4話。
----昼休み。
「―――でさ。オレがそう言ったのに、あいつなんか意味わかんないこと言い出してさぁ」
「・・・」
梳晴は奏汰と昼ご飯を食べている。
「―――っていうわけ。もうみんな大爆笑で。」
「ふーん…」
奏汰のマシンガントークは面白いからちゃんと聞いているが、口をはさむ隙はない。
「そういえば、梳晴今日掃除当番だよな?」
「そうだっけ」
マシンガントークが始まったら、口をはさめるのは疑問形の時だけ。
そこから話を奏汰の流れから引き離して、会話に進める…というのが梳晴の得意な〈奏汰のマシンガントーク撃退法〉。
「オレちゃんと覚えてるんだよ!長期休みの前の掃除当番が誰だったか。
休み明けの順番がずれないようにね…」
「で、今日は俺の番だと」
「そうそう。でも今日依真ちゃんと一緒に秀也さんの所行くんでしょ?」
撃退法をしなくても会話に進んだみたいだ。
「あーそっか。でもまぁ依真なら待ってるだろ」
「だめだめっ!だめですよ梳晴さん!」
奏汰が高い声を出して言った。
「なんだよ急に…今度は何をイメージしてその口調なの」
「女子の心を理解する精霊のイメージ」
「なんだそれ」
「まぁそれはいいからいいから。オレが掃除当番代わってやるよ」
「は?いいよそんなの」
「もう代わるって決めたからー」
「ちょっ…勝手に…」
「あ!依真ちゃんに平坂ちゃん!ちょっといい!?」
奏汰が、ちょうどそばを通った2人に声をかけた。
「なーにー井浦」
そう言いながら近づいてきたのは平坂柚稀。
依真といつも一緒にいる女子だ。
親友らしい。
依真もその横にいて、一緒に近づいてくる。
「んーえっとー…」
「あーはいはい。あたしじゃなくて依真に用なんでしょ。わかってるから」
「平坂ちゃんにも用あるって!」
笑いながら柚稀が言ったが、奏汰は慌てて答えた。
「ほんと?何?」
「あー…」
「なーにー?」
女の子には優しく!をモットーにしている奏汰が唯一たじたじになる相手、それが平坂柚稀。
いわゆるサバサバ系女子。
(仕方ない。助けてやろう)
梳晴はたじたじな奏汰を助けるために口を開く。
「奏汰。依真への用を先にしたら」
「そうしよう!ナイス梳晴!」
「私にも用があるの? 奏汰くん」
「あー井浦、依真に逃げたな」
「待って待って平坂ちゃん。依真ちゃんへの用が終わったら話すから!絶対だから!」
「用ってほどの事じゃないんだけど…今日、梳晴の掃除当番代わったから、
依真ちゃん梳晴のこと待たなくて大丈夫だよってだけ!」
「あ、そうだったんだ。ありがとう奏汰くん」
「いえいえ!」
(あ…笑った)
思いがけないところで依真の笑顔を見られた。
(ちゃんと焼付けよう…)
奏汰と柚稀がまた何かを話し始める中、梳晴は依真の笑顔を目に焼き付けた。
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