3話 ドワーフだけどもさー
日が沈み、夜の成りはじめ……青髪剣士・スイロウに連れられてやってきた鍛冶屋。
大通りから一本外れているが立地は悪くない。スイロウが言うには冒険での相棒で腕のいいドワーフが経営しているそうだ。
「今現在、私がとってきたオリハルコンを加工してナイフを作ってくれているはずだ」
「オリハルコン! めちゃめちゃ硬いと言われる金属で金の10倍の値打ちがあると言われている!」
「それだけで、大金持ちになれそうだから もう冒険者とか辞めればぁ~」
ラーズはオリハルコンのナイフに興味を持ったが、ファイレは未だになんとかスイロウをパーティーに入れない方法を画策していた。
もっとも、そんなことで諦めるとも思っていないし、ドワーフが何とかするだろうと考えていた。
スイロウは二人の言葉を聞き流すように木の扉を開き店内に入る。
店内にはシャギーカットの金髪少女がカウンターに座っていた。
いや、少女に見えるが立派な成人女性だ。
「紹介しよう。私の相棒のドワーフのガイアルだ」
「なんでよ!!」
思わず叫んだ……心の限り!
『いや、だってドワーフっていったら髭モジャのお爺さんじゃん! なにこの美少女! 帰れ!』と心の中では更なる罵倒[?]が続いているが、兄の前でなんとかそんな言葉を飲み込んだ。
『予想外デース』と思いながらも『断ってくれれば問題なし』と何とかプランを修正していく。
断らなかったら女性率が高すぎる!
「どうしたんだ、ファイレ?」
「えっ、うぅん、なんでもない。ただドワーフっていったら普通おじいさんじゃない?」
「そうでもない。ドワーフは男性は髭が生えているからお爺さんと間違われやすいが青年も多いのだ」
と、したり顔でスイロウに言われる……が、『そんな男の事情なんて聞いてないよ! 女性なのが問題だよ!』と声には出さず、引きつった笑顔を返すファイレであった。
「ガイアル、今、話したいことがあるんだが大丈夫か?」
店の中を見渡しながらスイロウが尋ねる。
人気が無いのか、暇な時間帯なのか判断はつかないが、客はいない。
「……」
無言でうなずくガイアル。
そんな彼女を見てスイロウはラーズ達に助けられたことなどを話す。
「そんなわけで、彼らとパーティーを組みたいのだがいいか?」
「……」
無言でうなずくガイアル。
ガイアルが喋らず頷くだけという行動を『さっきも見た光景だなぁ~』とボンヤリ考えるファイレ……。
「なんでよ!!」
1テンポ遅れてツッコミを入れる。
危うくそのまま流してパーティーを組まされてしまう所だった。
「よく考えなさいよ、お嬢ちゃん! 私たちの素性はわかってないのよ! どこの馬の骨ともわからないような奴とあっさりパーティーを組んじゃダメでしょ! 確かに、確かに私とお兄ちゃんはこの青髪の人を……」
「スイロウだ」
「スイロウを助けました。あぁ助けましたよ! でも、これが罠かもしれないでしょ。よく考えて、よーく考えよぉ。私たちがアナタたちのパーティーに潜り込んで暗殺を企んでるかもしれないでしょ?」
「その割には仮面の男たちを跡形もなく消し炭としていたがな」
「スイロウは黙ってて!」
ビシッと人差し指を突きつけて、スイロウを黙らせる。そうして、金髪美少女ガイアルちゃんにだけに選択させる。
ラーズは妹の言い分も一理あるので黙って見ていることにする。いろいろ言いたいこともあるが……。
「……」
ガイアルは顎に手を当て、小首を捻り考える。
『なんだ、この人形みたいな生き物は……』とファイレですら思ってしまう。『ワザとだ、ワザと可愛らしくアピールしてるな!』と心で罵倒しても癒される仕草だ。
……悔しい。
そんな行動も、ものの数分で終わり親指をビシっと立てる。
「……問題ない」
口をあんぐり開けるファイレ。
問題ないはずがない。いや、いろいろあるだろ。
だが、スイロウが代弁する。
「私もそうだが、ガイアルは本当に問題ないと思っている。理由は簡単だ。ファイレがいちいち自分たちの怪しい部分を曝け出していくからだ。
本当に危険な奴らなら自分に不利になることは言わないだろう」
