のせいじゃねーの?」
「いや、この気配は多分・・・ちょっと待ってて!」
恐らくは明日奈にだけ分かる気配なのだろう、何者かが居ると確信出来て居る明日奈はメリアとシュルクを残し、その気配がする場所に向かって駆け出した
「うーん、分かんないよね?」
「あぁ、気配なんかしねぇ、まぁ妖狐の鼻と耳と勘はマジで凄いって聞くからな、俺たちには分からないけどあいつには分かるんだろうさ」
駆けて行った明日奈を見送ったシュルクとメリアは近くの木陰の下に入ると二人でのんびりと話しながら明日奈が戻って来るのを待つ事にした
気配がする方向に走り始めるとその気配も逃げるように走り始めた気がする、犬人系の者達は逃げる獲物を追い掛けるのが大好きだ、己の本能が喜んで居るのを感じながら明日奈は見えない気配を追う
「付けて居るのがバレたから逃げるんでしょうけど待ちなさい!」
待てと言われて待つ者は基本的には居ないのだが、その気配は違うようだ、その気配は急に立ち止まった
「おっとっと、止まってくれるのね・・・止まるのなら姿を見せてくれない?」
明日奈も止まり、気配に姿を見せてくれないか?と聞く、気配が何者か勿論分からないので一応剣を抜いておく、左手は銃をいつでも抜けるようにホルスターに触れている
「・・・」
明日奈に言われた通り気配は姿を見せてくれた、その姿は明日奈と同じ頭に狐の耳、尻に狐の尻尾を五本生やした女性の妖狐だ
「やっぱり妖狐だったのね、何か用?」
明日奈はなんとなく付けて来て居るのは妖狐ではないかと思っていた、その勘は正解だったようだ
「はい、玉藻神狐様、貴女様がこの世界にいらっしゃった事は貴女の気配がこの世界に現れた時に我々は存じておりました、ですので我々の里の近くまで貴女様がいらっしゃったので今回ご招待しようと思い、貴女様に会いに来ました」
どうやらこの妖狐は自分を玉藻神狐、明日奈の母と勘違いしているようだ、そして自分を彼女達の里に招待したいようだ、だが自分は神狐では無いのでまずはその誤解を解くことにした
「ちょっと待って私は玉藻神狐では無いわ、私は久城明日奈、まぁ名乗るとしたら玉藻明日奈?かしら」
明日奈のこの言葉に妖狐の女性は暫く驚いた顔をして固まっていたが、すぐに再起動し
「玉藻神狐様のお子様!?まさか我々がこの世界に迷い込んでいる間にそんな喜ばしいことが起こっていたなんて!あぁ里の皆に早く話してあげないと!」
明日奈の手を引き何処かに行こうとする
「ちょっと待って!私はまだ行くなんて行ってないわ、それに私の仲間も行くなら一緒じゃ無いと絶対に行かないわ」
シュルクとメリア、この二人を放って何処かに行くつもりなど一切ない、その里に行くのなら二人も一緒だ
「も、申し訳ありません姫様、お仲間が確かにいらっしゃりましたね、それではお仲間二人を呼びに行きましょう!」
「やっぱり姫様なのね・・・分かったわ二人の所に行きましょう、貴女名前は?」
妖狐達は決まって明日奈を姫様と呼ぶ、明日奈は妖狐達の最上の神と言っても良い神狐の娘なので仕方ないのだろうが、姫と呼ばれ慣れていない明日奈にとっては恥ずかしい
「白花です」
「白花か、綺麗な白い髪と尻尾だからかしら?」
「そうです」
「そう、ふふっ、じゃっ行きましょう」
「はい!」
白い妖狐である白花と明日奈はシュルクとメリアの元に向かって歩いて行った
ここはシュルクとメリアが休んでいる木陰、シュルクとメリアは明日奈の隣に居る白花を見て本当に居たんだ、と驚いた顔をしている、その二人の顔を見て明日奈は若干ドヤ顔をした
「明日奈、その人は?」
メリアは早速明日奈に白い妖狐である白花の事を聞く
「白花よ、それでこ・・・」
「始めまして!姫様のご友人方!私の名前は白花と言います!」
明日奈の言葉を遮り白花が自己紹介をした、バッとメリアに近付くとブンブンと勢い良く握手をした、勿論シュルクにもブンブンと握手した
「う、うんよろしく」
「よ、よろしくな」
メリアとシュルクは白花の勢いに若干引いている
「・・・それでこの人が言うには私をこの人達が住んでいる妖狐の里に案内したいみたいなの、私としては行きたいんだけど、二人も行く?嫌ならタチの町で待ってて?」
妖狐の里に行くのは完全に明日奈だけの用事、ならば二人に迷惑をかける訳には行かないので二人が行かないと言うのならタチの町で待ってて貰うのだ
「私は行くよ、妖狐の里ってどんな感じなのか気になるもん」
「俺も気になるから行くぜ」
二人はどうやら妖狐の里に来てくれるようだ
「姫様!来てくれるんですね!」
話の流れから明日奈が自分達の里に来てくれるのだと理解した白花は嬉しそうだ
「ええ、案内してくれる?」
「はい!こちらです」
白花は意気揚々と妖狐の里が有るので有ろう方向に歩き始めた、明日奈達三人はその背中の後を着いて行く
「それはそうと明日奈、姫様って?」
メリアは白花が明日奈を姫と読んでいたのが気になったので何故そう呼ぶのか明日奈に聞く
「私のお母さんって妖狐の中でも最上の神って言っても良い人なの、だから私の正体を知ったら皆私の事を姫様って呼ぶの」
「そうなんだ、明日奈って神様でもあるし、妖狐達のお姫様でもあるんだね、これからは私も姫様って呼ぼうかなぁ」
「おっ!良いなそれ」
メリアはニヤニヤしながら明日奈を少し弄る
「辞めて、貴女達まで姫様なんて言い出したら恥ずかしくて死んじゃうわ」
「ふふふ、嘘だよ、楽しみだね妖狐の里」
「そうね、楽しみね」
明日奈達は妖狐の里に向けて歩いて行く




