十五話
地球支部チーム29
この日はかなり寒い、明日奈は室温が高く暖かいチーム29の部屋のソファーの上で丸くなりほのぼのポカポカ眠っていた、季節は冬、外は寒く部屋は暖かい、その為暖かい部屋に入ると女性の獣人はほのぼのポカポカし始めてしまうのだ、これは本能なのでどうしようもない。
「女性の獣人はこの季節は皆あんな感じだな」
「だね、千智ちゃんもあんな感じだし」
メリアはシーラや千智の所属するチーム36に行く事があるが、千智も明日奈と同じくソファーの上で丸くなりほのぼのポカポカしている、そして任務の際には千智はシーラに叩き起こされ、千智は仕方なく起き上がると二人仲良く任務に向かうのだ。
「ウィリアム、明日奈は家でもあんな感じなの?」
メリアは資料作成をしているウィリアムに家での明日奈の様子を聞く。
「うーん、してる時としてない時があるな、してる時は外がかなり寒い日だ」
ウィリアムが家に帰ると明日奈は偶に迎えに出てこない日がある、そう言う日は大抵かなり寒い日であり、寝室で今日香と未来を柔らかい尻尾に包み、やはり丸くなって眠っている。
「そうなんだ、してる日はどうしてるの?」
「悪いけど、起こしてる、俺料理作れねぇからな・・・起きてもらわねぇと飯が食えん」
「ふーん」
メリアはそんな感じにウィリアムに起こされても明日奈は怒らないんだろうなぁと思いつつ、お菓子を食べる。
「明日奈起きろ、任務だ」
スースーと寝息を立てる明日奈に任務だとワトソンが話しかける。
「うー?」
その声に反応し身を起こした明日奈は欠伸をしながら身を起こす。
「これが今回の任務だ、ウィリアム、一緒に行ってこい」
ワトソンは任務書をまだ寝惚けた明日奈に渡す、明日奈はボーとした顔でそれを受け取ると、ボーと眺める、紙を見てはいるが恐らく内容は全く理解していない。
「了解、ほら行くぞ、明日奈」
「んー」
ウィリアムはまだ寝惚けて耳をペタンとさせている明日奈を背負うと、共に転移して行った。
「・・・部屋の温度を暖かくし過ぎたな」
「そのせいじゃねーか・・・」
「お前達が寒いと思ってな・・・」
「・・・」
第7世界ソゾの町
「ここは何処かしら?」
ウィリアムにソゾの町に連れてこられた明日奈は気がつくと全く知らない町のベンチの上に座って居たので首を傾げる、尻尾はピン!と立っている。
「第7世界、ソゾの町だ」
ウィリアムはそんな明日奈の頭を撫でながら現在地の説明をする。
「ふぅん、なんでここに連れて来たの?」
明日奈は夫に頭を撫でられ照れた表情を見せつつ、彼がここに自分を連れて来た理由を聞く。
「警備任務だ、ここの町の武器保存施設がベルシリオスの組織の奴等が狙ってるらしい、奴等がいつその武器保存施設に襲撃して来るか分からないから、日替わりで適当に色んな支部から人員を配備するんだとさ」
「りょーかい、その日替わり配属で今日選ばれたのが私達って事ね?」
「そう言う事だ」
任務内容を理解した明日奈はベンチから立ち上がると、うーんと伸びをする、そんな彼女を後ろから見ていたウィリアムは明日奈が立ち上がった際に広がった、キラキラと太陽の光を反射し光る金色の髪に見惚れる。
(やっぱり、綺麗だ)
伸びを終えた明日奈はクルリと振り返り自分を見るウィリアムを見て首を傾げる、ウィリアムは妻に見つめられ照れたのか顔を赤くしつつも明日奈の手を引き、今回の任務の依頼者に話を聞く為、明日奈の手を引き武器保存施設に入って行った。
武器保存施設内部
「よくお越し下さいました、ワールドセイバーのエージェント様」
武器保存施設の所長は所員に案内され所長室に入って来た明日奈とウィリアムの手を順番に手に取り握手をして来た。
「こちらこそよろしくお願いします、早速、敵が攻めて来るとしたら何処から来るか、教えてくれる?」
握手を終えた明日奈は自分も一度頭を下げた後に、敵が攻めて来るのなら何処から来るのかを所長に聞く、これを聞いていないのと聞いているのでは、任務の難易度が大きく変わるので、聞き逃すことは許されない、(同じような任務を担当した際の千智はよく聞き忘れる)。
「まずは施設前の左右に伸びる道路を車に乗り攻め込んで来る可能性が想定出来ます、後は施設裏の森から徒歩で攻めて来る可能性もありますね」
そして話によると敵の進行ルートは二つのようだ、一つ目の道路は先程見た感じでは見通しが良いので、こちらならば対処し易いが、森からのルートは薄暗い森に見えたので、敵の動きが見えず対処し辛いだろう。
「分かった、警備兵は何人いるんだ?」
「五人です」
「分かった、なら道路の方はその五人に任せる、俺たちは森の方を警戒する、良いな?」
「はい、了解です」
「それではこの無線を、警備兵が敵を発見した場合、これを使いあなた方に連絡します」
「それじゃ、任務開始ね」
無線を耳に付けた明日奈とウィリアムは武器保存施設内部から外に出ると森の方に向かい、警戒任務を開始する。
武器保存施設外部、森側
聴力に優れる明日奈は耳をピクピクと動かし、薄暗くよく見えない、森を音で警戒する、今の所何の音も聞こえないので、敵はいないようだ。
「ウィリアムなんか見える?」
ウィリアムは夜目がよく効く、その為明日奈は恐らくは薄暗い森の内部もよく見えているウィリアムに何か見えるかどうか聞いた。
「見えねぇな、何もいない」
「そう・・・」
何も見えないと言うウィリアムの言葉を聞いた明日奈は顎に手を当てて考える、一度森の奥まで走って様子を見に行こうかと、まだ敵は居ないだろうが、森の内部の確認も必要なのだ。
「・・・」
その為明日奈は行ってもいい?と言った思いを瞳に込めてウィリアムを見る。
「気になるなら行ってこい、もし敵が来ても暫くは持たせるさ」
明日奈の瞳から考えを読んだウィリアムは明日奈の肩を叩き行って来いと言った。
「ありがと!出来るだけ早く帰って来るわ!」
ウィリアムから許可を貰った明日奈は、ウィリアムの頬にキスをすると元気よく森の中に入って行く。
「・・・」
ウィリアムは頬にキスをし離れ、照れ臭そうに笑ってから森の中に走って行った、明日奈の仕草を見てニヤケながら、森の中に入って行く明日奈の背中を見送る。




