王女4
ここ王立ドゥロア学院の生徒は殆ど王族、貴族、豪商の子供達が通う名門校である。
殆ど、というのは、特装枠としてある部分が秀でた平民も通うことができるからである。
そして、この学院に入るだけでも大変名誉なことなので、入学式である今日はこのホールにも多くの人が談笑している。
いや、いた。
何百人もの人がいるホールが静まりかえっているのは、偏にアントワーヌのせいだろう。
「ほら、ディロッソン家の…。」
「ああ。あの魔力を暴発させたという…。」
コソコソと周りの中傷のとおり、巨大な魔力をもつアントワーヌは、過去に暴発させたことから周りから恐れられている。
たとえ、魔力を抑制する枷をつけられていても、あの莫大な被害を考えると近づきたくはないだろう。
そんなめったに人前にでない彼女が、私に向けて口を開いただけで、私の周りの護衛騎士が剣に手をかける。
まさか、こんなとこで抜刀するんじゃないでしょうね?
沸点ひくすぎない?
彼女がこれから言う言葉を考えると、この場に血が流れそうで怖い。
早く止めないと。
そう思った瞬間、彼女と目があった瞬間、彼女の口から、言葉が漏れる瞬間。
暗転。
そして、
目の前には私がいた。
シルヴィ・アンクチュールが。
呆然とした顔で。