三十二話
三章狼と狐の追い掛けっこの開始です
都市サボール
朝、明日奈は自分の新たな使命を示した夢から目を覚ます
「・・・私に上手く出来るのかしら」
明日奈の胸中は不安で一杯だ、確かに過去の無の巫女達は無を封印の歌を歌い封印出来て来た、だがもし封印の歌が通じなければどうなるのかを考えると不安で不安で仕方ない
「それに、この世界から脱出する為には歌を探せってルーシィさんは言ってた、でもその歌が何処に有るのか教えてくれなかったなぁ・・・」
そうルーシィは歌を探せとのヒントをくれたがその歌が有る場所は教えてくれなかった、どうやら歌が何処に有るのかは自分で探せと言う事らしい
「まぁ多分世界脱出クエストの何処かのダンジョンに有るんだろうけど、時間かかりそうね・・・」
明日奈の推測通り歌は世界脱出クエストの何処かのダンジョンの石碑に書かれている筈だ、つまり明日奈達は世界脱出クエストを受けて行き歌を見付ければこの世界から脱出出来るのだ、勿論この世界に閉じ込められて居る他の人々も含む
「かなり急がなきゃ行けないわね、この子達が産まれちゃう」
明日奈のお腹の中にはウィリアムとの子が居る、そして出来れば明日奈は地球でお腹の中の子を産みたい、だから急ぐ必要がある
「頑張らなきゃね、うん頑張る」
明日奈はベッドの上でガッツポーズをし、この世界から脱出すると言う決意をさらに強めた
都市サボール、港
ここは都市サボールの港、ここから別の国に行く為の船が出る、明日奈達はここからまたシーキア国の中心に戻るのは時間がかかる為このアンダーワールドを一周し最後にはシーキアの中心に戻って来ることにしたのだ、現在はこの港から行ける二つの国のどちらに行くのか悩んでいる
「ここから行けるのは砂漠の国サンダーラと、水の国シラーラだって、どっちに行く?」
案内板を見て行ける国を確認したメリアは仲間二人にどっちの国に行くか聞く
「うーん、シラーラは涼しそうでサンダーラは暑そうねぇ・・・よしシラーラに行きましょう、暑いのは嫌」
犬人族は暑い気候はそんなに得意では無いのだ、だから明日奈としては後回しにしたい
「おいおい、そんな理由で決めるのかよ、まぁ良いけどさ」
そしてシュルクとしてもどっちの国に行っても良いのでまぁ良いと言い、あっさりとどちらの国に行くのか決まった
「それじゃ船のチケット取って来るね!」
メリアは大陸間を移動する船に乗るのは始めてで有る為テンション高めである
「うんお願いね、メリア」
そして明日奈はそんなメリアを微笑ましげに見ていた、その姿に地球に置いて来てしまった大切な白い髪をした妹の姿を重ねて
大海原
三人は現在船の甲板の上で海を眺めている、広い広い海は何処までも続いており壮観である
「見て見て!明日奈!イルーカだよ!」
「名前イルカじゃ無いんだ・・・」
三人が見つめる先にはイルカによく似たイルーカが楽し気に海を泳いでいる、だがその姿はどう見てもイルカである
「可愛いね」
「そうね可愛いわね」
どう見てもイルカであってもその姿は愛らしい、他の乗客が餌を投げるとイルーカは嬉しそうな声を上げて餌を受け取り機嫌が良さそうにジャンプする
「嬉しそうだな、俺たちもなんかあげようぜ」
自分も餌をやりたくなったらしいシュルクはガサゴソとバックの中に何かイルーカが食べれそうな物がないか探し始める
「無い・・・」
そして無かったようである
「もう、仕方ないわねぇ・・・はいパン」
「おうありがとな、明日奈」
シュルクは明日奈からパンを受け取ると海に向けてパンを投げる、するとイルーカはそのパンに向けてジャンプし空中で食べた、その様子から空中でパンを食べるのに慣れているようだ
「あはは!上手!明日奈私にも貸して!やりたい!」
「はい」
今度はメリアがパンを投げる、だがそのパンは検討違いの方向に飛んで行く、だがイルーカは少し迷惑そうだがちゃんと追って行き、空中でパンをキャッチした
「あーもう本当可愛い!」
メリアはイルーカの可愛らしい様子に喜び興奮する、どうやら始めての大陸間を移動する船をまだ乗って数十分なのに相当楽しんでいるようだ
そして明日奈のパンが切れた為、三人はイルーカ達が船の側を離れるまでその姿を見続けた
船内
イルーカ達が船から離れた後、三人は船の中を見て回っていた、この船はそれなりに大きな船であり、様々な物を買い物出来るスペースもあり、プールも有る為水着も売っている
「ねぇ明日奈水着売ってるみたいだしさ、後でプール入らない?」
「良いわよ」
明日奈としても久し振りにプールに入りたかった為メリアの誘いに賛成する
「俺はパス、部屋でゴロゴロしたい」
そしてシュルクはいつも通り部屋でゴロゴロするつもりのようだ
「えぇー、私はともかく明日奈の水着姿見たくないの?凄いよ?」
「・・・」
明日奈はメリアの言葉を聞いてメリアをジト目で見るがメリアは気付かない
「・・・良いよ別に」
若干の間があった為シュルクは悩んだようだがゴロゴロしたいと言う気持ちが勝ったようだ
「なーんだ、じゃあもう良いよ」
(無理矢理連れて行ってあげるんだから)
そしてメリアは表では納得したように見せ、裏ではゴロゴロしているシュルクの元に乗り込み無理矢理連れて行くつもりのようだ
「おう、じゃーな」
シュルクはメリアが裏で何を思っているのかを知らずに部屋の方に向かって歩いて行った
「明日奈分かってるよね?」
そんなシュルクの背中を見つめ若干ニヤけているメリアは明日奈が自分の思惑を理解しているか聞く
「うんうん、分かってる、まずはあいつの水着から選びましょう」
そして明日奈もメリアの思惑を理解していたようで、怪しく笑った
次回、シュルクが災難に災難を受ける回となります




