八話
機械の兵士達の世界
ここは機械の兵士達の世界、先日戦った女の剣技に機械の兵士たちの女王ベルシリオスに似た物を感じた明日奈は、ベルシリオスとの決戦の場にやって来ていた。
機械の兵士たちの世界はメリアがベルシリオスの命を奪った時から止まったままだ、明日奈以外動く者が存在しない世界に一人明日奈だけが動いている。
明日奈は解放の歌を歌った時アンダーワールドの解放だけを望み歌を歌った、しかし他の無の巫女よりも魔力量が多い明日奈はこの世界も解放させてしまったのだ、その為機械の世界も動く者が居ない死の世界として多重世界に存在している。
「・・・」
ベルシリオスがメリアの攻撃により消え失せた場所に明日奈は立つと目を閉じる、そして辺りの魔力の流れを感じようとする、この場所の魔力の流れの中に呪力があれば無がここで何かをした証明となる、明日奈はそれを確認しに来たのだ。
(私が感じるのは魔力だけ、ホワイトローズ、あなたはどう?)
「・・・詳細に魔力の流れを探ってみたところ、微弱な呪力を確認しました」
「・・・」
世界に溢れる力は基本的に魔力だけだ、聖力と呪力は個人レベルで存在する力であり相当なレアスキルである、そんなレアスキルである呪力をホワイトローズは感知した、つまり無は此処に来たのだ。
「でも、死者蘇生なんて・・・そもそもベルシリオスはロボット・・・ロボットだからこそ人格データを新たに作った体に移しやすいのか・・・」
「Yes、もしベルシリオスが復活していた場合考えられる可能性は死者蘇生ではありません、新たな体を用意し、そしてベルシリオスの人格データを新たな体に移したのでしょう、此処には人格データのバックアップを取れるコンピュータは沢山あります」
明日奈はそこらにあるコンピュータを見る、するとまだ起動しているのが確認出来る、機械の兵士はベルシリオスと共に機能を停止したが、コンピュータは動いているようだ。
それももし彼女が壊された際の保険なのかもしれない、いつかこの世界に訪れた者が自分を復活させてくれる事を期待して、ベルシリオスは自身が倒されてもコンピュータを動いたままにするように設定していたのだろう。
「でも、彼女がベルシリオスなのかどうかまだ断定は出来ない、本人に確認しないとね」
確かに彼女がベルシリオスだと断定する条件は揃ってはいる、しかし断定するのはまだ早い、少なくとも確認してからだ、しかし敵である彼女が素直に答えてくれる可能性は低い。
「マスター、メリアに話しますか?」
「いいえ、少なくともあいつがベルシリオスだと確定するまでは話さない、私もメリアもあいつには良い思い出がない」
ベルシリオスにはメリアは妹を奪われ親友だった明日奈も奪われ一時敵となった、そして明日奈は自身の人格を書き換えられ体も変えられ、仲間と戦わせられた、その為二人ともベルシリオスと言う存在は思い出したくない存在なのだ、だから明日奈は確定するまではメリアにこの情報は伝えないつもりだ。
「分かりました、それではもう一つの目的を果たす為に動きましょう、マスター」
「そうね」
明日奈はとあるもう一つの目的を果たす為、城の中を歩き始める。
ワールドセイバー地球支部、チーム29
「ねっ?みんな、明日奈は?」
その頃、女の正体は誰なのかと考えていたメリアは明日奈がいない事を確認し、チームメンバーに明日奈の事を聞く。
「あいつならお前が来る前に此処に来て、今日休むわ!そう言う事だからよろしく!って言ってどっかに転移して行った」
メリアの質問に珍しく朝早くから部屋に居たギルダーツが答える。
「そ、そうなんだ」
メリアはギルダーツの話を聞き、明日奈は随分と強引に仕事を休んだんだなと思い苦笑いする。
「まぁ何してたのか、後で聞いてみようぜ」
「だね」
明日奈の話を終えたチームメンバーはそれぞれ任務に向かって行った、この日も第一世界の警戒任務が彼らを待っているのだ。
研究施設
此処には明日奈が気絶して居た間に入れられたカプセルがある、そして機械の体となり生まれ変わった自分が這い出て来たカプセルも変わらず存在している。
「動いてるわね」
明日奈はカプセルのコンソールに触れてみる、すると変わらず起動している事が確認出来た、今からここに入れば機械の体を手に入れる事も可能だろう。
「つまりマスター!私もこれを使えば!大きな体を!」
「あなた、私の聖力を多く使えば、大きくなれるでしょ?」
「・・・」
明日奈のツッコミを受けグヌヌと言っているホワイトローズを尻目に明日奈はカプセルを蹴り飛ばし破壊する、この世界は誰でも入ろうと思えば入り込める状況だ、だからこう言う機械は壊し機能を停止させておくのも明日奈がここに来た目的の一つである。
「さてと、この世界も多重世界に戻してしまった私の責任を果たさないとね」
今回、敵がこの世界のロボットを使い暴れ始めたのも明日奈がこの世界を多重世界に戻してしまった事が発端だ、だから明日奈はこれ以上同じ事が起こらないよう、危険だと判断出来る機械や残っているロボットを破壊して行く。
地下
「ここで最後ね」
危険だとホワイトローズが解析し判断した機械を破壊しつつ城の上から地下まで降りて来た明日奈は城の地下にやって来た、階段を降りて地下に降りて来た明日奈の目の前には巨大な鉄製の扉がある。
「これですね」
近くのコンソールを解析したホワイトはドアを開くボタンを踏む、すると巨大な鉄製の扉はズズズと言う音と共に開き始める。
扉が開いた先そこには沢山の武器やロボットが保管されていた、どれも稼動状態だとホワイトローズが明日奈に伝えた。
「さぁ、一仕事やっちゃうわよ、ホワイトローズ」
「Yes」
明日奈はホワイトローズをブラスターモードに変形させると一気に破壊した。
「ん?」
しかし明日奈の攻撃に一つだけ耐えた物がある、それはシールドで守られた、一枚のチップであった。
「なんだろね?これ?」
壊れかけのシールドをホワイトローズで斬り裂き破壊した明日奈はチップを手に取り、確認する。
「・・・私でも解析不可能です」
「あなたでも?ふぅん」
ホワイトローズでも解析出来ない物、何か重要な物なのかもしれないと判断した明日奈はチップをポケットの中に入れると地下から地上に戻る。
城
プラチナモードに変身しあらかたこの世界中の危険だと判断出来る機械やロボットを破壊し尽くした明日奈は城に戻って来た、流石に疲れたらしい明日奈は近くの椅子に座るとふぅーと一息つく。
「お疲れ様です、マスター」
数時間、高速で動き続けていた明日奈をホワイトローズが労う。
「ありがと」
明日奈はホワイトローズの気遣いに感謝すると立ち上がり、地球に向けて転移した。




