十話
地球支部
ワールドセイバー地球支部にやって来た明日奈は、今から遂行する任務の説明をワトソンから受けていた。
「今回の任務は敵の基地らしき施設への襲撃任務だ、明日奈、お前がまず下水を通り敵の基地らしき施設内部へ侵入し、施設中で適当に暴れて貰う、お前が行動を起こしたのを確認した後、お前に集中している敵を基地の南入口と北入口、そして施設上部の入り口から侵入した他のエージェントの包囲攻撃により殲滅する、出来るな?明日奈」
今回の任務においての明日奈の役目は囮である、いきなり敵基地中心部に現れた明日奈に敵は集中し、たった一人の敵である明日奈に集中攻撃を仕掛けるだろう、そんな敵の背後、そして真上からエージェントを突っ込ませ一気に殲滅する、と言うのが今回の作戦である。
「勿論、寧ろ他の人が侵入して来るまでの間に全部私が倒しちゃうかもね?」
作戦内容を聞いた明日奈は尻尾を誇らしげに立てて自信ありげな様子である。
「フン、大した自信だ、しかし油断するなよ?」
そんな明日奈の様子を見てワトソンは一応油断はするなと伝える。
「分かってるわ、行って来る」
「うむ、うちのメンバーそして他のチーム達は既に待機している、お前は転移で直接下水に向かえ」
「了解」
明日奈はワトソンに言われた通り、話に出た下水に向けて直接転移した。
第一世界、下水
ここは第一世界ナバナダ市の下水道、明日奈が転移して来た地点から五百メートル進んだ地点にある梯子が敵の基地らしき施設に繋がっている筈だ。
「全く関係ない施設で、関係ない人達にこんにちはってならないと良いのだけれどね・・・」
ワールドセイバーのエージェントの一人が確かに敵の者達が着ている服と同じ服を着た者が五百メートル進んだ先にある梯子の上の施設に入って行くのは確かに確認しているので、敵の施設である事は間違い無いのだが、もし明日奈が考えた可能性が当たっていた場合は、明日奈は施設内部の者達に謝ってから外に出るつもりである。
「そうよね・・・違ったらどうしましょうか・・・」
「うん・・・ってリリーシャ!?あなた何してるの!?」
明日奈は余りに自然に受け答えしてしまったが、そもそもここには一人で来た筈なので、声がした方向に慌てて顔を向けるとそこにはリリーシャが居た。
「・・・だってあなた私の所に遊びに来てくれないんですもの、だから私が直接遊びに来たの!そしたらこんな下水道、あなた今何してるの?」
明日奈が遊びに来てくれない事を不満に思っていたリリーシャは、聖力使いの者の聖力は魔力使いの者では探れないと言う事は覚えていたので、わざわざリリーシャの国お抱えの占い師に頼み明日奈の居場所を探らせ、そして見つけて貰った明日奈の居場所であるこの下水道に転移してやって来たのだ。
「任務よ」
「そう、なら任務が終わった後ちょっと遊ばない?ナターシャも誘ってさ」
「良いわよ、その代わり任務に協力して貰うわね、良い?」
明日奈としてもリリーシャの所に遊びに行けなかったのは悪いと思ったので、リリーシャと遊ぶ事は了承する、その対価としてリリーシャに今から行う任務に協力して貰うつもりである。
「ええ!」
とにかく明日奈と遊びたいらしいリリーシャは、嬉しそうに頷いた。
「よし、なら前に言った事は忘れてないわね?アレを守って私について来なさい」
前に言った事とはガマラ王都侵入の際にリリーシャに言った明日奈にピッタリと引っ付き離れるなと言う約束の事である。
「了解」
明日奈とリリーシャは五百メートル進むと、梯子を登り敵の基地らしき施設に侵入した。
敵基地、武器庫
梯子を登るとそこは武器庫であった、そしてここに置かれている武器は全て、明日奈が以前遂行した任務で遭遇した敵と同じ物である、あの者達も今回の敵と同じ組織に所属している者達であり、その者達が使っていた武器がここにあると言う事はここは敵の基地で間違いないだろう。
「間違いなさそうね、ここは敵の基地で確定よ、さっき伝えた通り適当に暴れて、他のエージェントの侵入まで持ち堪えるわ、出来るわね?リリーシャ?」
梯子を登るまでの間にリリーシャに作戦を伝えていた明日奈は、再度リリーシャに囮作戦を遂行出来るかどうか確認する。
「うん、あなたがいるなら出来る」
「分かった」
そして明日奈とリリーシャは前方に見えている扉の前に向かうと扉の側に座り、明日奈がゆっくりと扉を開けて扉の先の様子を確認する。
「敵は四十人くらいね、突っ込むわよ、リリーシャ」
扉の先はロボットの整備区間らしく、沢山の整備兵らしき人物達がロボットの整備をしているようだ、他の兵士達も他の区間に居る筈なので、広そうなこの先の区間で囮となり敵を集めると、今回の作戦をスムーズに進めれそうだ。
「了解!」
既に戦闘モードに入っている明日奈と、少し緊張した面持ちのリリーシャは整備区間に侵入した。
敵基地、整備区間
整備区間に潜入した明日奈はホワイトローズをブラスターモードに変形させると近くのロボットを攻撃し破壊する。
「なんだ!?」
「敵だ!」
「どこから入った!?」
いきなりの敵の襲撃に整備兵達は混乱する、そして冷静だった整備兵が警戒ベルのボタンを押すと警戒ベルが鳴り、敵兵士達がワラワラと集まって来る。
「さぁ来たわ、全力で行くわよ!リリーシャ!プラチナモード!」
「うん!アヴァロンモード!」
敵は何人居るのか不明である、その為二人は最初から全力で行く、リリーシャはアヴァロンモード、そして明日奈はプラチナモードに変身する。
「セェイ!」
「ハァァ!」
明日奈とリリーシャ、魔族特区の危機を救った二人の戦闘が始まる。




