王女5
おかしいとは、思ってたんだ。
まさか王女だなんて。
面倒くさがりやで、睡眠欲と食欲しかもってない、三大欲求もまともにもたない私が、まさか王女にだなんて。
神様、適材適所という言葉を、こ存知ですか?
と、何度も尋ねながら過ごした王女時代。
結論。
神様はご存知でした。
*
呆然と見つめ合う私と、目の前にいる私。
もはや何が何だかわからないが、身動ぎすると、じゃらっという鎖の音がすることから、私はアントワーヌになっているのか。そのようだ。
…だめだ、混乱している。
私が見ていた時、アントワーヌはたっていたはずなのに、今、私の見る視界からは、床に広がる赤い絨毯が随分と近い。
……重いわよ、この枷。
手と足に付けられたこの枷をつけているだけで、力を吸い取られている感じがすることから
どうやら、アントワーヌは随分無理をしてこの場にきたようだ。
そして問題の自分自身。
こうして客観的にみると、シルヴィは改めて美少女ねえ、とか考えている私はもはや突飛なことがおきすぎて、ネジの数本がとれているようだ。
頭の処理が追いつきませんわ、おほほ。
…ともかく。上段のシルヴィは自分の手をジロジロと見た後、此方を見て何かを確信したのか、目を輝かせた。
…え、ちょっと、『目を輝かせた』?
そして、彼女は天使のような微笑みを浮かべ、こう述べたのだ。
私の声で。
「あら。罪ぶかいアントワーヌ・ディロッソン公爵令嬢がこのような祝会に、どのような御用なのでしょう。」