5話。
「2人とも、行くよ」
「はーい」
「はぁい」
小さな男の子と女の子と、それより少しだけ大きな男の子が、3人で家から出てきた。
「今日はどこに行くの? 秀也兄ちゃん」
小さな男の子が聞く。
「今日はいつもの公園より少し離れた公園に行こう!」
「ほんとか!?」
笑って答えた「秀也兄ちゃん」と呼ばれた少し大きな男の子の言葉に、目を輝かせる小さな男の子。
と、突然…
「…へぶっ!」
「?」
少し後ろから変な声が聞こえた。
振り返ると、小さな女の子が転んでいた。
「大丈夫!?」
慌ててかけよる。
「うぅ…」
ケガは特に無いようだ。
「ばかじゃねぇのっ。なんで何にもないところで転ぶんだよっ」
「~~~~~っ」
小さな男の子の言葉に、小さな女の子がむくれる。
「こらっ!そんなこと言わないの!」
少し大きな男の子が止めに入ると、小さな女の子はその背中に隠れる。
そして、隠れたまま顔をひょこっと出して、小さな男の子にべーっと舌を見せた。
「なっ!?」
ぎょっとする小さな男の子。
「秀也兄ちゃん!こいつ、べーって!!」
「してないもーん!」
「もー…梳晴も依真も、ケンカしないの!」
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「―――るっ…梳晴っ…」
誰かに肩を揺さぶられている。
(・・・?)
「起きろーーー!」
ゆさゆさゆさ。
(なんだ…何事…)
梳晴がうっすら目を開けて起き上がると、目の前に依真がいた。
「あ、やっと起きた」
「…依真…」
肩をゆさぶってたのは依真だったようだ。
「ほら、早く荷物の用意してっ」
「…遠くの公園…」
「え?何…?」
「公え…ん…」
だんだん意識がはっきりしてきて、ハッと我にかえる。
どうやら、いつからかはわからないが、机に突っ伏して寝て夢を見ていたようだ。
夢に見ていたのは、小さいころの記憶。
「何て言ったの?」
「…なんでもないっ」
「あ。梳晴、寝ぼけてたんでしょー」
依真がニヤニヤしている。
「違うし」
「…ふぅーん。まぁいいや。早く行こう?
せっかく奏汰くんが掃除代わってくれたんだから」
「…どこに?」
「忘れちゃったの? 秀也の所に行こうって…まだ眠い?」
「あぁ…大丈夫。覚えてる」
まだ少しぼんやりしている頭を働かせるため、梳晴は立ち上がった。
バッグに荷物をつめながら依真に話しかける。
「平坂は?」
「柚稀は今日から部活だって言ってた。 奏汰くんも?」
「あぁ。言ってた気がする」
「…準備できた?」
「OK」
「じゃあ行こう!」
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