六話
???
第一世界のとある場所で無と???が話していた。
「その体はどうだ?」
無は目の前にいる???に自分が与えた体の調子を聞く。
「ええ、とてもいい調子よ、これで私を一度、殺したあの女に復讐が出来る」
???はそう言うと薄く笑う。
「そうか、しかし目的は忘れるなよ?」
「分かっているわ」
???は無に向けて手をヒラヒラと振ると部屋から出て行った。
「くくく、一年間何もしないでいるのも面白く無いからな、これで少しは面白くなるだろう」
無は???がこれから起こす混乱の様子を想像して笑う。
第一世界
無と???が会話していた頃明日奈とメリアはビルの上から町の様子を見守っていた。
「クシュン!」
すると明日奈の隣で彼氏彼女の関係となったシュルクとメールで嬉しそうにやり取りしているらしいメリアが、急にクシャミをする。
「・・・風邪?それとも寒い?」
第一世界の季節は冬、その為このビルの上はかなりの寒さである、明日奈は寒さに強い妖狐なのでこの寒さでも無問題だが、メリアには辛いのだろうと思った明日奈は親友を心配する。
「大丈夫、元気モリモリだよ」
メリアは自分の事を心配してくれた明日奈の気遣いを嬉しく思いながら、元気!元気!とガッツポーズを取る。
「そう?なら良いけど」
明日奈はメリアが大丈夫だと言うのなら大丈夫だろうと思い、町の警戒にへと戻る。
(あの感じは・・・)
メリアは先程クシャミをした時に確かに感じていた嫌な気配の正体を考え始めた。
「うふふ」
「ねぇ明日奈・・・」
考えた結果、嫌な気配の正体は分からないが取り敢えず話しておこうと思ったメリアは、明日奈に話しかける。
「ん?」
町を監視しながらホワイトローズとじゃれ合っていた明日奈はメリアに話しかけられ振り返る。
「私さっきね?クシャミをした時に嫌な気配を感じたの」
「嫌な気配?」
この時明日奈は一つの候補を考えた、それは無だ、彼女を洗脳し操った無と言う存在は、メリアにとって一番嫌な存在だと言えるからだ。
「うん、それが何かは分からないけどね・・・」
メリアは確かに先程感じた気配を知っている、しかし何処で感じたのかは思い出せない。
「・・・無じゃないの?」
明日奈は自分が一番最初に考えた嫌な気配の正体をメリアに話す。
「違う、無は、もっと心の奥から支配してくる雰囲気だった、でも今感じた気配は私を射抜き斬り裂こうとしている、そんな気配だったよ」
「そう・・・」
明日奈はメリアの言葉を聞いて更に考える、デルタムーザ、ベルシリオス、アルベリア、どれも明日奈に強烈な印象を残した強敵だった、そして明日奈はこの三人のうち誰かが復活したのか?と考える。
「・・・いや、そんな筈は無いか」
明日奈は過去アリシアから魔法を教わった際、死者蘇生の魔法の事について聞いた事がある、しかしアリシアはそんな魔法は無いとキッパリと断じた、その為復活の可能性は無いだろうと、明日奈は思い直した。
「・・・とにかく注意しましょう、あなたに嫌な気配を感じさせる何かがあなたを狙ってるって事なのだから」
「うん、気を付ける」
メリアは明日奈の言葉を聞きこの日は一人で居るのは危険だろうと思い、シュルクの家にでも泊まりに行こうかなと思った。
アンダーワールド、シュルクの家
「こんにちは」
警戒任務を終えた後メリアはシュルクの家にやって来た。
「どうした?」
シュルクは付き合い始めたばかりである、少し不安そうな様子のメリアを見て、彼女の事を心配する。
「うん、ちょっとね」
この後メリアはこの日感じた嫌な気配の事をシュルクに話し、彼の家に泊めてもらった。
天上界
明日奈は桜の元に来ていた、もしかしたらアリシアが知らないだけで、死者蘇生の方法があるのかもしれない、それを知っていそうな桜に話を聞きに来たのだ。
「と言うわけで、教えて?お婆ちゃん、肩揉むから」
ここに来た理由を既に話していた明日奈は、ささっと桜の後ろに回ると肩を揉み始める。
「死者蘇生ですか・・・もっと右をお願いします・・・うーむ」
桜は明日奈に肩を揉んで欲しい場所を注文しつつ、死者蘇生の魔法に付いて思い出そうとする。
「まさかと思いますが」
そして一つの可能性を即座に思い付いた桜は、顔だけ振り返り、明日奈を睨む。
「それは無いわ、お婆ちゃん、愛奈を蘇生させたりなんてしない、蘇生魔法は死者を冒涜する魔法ですもの、そんな魔法を愛奈に使ったりなんてしないわ」
「なら、安心です」
明日奈が愛奈を復活させるつもりはないと分かった桜は、明日奈に笑いかけると、再び死者蘇生の魔法について考える。
「ごめんなさい、私も知りません」
「そっか、ありがと」
明日奈は桜でも知らないのなら誰に聞いても無駄だろうと思い、死者蘇生の魔法についてはもう考えないようにしようと思った。
「それじゃここからは本気で肩を揉むわよ!お婆ちゃん!覚悟してね!」
「望むところです!」
明日奈の全力の肩揉みが桜の肩を襲う、桜はその肩揉みに全力で癒された。
「それじゃあ、私は明日奈ちゃんの胸を・・・」
「なら帰る」
「!、嘘です!」
神狐の家
「死者蘇生など知らんぞ」
「デスヨネー」
先程死者蘇生の事を考えないようにしようと思った明日奈だが一応神狐にも話を聞いてから、考えないようにしようと思い神狐に聞いてみた所、知らないと言われた。
「そんな事よりも、儂の肩も揉んでくりゃれ?くりゃれ?」
明日奈が先程桜の肩を揉んで来たと言った為か、神狐も明日奈に肩揉みをして欲しいと思ったのだろう、尻尾を揺らしながら肩揉みをせがんで来た。
「はーいはい」
明日奈は神狐の肩を揉み始めた、神狐は嬉しそうに明日奈の肩揉みに癒される。
「俺は?」
縁側でゴロゴロしていたアシュレイも明日奈の肩揉みを期待してこちらを向く。
「後でね」
明日奈は一応アシュレイにもしてあげるつもりだったので後でねと答えた。
「!、!」
そして玲狐は無言で私も!私も!とオーラを送って来る。
「・・・」
それを見た明日奈は電話で鈴を呼び、鈴に玲狐を任せた。