「そういう作戦もあるでしょ!」
もう、駄々っ子のように地団駄を踏む。
「まぁ、パーティーを組んでもらえるならいいじゃないか、ファイレ」
「ぅぐっ! お……お兄ちゃん……そう、なんだけど……」
これ以上、パーティーを組まない理由がファイレには思いつかない。
兄はドラゴンを倒すことを目的としてこの町に来ている。さすがに無理矢理 邪魔をするわけにはいかない。いや、結構 無理矢理 邪魔していましたが……。
倒せるチャンスが巡ってきている以上、ここで挫折せざるを得なかった。
ラーズがガイアルに手を伸ばし握手を求める。
「……」
無言で応じるガイアル。無口っぽい……いつ喋ったかわからない。『どっかで喋っていたよなぁ~』とか思いながら小さな手を握る。
だが、小さな手から想像も出来ないほどの圧倒的な握力を感じる。見た目以上にドワーフらしい。
二人が握手している上にスイロウが手を乗せてくる。
見つめ合う三人。
「待って、待って! 私も私もぉーー!!」
二人っきりで手を握り合いたいが、この場はひとまず諦めて手を重ね合わすことで丸く収める。強いて言うなら『スイロウの手のせいで、お兄ちゃんの手にふれられませんが!』と呪いの言葉を心で呟く。
「四人パーティーか。それぞれの特徴を確認しておくか」
ラーズの言葉にガイアルは閉店時間を少し早めて店を閉め、三人を居住スペースに案内する。
閉店近くだったため客がいなかったのかもしれない。
招かれた部屋は四人 入っても まだ余裕のあるダイニングキッチンだった。長方形のテーブルは六人席。鍛冶場はまた別にあるらしい。
ガイアルがお茶とお茶請けを用意して、思い思いに席に着く。
それぞれの職種
ラーズ……戦士
ファイレ…魔術師
スイロウ…剣士
ガイアル…神官
ちなみに戦士と剣士の違いは、大まかに言うと戦士が武器何でもアリ 剣士は武器は剣専門である。
「これはバランスがいいな」
ラーズは感嘆の声を漏らす。
パーティーとしては理想的な組み合わせだろう。
ガイアルが神官なのは意外だった。鍛冶屋ということで戦士を想像していた……もっともラーズもファイレと一緒で戦士とか以前にドワーフ=斧持ったおっさんを想像していたが、それは置いといたとして……。
神官ともなれば神聖魔法が使える。
神聖魔法は神への信仰心があり、才能があれば使えるらしい。才能と言っても信仰心があり修行すれば三人に一人はなれる程度、33.3%なのでさほど難しくもない。教会や神殿以外で仕事をしている人でも使える程度のものだ。
ちなみに、ラーズとファイレも幾多いる中の神の一人を信仰している。ただラーズには才能が無く、ファイレは魔術と神聖魔法は相性が悪いため使えない。
「それで本題に入りたいのだが、ドラゴンを倒すため俺たちは何をすればいい?」
目の前に置かれている紅茶をすする。
ラーズの提案はスイロウ達の作戦の確認でもある。
手ぶらでドラゴンと戦おうとは思っていないだろう。暗に手の内を晒すことを促しているのだ。
勿論、スイロウやガイアルが全部を教えてくれるかは疑わしいが……。
「ガイアル……」
スイロウがガイアルに横目で合図を送ると頷き部屋を出ていった。
ガイアルが『何か』を取りに行っている間、沈黙が流れるがそれはわずか数分だった。
彼女が持ってきたのは鞘に入った一振りのロングソード。
ガタッとファイレは椅子を倒し立ち上がる。
ファイレじゃなくともわかるほどの魔力がその剣から漏れている。
ラーズには強力な魔剣だとしか理解できなかったが、ファイレはもう少し核心に近づいていた。
「まさか竜 殺 し の 剣! 一介の冒険者が持っているよな代物じゃないでしょ!」
対ドラゴンに対し絶大な力を持つ武器・ドラゴンスレイヤー。
たしかにこれが本物ならドラゴン戦の切り札になりえるモノだ。
この世界のドワーフ女性は身長140cm以下の美少女です
ただし握力は100kg近くあります 人間の倍くらい
体重も重たいです ただし女性に体重を聞くのはご法度なのは一緒です
おそらく筋肉に魔力が流れる効果だと思われます