九話
フローロの森
朝起きた明日奈は寝袋の中から這い出て体を起こす、メリアはまだ眠っているようだ
明日奈は消えている焚き火に新しい枝を投入し軽い火の魔法で火を付けると前日使った足付きの網をその上に被せヤカンを載せる、そして鞄から食パンとバターを取り出すとヤカンの横で二枚焼く
「ふぁ・・・眠い・・・やっぱり寝袋じゃ疲れは取れないわね」
明日奈は眠そうに目をこすりながらパンをひっくり返す、ヤカンがピューと沸騰した事を知らせてくれたのでコーヒーを作りパンのもう片面が焼けるのをポーと待つ
「うん良い感じ」
そして両面焼け終わったのでバターを片面に塗り皿の上に載せて朝食の準備が完了した、明日奈はまだ眠っているメリアに近付きその体を揺する
「メリア?起きなさい、朝ご飯出来たわよ」
「あーい」
素直なメリアは明日奈に体を揺すられ声を掛けられるとすぐに起きるそして寝袋から這い出して来たが、物凄く眠そうである
「はい、コーヒー」
「ん」
明日奈は眠そうなメリアにコーヒー渡す、メリアは受け取ると一口飲む
「はい、パン」
「ん」
明日奈はコーヒーを飲んで少し目が覚めたらしいメリアにパンを渡す、メリアは受け取ると一口食べる
明日奈はそんなメリアの様子を見てクスクスと笑うと自分の分を食べ始める
「うん、おいし」
ちゃんと焼けてバターの染みた食パンは本当に美味しい、明日奈はパンを食べコーヒーを飲むと顔を洗いに川に向かった
まだまだ寝ぼけているメリアは非常にのんびりとパンを食べ、コーヒーを飲んでいた
野宿をする為に広げていた物の片付けを終えた明日奈はようやく目が覚めて何時も通りの元気な様子になったメリアに話し掛ける
「それじゃ行きましょうか」
「うん」
辺りを見渡し前日の果物のような食べれる果物が木に実っていないか見ていたメリアは明日奈の問い掛けを聞くと明日奈の方を向き頷く
「今日でこの森を越えるんだよね、夕方には次の町に着けると良いんだけどなぁ」
基本ララネの町から次の町まではどんな者でも一回野宿し次の日の夕方には次の町に着けるので、夕方には次の町に着けるだろう
「そうね、夕方に次の町に着く為にそれじゃ早速出発しましょうか」
「はーい」
明日奈とメリアは次の町に向けて森の中の一本道に戻り歩き始めた
森の中の一本道を歩いているメリアと明日奈、もう後十分も歩けば森を越えられると言う地点まで二人は歩いて来ている
そして明日奈の狐の耳が急にピクリと反応した、明日奈は遠くの方に目を凝らし何かが見えたようで
「いけない!」
と言うと走り始めた
「待ってよ!どうしたの?明日奈!」
「ちょっと遠くの方で男の人が魔物に追い掛けられてるの!助けなきゃ!」
走って行く明日奈はメリアにそう言うと行ってしまった
「助けるのは良いけど、速いよぉ・・・」
置いていかれたメリアは出来るだけ速く走って明日奈を追い掛ける
男はオークに追われている、男は必死になってオークから逃げるが、オークはあっという間に男に追い付き狼が男を地面に押し倒す
「ヒィィィ!」
オークに押し倒された男は悲鳴を上げる、オークが口を開き男の皮膚を喰いちぎろうと口を開けた所でオークが蹴り飛ばされた
「セェイ!」
オークを蹴り飛ばした明日奈は剣に光を灯すと斬り一撃で倒した、そして剣に付いた血を払う為一度剣を振るい剣を鞘に戻すと
「大丈夫?」
と言い男に手を伸ばした
「あ、あぁありがとう大丈夫だ」
男は差し伸ばされている明日奈の手を取り立ち上がる
「フゥ、よかった無事でそれじゃ私は行くから」
明日奈はそう言うとその場を後にする、男はその背中を見てこう呟いた
「金色の九尾」
と、明日奈はその言葉を聞いて振り返り追い付いて来ていたメリアがそれを聞いてちょっと笑っていたのを目にして顔を真っ赤にしてまた走り出す
「待っててね!ウィリアム、レビィ、皆、私絶対に帰るから!」
明日奈は恥ずかしさを誤魔化すようにこう言うと、天に拳を突き出し元気良く走って行く
「しまった笑うんじゃ無かった・・・待ってよぉ!明日奈!」
メリアは走って行く明日奈を見て、ちょっと笑ってしまった事を後悔しながら明日奈を追ってこちらも元気良く走って行った
西地方タバーア、タバーア平原
西地方はタバーアと言われメリシア地方より少し大きい、明日奈とメリアの目指すサボールはこのフローロの森から幾つもの町や砦や山を越えた先に有るのだ
そしてようやく走るのをやめた明日奈に追い付いたメリアは、はぁはぁゼィゼィと肩で息をしている、その様子からかなり疲れた様子だ
「・・・ごめん」
明日奈はそんなメリアを見て謝っておく
「本当だよ速過ぎるよ!全く追い付けなかったよ!九尾の身体能力って本当に凄いんだね!」
メリアはそう言うと地面にペタンと腰を降ろし息を整えている、明日奈は済まなそうな顔でメリアに水筒を渡すとメリアはすぐに受け取りグビグビと水を飲む
「おんぶしてあげよっか?」
「いい、自分で歩く」
申し訳なく思ってる明日奈はメリアを楽させる為におんぶしてあげると言ったがメリアはプイと顔を背け断った
「本当に良いの?」
「・・・本当はして欲しい」
だが明日奈は本当におんぶしなくても良いのか?と聞くとメリアは本当はして欲しかったようだ、それを聞いた明日奈はメリアの前に座り自分の背中をポンポンと叩く
「どうぞ」
「ん」
メリアは明日奈に引っ付くと明日奈はしっかりとおんぶして立ち上がる、そして割と近くに見えているタバーア地方最初の町へと歩いて行く
「どう?私の乗り心地は?」
「中々良いよ」
「そう」
そしてメリアを背負った明日奈はタバーア地方最初の町へと向けて歩いて行った




