7話。
「着いたーーっ」
「早く中入るぞ」
「うん」
エントランス前で突っ立っている依真をせかして中へ入る。
ピーンポーン。
『はい』
「あ、秀也。依真と梳晴だよ」
『早かったね!どーぞ。あがってー』
秀也の操作によって、ウィィン…とエントランスの自動ドアが開く。
2人はエレベーターに乗り、秀也の部屋のある階へと向かう。
エレベーターを降りて通路を進むと、秀也は部屋のドアの前に立っていてくれた。
「はい、これ」
秀也は2人を部屋に入れると、さっそく依真の忘れ物を手渡した。
「あ。ありがとう秀也」
「届けてあげられたら良かったけど、今日依真から連絡あるまで気が付かなかったよ」
依真の忘れ物はスマホの携帯式充電器。
秀也の部屋で使って、そのまま置いてきたらしい。
「さて。忘れ物の件は済んだことだし、依真の用を聞こうかな」
「あぁ、そうだった。俺もそれ気になったんだよ」
「…と、その前に…ちょっと飲み物を持ってくるから待っててくれる?」
「うん」
秀也の言葉に依真は返事をすると、それっきり黙ってしまった。
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「おまたせ」
少しして、秀也はマグカップを3つ持って戻ってきた。
中にはほかほかと白い湯気を立てるココアが入っている。
「ありがと」
「さんきゅ」
それぞれカップを受け取る。
「で…依真、何の用があるんだ?」
梳晴が尋ねた。
少しうつむいた後、依真は口を開く。
「…えっとね…実は、来月にお父さんの仕事の関係で引っ越すことが決まりまして…」
「!?」
突然の依真の告白に、梳晴も秀也も言葉が出ない。
「あ、決まったのはもっと前のことなんだけどね。ごめんね、伝えるの遅くなっちゃって…」
「え…ちょっと待って。それに依真もついて行くってことなの?」
秀也がおそるおそるといった様子で聞いた。
梳晴はまだ驚きで何も言えないようだ。
「そうなる予定だったんだけど…私はここに残りたくて、ずっと説得してたの」
「そしたらおじさんたちは何て?」
「少ししたらこっちに戻ってこられるらしいから…一応、少しの間ならってことで一人暮らしするのを考えるとは言ってくれて…でも、まだ確実じゃないんだけど」
「そっか…」
依真は手に持っていたカップをテーブルの上に置くと、秀也の方を向いた。
「それで、秀也に今日はお願いがあって来たの」
「オレに?」
「一人暮らしに必要なこと、教えて欲しいの!」
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