8話。
「え…オレに? 一人暮らしに必要なこと?」
いきなりのお願いに秀也が少しとまどっていた。
「うん。一人暮らしの先輩といったら秀也だもん」
依真の説明によると、掃除・洗濯・料理を全くと言っていいほどやってこなかったためできないというのが一人暮らしを反対されている理由の1つらしいのだ。
そこで、練習してちゃんとできるようになって見直してもらおうという作戦のようだ。
「確かに、自分の弁当箱洗ったりとか自分の部屋の掃除機かけとか以外にこいつが家事をやってるのを見たことないな…」
「あ、ひどい。お風呂掃除もやったことあるよ!」
梳晴がぽつりとつぶやいた言葉に、依真が即座に反応した。
「まあまあ…それで、掃除とか洗濯はなんとでもなるだろうけど、料理の方はどうなの?」
秀也が2人をなだめながら聞いてきた。
「えっと…そこそこ」
「そこそこじゃねーだろ。秀也には言ってないのか? この前の調理実習でく…」
「ちょっと梳晴それ言っちゃダメなやつ!」
「何やらかしたの依真…」
「え…何でもないよ? おいしいシチューができたよ?」
「グループのメンバーのフォローのおかげでな」
「梳晴っ!」
依真は梳晴の暴露を止めるのに必死だ。
「うーん…じゃあとりあえず料理からやってみようか」
秀也が笑って言うと、依真はうなずいた。
「てか、これ俺必要なくない? 秀也だけで十分じゃん」
「梳晴も必要だよ? 素人仲間として。私と同じ下手くそな人がもう一人いるだけで心強いものだよ」
「お前なぁ…」
これで天然なんだから怒るに怒れない。
「まぁ、梳晴がどうしてもやりたくないっていうならオレと依真が2人きりでやるからいいんだよ?
ね、依真」
「えっ…!? あ、うん…」
こっちは若干悪意がある気がするが怒ったら負けだ。
「やりたくないとは言ってない」
「…へぇ?」
秀也は梳晴をからかえるのが嬉しいといったようなにこやかな笑みを浮かべる。
「秀也一人に全部まかせるのは何かムカつく」
「言うと思った」
ニッと笑う秀也。
「よし、じゃあ決まり。さっそく今日の夕飯はうちで食べることにして、料理の練習しようか。いい?」
「うん!ありがとう秀也」
「・・・」
「あ、梳晴もありがとう」
(俺、おまけ感すさまじいな…)
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