十四話
ビプホ山
明日奈達から少し離れた位置に浮かんでいるロボットは地面に着地すると何やら背中のハッチを開ける、そこからビットが出て来て銃口を明日奈達に向ける
「な、なんだよ!こいつ!?」
謎のロボットを見たことのないシュルクは混乱しているようだ
「敵よ!こいつとは別だけど同じような奴がララネの町を襲ったの!」
明日奈は話しながらホワイトローズと頭の中で会話しエンチャントの準備をする
「エンチャント!ホーリー!これで攻撃が通じる筈よ!」
そして二人にエンチャントを掛けた、これで二人の武器もロボットに攻撃が通じるようになった筈だ
「明日奈、ありがとう!」
メリアがエンチャントを掛けてくれた明日奈にお礼を言う、そしてメリアがお礼を言った所でビットの銃口からビームが発射された
ビームが明日奈達に迫る、明日奈は仲間二人の前に立つと
「ホーリーブレイド!」
『Yes、ホーリーブレイドを出力400%で発動させます』
出力を上げたホーリーブレイドを発動させ、ビームを斬りつけ弾いた
「やるねぇ!」
シュルクはロボットに接近すると思いっきり大斧を叩き付けた、その強烈な一撃はロボットの装甲を傷付けるが浅い、どうやらロボットの装甲はかなり厚いようだ
「ヤアア!」
メリアはロボットの足を狙い剣を突き刺そうとしたがかわされる、そしてロボットのビットがメリアに向けてビームを撃つ
「メリア!」
明日奈がメリアを狙うビームをまた弾くが、ロボットはビットでビームを撃つのと同時に接近して来て居たようだ、先程まで抜いて居なかったビームサーベルを抜き、斬りかかって来る
明日奈は体を回転させ勢いをつけるとロボットのビームサーベルをホワイトローズで受け止める
「っ!くっ!重い・・・」
体の大きな敵の方が力は当たり前だが強い、明日奈は勢いをつけて剣を打ち付けたのに簡単に押されて行く
「明日奈!」
押されて行く明日奈を助けようとメリアも押し合いに加わった、だがそれでも押される
「二人で足りないなら三人だ!」
シュルクも押し合いに加わった、三人でようやくロボットよりも力が勝ったようで三人はロボットを押して行く、このままでは押し切られると思ったらしいロボットは後ろに飛んで離れた.それを見た明日奈がロボットに向けて斬り掛かる
「関節なら!」
明日奈は左腕の肘関節を狙い剣を振るった、明日奈の思った通り関節は他の部分よりも装甲が薄かったらしい、明日奈の剣はロボットの左腕の肘関節を斬り裂いた
「スピードスピア!」
メリアがロボットの正面から飛び、その胴体に向けて速い突きを放つ
だがロボットはそれをしゃがんでかわした、メリアの体はロボットの上を通って行くが、メリアは空中で体を捻りロボットの上を通り過ぎる前にロボットの顔を斬り付けた
「良いぜ!メリア!ウラ!」
力自慢のシュルクはただ斧を振り下ろすだけで必殺の一撃である、シュルクの強烈な攻撃は顔を斬られて怯んでいたロボットの胴体を抉るように斬り裂いた
「ハッ!」
明日奈はシュルクが斬り裂いたロボットの傷に剣を突き刺した、明日奈が剣を突き刺した部分からオイルが飛び出す
「行けるよ!明日奈、行っちゃえ!」
「ええ!これで!」
そして明日奈は剣を引き抜き、ホーリーブレイドの出力を更に上げてロボットを斬りつけようとしたが、ロボットはそれを飛んでかわした、そしてビットを一斉にこちらに向けて一斉に放つ
「ッ!皆集まって!」
明日奈は雨のように降り注ぐビームを見て仲間に集まるように言う、そして二人は何も言う暇も無く慌てて明日奈の側に来る
「よし!ホーリーシールド!」
明日奈は二人が側に来たのを確認するとシールドを張る、そしてシールドに雨のようなビームが降り注ぐ
「ホワイトローズ!耐え切るわよ!」
『Yes』
