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8話 酒場に現れる伯爵の息子

 戦士の上位互換として魔法戦士や聖騎士(パラディン)という職業がある。他にもソードマスターやアックスマスターなどの武器+称号みたいなものもある。

 魔法使いにも魔術師(メイジ)魔 導 師(ウイザード)賢 者(ウォーロック)上 級 賢 者(ハイウォーロック)などがある。

 それぞれの職業に上位というモノが存在する。

 何が言いたいかというと……。


「僕はアルーノ伯爵家・長男のアルーゾ・アルーノ。魔法剣士だ! 尋常に勝負しろ、三流戦士!」


 冒険者の集まる酒場の中で、ラーズは金髪の美男子に白い手袋を叩きつけられていた。

 ポカーンとするラーズ。

 なんでこんなことになったのか、思い当たる節がまるでない。


「ちょっと金髪ボケ男! お兄ちゃんは三流戦士なんかじゃないわよ、少なくても二流よ!」

「……」

「フォローになってないぞ、ファイレ」


 人に指を突きつけ怒鳴り声を上げるファイレに、冷静にツッコむスイロウ。どうやら例の『面倒なこと』がやってきたらしいが、なんでラーズが決闘を申し込まれているかがわからない。


 アルーゾ・アルーノ 年齢16歳 男

 金髪に碧眼、身長170cm前後 体重は不明。美男子である。しかも伯爵家。


「スイロウはなんでこんな美男子の求婚を断るんだ? お金もあるし魔法戦士なら才能もあるだろう? 性格がよっぽど悪いのか?」


 普通に考えて断る理由がない。


「性格も悪くはない。ただ、反りが合わない。それに私は冒険者という職業が気にいっている」

「ですから、僕は冒険者でも構わないと……」

「言っただろう、『反りがあわない』」

「何がイケナイというのですか! アナタが望むなら僕はなんだってやってみせます! よりによってこんな二流の戦士なんてどこがいいんですか!?」

「待て! 金髪ボケ男! スイロウごときがお兄ちゃんと恋仲だと思ってるのか! 天が許しても私が許さん」

ごとき(・ ・ ・)……って。まぁいい。ラーズとは冒険者の仲間というだけだ。アルーゾ殿が気に掛ける、ましてや決闘を申し出るのは筋違いだ」


 そこでようやくラーズは勘違いから自分が決闘を申し込まれたのだと理解した。

 スイロウ達は酒場の掲示板の依頼を確認しに行こうとするが、アルーゾの話はそれだけでは終わらなかった。


「その男より僕の方が役に立ちます。冒険に行くなら役に立つ者に命を預けるべきです、違いますか、スイロウ様?」


 すぐにラーズとファイレは"引っかかった"が聞き流すことにする。

 『なるほど、厄介ごとだ』そう思わずにはいられない。知らなくていいことをベラベラ喋り出しそうだ。


「アルーゾ殿は問題が多すぎる。残念だが私と一緒に冒険するには不適格だと言わざるを得ない」


 『うんうん』と頷くラーズ、ファイレ、ガイアル。納得できないのはアルーゾ本人。


「そこで決闘です! 僕の方がその三流……二流戦士より優秀だと証明されれば僕と共に冒険すると約束してください!」

「なら2本勝負でいいんじゃない? 互いに得意な勝負を提示するの」

「ファイレ!? 何を言ってる。アルーゾ殿の土俵に乗るなどラーズを追い出すことになるのだぞ!?」

「焦り過ぎだよ、スイロウ。ガイアルはどう思う?」

「……」


 無表情のまま顎に手を当て、ファイレの考えを読み解いていく。

 そもそも、ファイレが言ってることがおかしい。『3本勝負』でなく『2本勝負』なのだ。


「……いいと思う」


 なんとなく、ファイレの意図を汲み取る。ただ、相手が了承するかということに関わってくる。2本のうち1本はラーズが『絶対に勝てる』と思う勝負をするのだろう。

 ただ、それが何なのかがわからないが……。

 さすがにガイアルまでもが納得するとなるとスイロウも『得策』があると思い首肯する。


「わかった。仕方あるまい」

「いや、僕がわからないよ!」


 早速、突っかかってくる。当たり前であるが……。


「2本勝負? どうかんがえても3本だろ、そこの魔術師!」

「ファイレ……よ、お坊ちゃま。2本で十分でしょ。だって お兄ちゃんより優秀だというのなら1対1で引き分けた時点でお坊ちゃんの方が優秀だとはいえないでしょ? 引き分けならあなたが私たちの冒険に付き添う必要はないのよ」

「うっぐっ……」


 言葉を詰まらすアルーゾ。『彼より優秀だ』と言ったのだ。優秀さを示すのなら引き分けは負けということになる。これで絶対的な不利にアルーゾは追い込まれる。

 相手が何を提示してくるかわからないが、絶対の自信を持っている勝負を仕掛けてくることは間違いない。はじめから1本勝負で相手が有利な条件と言える。


「卑怯だぞ!」

「はっはっは、まさか卑怯と呼ばれるのがこんなに気持ちいいなんて思わなかったわ。私も師匠によく言い放ってたわ~。師匠もこんな気持ちだったのかしら。

 でも、私も鬼じゃないわ。まずは互いに何を勝負するか決めましょう。そして、練習が必要なら期間を設けましょう。そうすれば優秀な(・ ・ ・)お坊ちゃんならお兄ちゃんを超せるんじゃないかしら?」


