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悪役令嬢
そしてもう一人、
腰につくほどに伸ばされた藍色の髪は、今はホールを飾る重厚な絨毯に散らばり
長い前髪のせいでその表情は伺えない。
ただ、華奢なその肩は怒りか、悲しみが、喜びか、感情はわからぬままに震えている。
そして、その足首と手には、その細さに似合わず重たい枷が嵌められていた。
高い魔力を危険視され、ただ一人で監禁されていた哀れな少女、
アントワーヌ・ディロッソン公爵令嬢
……兼悪役令嬢の彼女はらその肩に背負う高い身分とは裏腹に、今は階段の下に沈み込み、その上を見上げていた。