明日奈は降り注ぐ雨から必死に耐えシールドを保たせる、だがシールドには徐々にヒビが入っていく
『限界です!』
「魔力を全部使っても良いから、耐え切らせなさい!」
ホワイトローズは限界だと言うが明日奈は魔力を全部使っても良いから耐え切らせろと言う、ホワイトローズはその主人の命令を聞くと言われた通り明日奈の全ての魔力を使いシールドを強化し、明日奈の魔力はなくなったがビームの雨に耐え切る事が出来た
「ハァハァ・・・」
だが明日奈はもう限界だ、地面に手を着き肩で息をする、明日奈はもう戦えない
「くっ!降りてくるぜ、あいつ」
ビームを撃ち終わったロボットはこちらに向けて降りてくる、そして地面に降り立つとビームサーベルを振り上げる
「攻撃が通じても勝てないのね・・・」
明日奈が諦め気味にそう言った所でロボットのシュルクが斬り裂き明日奈が突き刺した傷が爆発した、それと同時にビームサーベルが消える
「・・・作戦行動不能と判断・・・帰還する」
ロボットはそう呟くと明日奈達に背を向け飛び去って行った
「・・・助かったね」
「ええ・・・あの傷が・・・爆発しなかったら死んで・・・たわね・・・」
明日奈は意識を失い倒れた
「明日奈!」
メリアが慌てて倒れた明日奈に駆け寄る、そして体を揺するが反応が無い、恐らくは魔力を全て使い果たした為、魔力欠乏症のような状態になっているのだろう
「ここからなら頂上の宿はすぐだ、急いで運ぶぞ!メリア!」
「分かった!」
シュルクは倒れた明日奈を背負う、そしてメリアと共に急いで頂上に向けて走って行った
頂上、宿
ここは頂上にある宿の一室、全ての魔力を失い倒れた明日奈はベッドで眠っている
「ウィリアム・・・」
眠っている明日奈は思い人の名前をうわ言のように呟いた
「ウィリアムって誰なんだろう?」
明日奈は現在熱が出ている、メリアは明日奈の頭を冷やしたりして看病していたのだが、明日奈の寝言を聞いてしまった
「この前も同じ名前を言って泣いてたし、大切な人なのかな?」
メリアはそう言うと明日奈の胸元に紐に通した指輪があるのを見付けた、それを見たメリアはほぼ全てを察し看病に集中する
地球、ワールドセイバー地球支部
ウィリアムは響と協力して次元の狭間についての資料を探していた
「マジて何にも見つからねぇな・・・」
「そうだね・・・」
地球支部や他のワールドセイバーの支部には必ず大きな資料室がある、そこには大抵の情報が有るのだが、次元の狭間についての資料は見つからない
「諦めるしか無いのかよ・・・」
ウィリアムが諦め掛けた所で何か声がする
(・・・ウィリアム)
「明日奈!何処だ!?」
ウィリアムは声が聞こえた場所を探し
(・・・ウィリアム)
そしてもう一度声が聞こえた時に剣から声がしたのだと気付いた
「・・・必ず迎えに行く、だから待ってろよ明日奈」
ウィリアムは自分の名を呼ぶ明日奈に剣に向けて迎えに行くと言うとまた立ち上がり資料を探し始める
翌日
明日奈は目を覚ました、そして自分が泣いて居る事に気付く
「・・・本当この世界に来てから私、泣き虫になっちゃった」
明日奈は止まらない涙を必死に拭うが止まらない、何故なら夢かもしれないがウィリアムの声を鮮明に聞くことが出来たからだ
「ありがとう、ウィリアム、でも迎えに来ちゃ駄目だよ、あなたも帰れなくなるじゃない」
明日奈はそう言うとメリアが自分のベッドを枕にして眠っているのを見付けた、メリアは熱を出した明日奈を看病しているうちに眠ってしまったようだ
「ありがとう、メリア」
明日奈はメリアを抱えるとベッドで寝かしてやり布団を掛ける、そして部屋から出て宿の外に出る
「ウィリアム・・・会いたいよ・・・」
明日奈はまだ星が見える朝の空を涙を流しながら見つめていた




