二十九話
宿
明日奈達は現在暇である、何故なら世界脱出クエストを失敗した為どんな依頼も受けれなくなってしまっているからであり、この事を知ったのは前日依頼を三人で受けに行った時だ
この依頼を受けれなくなるペナルティは世界脱出クエストを失敗した際だけであり、五日間の間どんな依頼も受けれなくなる、その為五日間、明日奈達は暇である
「明日奈暇だし何処かに遊びに行かない?」
依頼を受けれない為暇なメリアは遊べる所が沢山ありそうなサボールの街に出掛けようと明日奈に提案する
「えー、私は今日はゴロゴロしたい気分なんだけど」
実際にベッドのうつ伏せに寝転がり上で尻尾を立てゆらゆらさせている金色の妖狐はメリアにゴロゴロしたいと言う
「えー行こうよぉ」
「いや、私は寝るの」
メリアは行こうと言うが明日奈は嫌と言い、布団の中に潜ってしまった
「はぁ・・・太っても知らないよ」
「私、太んないもん」
メリアは明日奈に一言言って明日奈が返して来た言葉を聞いてから部屋を出る、目的地は一階の食堂だ、暇なメリアは一人で街に遊びに行く気にはなれないので食堂でコーヒーでも飲もうと思ったのである
食堂
「おじさん、コーヒーお願いします」
メリアは食堂のコックのおじさんにコーヒーを注文する
「あいよ、50Gね」
「はい」
「うん、確かに、出来たら運んでやるから何処かの席に座ってな」
メリアがコーヒーを頼むとコックのおじさんはコーヒーの値段を言いそれを聞いたメリアが払い、コックが受け取った、そしてメリアはコックのおじさんに言われた通り空いてる席でコーヒーを待つ
「そろそろ砥がないと駄目かな?」
メリアは周りには誰も居ないことを確認してから後で素振りでもしようと思い持って来ていた剣を抜き、少し始めて買った頃よりも斬れ味の悪くなった刃を眺める
「・・・分かんないなぁ」
だがまだまだ経験の短いメリアにはこの剣が砥がないといけないのか別にしなくてもいけないのか分からない
「あいよ、コーヒーだ」
メリアがマジマジと剣を眺めているとコックのおじさんがコーヒーを運んで来る
「あっ、ありがとう」
メリアは運んで来てくれたおじさんにお礼を言うとコーヒーを一口飲んだ
庭
ここは少し広い広場となっている宿の庭、女将が居なかったのでコックに許可を取り、許可が取れたのでメリアは素振りをしている
「ハッ!セイッ!」
メリアは憧れた明日奈の鋭い太刀筋をイメージして剣を振るう、明日奈に言われた通り両親に教わった型を守りながら
「ヤッ!」
今度は得意の突きの練習をする、現在メリアの攻撃ではこの速い突きが最高の攻撃でありメリアも自信がある、メリアはこの自信がある突きを更に磨くつもりだ
「・・・」
それを明日奈が窓から眺めている、ウトウトし始めていたら外から剣を振るう音が聞こえて来たので見に来たのだ
「ふふふ、私も冒険者に成り立ての頃はああやって剣を振るってたわね」
明日奈は冒険者に成り立ての頃を思い出すとホワイトローズを手に持ち部屋で出る
「ハッ!」
メリアは最後に現在自分が出来る最高の立て振りの斬撃を繰り出してから素振りをやめた、そして剣を鞘に戻すと近くの椅子に座り休む
「明日奈が素振りをしている所、見てみたいなぁ」
「良いわよ」
椅子に座り汗を拭いていたメリアは明日奈の声を聞いて振り返るそこにはホワイトローズを手に持った明日奈が立っている
「良いって、素振り見せてくれるの?」
「ええ」
明日奈は素振りを見せてくれるのか?と聞くメリアに対し返事を返すとホワイトローズを鞘から抜き鞘をメリアに渡す
「それじゃ私が今出来る最高の立て振りと横振りと、突きを見せてあげる」
「うん!」
そして明日奈はまず立て振りに剣を振るう、剣はブンと音を立てて上から下に振り下ろされる、次に明日奈は横振りに剣を振るい、そして最後に突きを放つ
「やっぱり、凄い」
メリアはたった二回振り一回突いただけだが確かに感じる、明日奈の強者の覇気に憧れを強くする、そしていつか自分も明日奈と同等の実力を手に入れたいと思う
「ねぇ、明日奈私の素振りも見てくれる?」
「うん、見てあげる」
今度はメリアが剣を振るう、縦、横、突きと明日奈と同じく三回剣を振るった
「どうかな?」
メリアは早速明日奈に自分の太刀筋はどうか聞く
「そうね、突きは悪く無いわこのまま発展させればあなたの最高の武器になる筈よ、でも縦と横はもっと剣を振らなきゃ駄目、まだまだ甘いわ、あれじゃ皮膚の硬い敵を斬り裂く事なんて出来ない」
明日奈はメリアの突きは褒め、縦と横はもっと剣を振らないと駄目だと言った、メリアの縦と横はまだまだ速度が遅く下位から中位の魔物なら斬り裂く事が出来るだろうが高位の魔物になれば威力と速度が足りず傷すら付けることが出来なくなるだろう
「そっかぁ、うん、頑張る」
「ふふふ、頑張りなさい、あなたは頑張ったら絶対に強くなるわ」
「うん!」
そしてこの後もメリアは剣を振り続け、明日奈はそれを見守った