 ファイレの条件は決して悪くはない……だが、練習期間をもってしてもラーズの勝利が揺るがないと感じていることが言葉の端々から感じられる。

 たかが、二流戦士に自分がおとるというのか……そう思うと逆にアルーゾの心に火が灯る。こんな男に劣るところなど何一つないはずだと。


「いいだろう、受けてやる」

「じゃぁ、何の勝負をするか決めてちょうだい。こっちは決まってるから。あぁ、死ぬのとかは勘弁ね」

「ちょっと待て、ファイレ。何にも決まってないし、俺が伯爵のご子息に勝てるもんがあるとはおもえないんだが……」

「今さら怖気づいたか! だが、もう遅い。こちらは剣による決闘を申し込む」


 『ワー!!』という歓声と共に酒場の中が一気に盛り上がる。

 忘れていたが酒場の中だった。取っ組み合いではなかったが、どうやら注目の的になっていたらしい。決闘になったことに対して、冒険者も多く元より血の気の多い客ばかり、剣の決闘など良い酒の(さかな)なのだろう。早く切り合えと言わんばかりだ。

 もう一つの対決を提示しようとしているファイレにも注目が集まっていく。


「勿論その決闘は受けるわ。そしてこちらの決闘はマッサージ対決よ!」

「うおおおっぉ……ぉ? ……??」


 何を言っているのかわからない……ファイレ以外の酒場の空気が固まる。


「酒場にいるおっさん11人をマッサージして気持ち良かった方を決めてもらうの。で半数以上の人が気持ち良かった方が勝ち」

「……」


 ガイアルとスイロウは納得した。

 『あぁ、こりゃ~負けんわ~』と……。 


「ぼ、僕を馬鹿にしてるのか! そんなわけのわからない対決で冒険に何の関係がある!」

「全く関係ないとは言えないでしょ? 疲れが残れば次の冒険で危険は増すんだから」

「そんなのしっかり休めば!」

()るのか反るのか、決めろアルーゾ殿!!」


 理由を次から次へと述べようとしたところにスイロウに一括されてしまう。

 歯軋りをしながら選択肢のない答えに考えをめぐらす。長い沈黙になる。

 マッサージごときが上手い下手もあるまいに……そう思うが必ず勝てる手段が思いつかない。


「……いいだろう。その勝負受けてやる。ただし、一週間 時間をもらう。必ず必勝法を見つけ出してやる」


 踵を返し酒場を後にする。

 すでにアルーゾには道筋は見えていた。


 マッサージなど誰がやっても大した変わりは無い。それなのに彼女たちからは『必勝』のムードが漂う。なれば、何かしらの勝つ手段を持ち合わせていると考えるのが妥当だろう。

 判定に知り合いがいればどうだろう。それだけで状況は有利に傾く。アルーゾには酒場に知り合いはいないし、いるわけもない。こんな低級な酒場で飲む趣味もない。スイロウがいるから来ているだけだ。

 だが、一週間あれば話は変わってるく。簡単に言えば買収……情とお金とでどちらに働くか。しかも、大した悪巧みでもない。ちょっと手心を加えるだけだ。


 酒場の中はしばらく静まり返っていた。が、スイロウ達が移動するのに伴いにぎわいを取り戻していく。


「お兄ちゃん」

「あぁ、助かった。もちろんマッサージなんて訳のわからない対決まで持ち込まない。一週間、アルーゾに対する剣の練習ができる」

「さすがお兄ちゃん、理解が早くて助かるわ」

「……」

「えっ!? マッサージ対決がメインじゃないのか?」

「そんなわけないだろ、マッサージなんて誰がやってもそんなに変わらない。だが、そのことを提示することでアルーゾは剣の勝負よりマッサージの方をどうするかで頭がいっぱいになってるだろう。その隙を突く!

 そうなれば、アルーゾのことを知っているスイロウとガイアルに剣の練習に付き合ってもらえば、俺でも勝てる見込みが出てくる

 おそらく、今のまま闘えば7~8割近い確率で負けるんじゃないか?」

「確かにそうだな。一週間、対アルーゾだけで訓練すれば五分五分かそれ以上には……なるか。ただし剣を何を使うかによるがな」

「命のやり取りをしないなら、刃の無い鉄剣でしょ? 魔法戦士でも鉄と魔法の相性は悪いから、魔法は使えなくなる。まさか練習試合で刃の無いミスリルソードってことはないでしょ」

「おそらくな。そんなところに無駄金を投じないとは思うが、絶対ではないぞ」

「まぁ、その辺も含めて一週間、みっちり剣の稽古をしましょう。その間、冒険には出れないけどね」


 スイロウは『一週間でアルーゾが(まと)わりつかないなら安いもんだ』と納得する。


 ファイレは対決でマッサージを選択した。これは勝てるという雰囲気をスイロウとガイアルが(かも)し出し、アルーゾに危機感を与えそれだけに意識を向けさせた。

 さらに一週間の準備期間を相手側から引き出した。

 が、ガイアルは『たまたまだったのではないのだろうか』と首を傾げていた。

 ファイレの言葉を好意的に受け取ったラーズが勝手に勘違いをし、剣で決着をつける口実が出来ただけみたいな……。

 ファイレの顔を仰ぎ見ると自信満々といった感じだ。考えていたのか、いなかったのかはわからない。ため息を()く。


「どうした、ガイアル?」

「……別に……」


 どちらでも構わない。

 とりあえずはラーズにアルーゾを倒してもらうことにしようと思考を切り替えた。

魔力と鉄は相性が悪いらしいです

剣や鎧が鉄製だと魔法は通常発動しません

そのため魔法戦士になる場合はミスリルが必要になります

中にはその法則を無視する者もいるらしいですが・・・

そんな世界設定

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