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10話 属性を調べたら おかしかった

 軽く舌なめずりをして食前酒を飲むウィローズ。

 『属性調べ』である。

 口内で反芻するようにしながら目を細める。そして不味そうな顔をしたかと思うと飲み込んだ。


「これがラーズの属性か。予想以上につまらんな。

 さて、どこから話していこうか? 属性というのが6つあることは分かったな。細かくいえばもっとあるが省く。一つの属性を100満点で評価する。数値が高い方が当然よい。平均は50だ。それぞれに数値化できると思ってもらって構わない。

 まずは簡単にラーズの属性値を教えてやろう」


ラーズ

火・33 水・51 風・49 土・28 光・14 闇・62


「こういう風になる。平均値を上回っているのは水と闇。闇属性に偏れば多少才能は伸ばせるだろう」

「お兄ちゃんが闇属性だって師匠もいってたけど、ハッキリ言ってピンと来ないのよね~」

「たしかにラーズは光属性のイメージがある」

「……」

「で、具体的には闇属性は魔法以外だとどうすれば?」

「卑怯な手段や正攻法以外の手段に長けている」

「あまり好ましい手法じゃないな」


 やりたいこととは真逆の才能ということでガッカリする。とてもじゃないが卑怯な手段など取る気にはならない。無駄になりそうな才能だと思った。それ以外も全体的に低い。水ならどんなことが得意とするところか気になるところだが、ウィローズはすでに次のテイスティングに入っている。

 ゆっくりグラスを回し香りなどを確かめている。ラーズの時より念入りな気がする。

 一気に喉に食前酒を流し込んでいく。

 飲み終えると、コトリッとグラスを机の上へと運び、首を傾げる。


「うむ……そのなんだ……」

「いきなり言葉を濁さないでほしいんだけど、ウィローズちゃん。滅茶苦茶、不安になるんですけど~」

「さっそくだがイレギュラーが出たことで少々採点がおかしなことになるが了承せよ」

「えー!? まさか私がおかしいってこと!?」

「有り体に言えばそうなるが、まずは採点結果を確認せよ」


ファイレ

火・128 水・59 風・68 土56 光・51 闇・78


「うぉおぉ!! 私ってば天才じゃない!? 火が128だって!!」


 容赦なくファイレの頭をスイロウがぶん殴る。


「落ち着け。おかしいだろう? ウィローズが言うには10()0()()()だ。128点は満点以上だ」

「天才だからしかたないんじゃないの?」

「そうじゃない……何らかの理由で人間の領域を超えている……ってことなんだろ?」


 ラーズが睨むようにウィローズに確認を取る。

 ため息交じりに頷く。

 料理が運ばれてきているが、別段 気にする様子もなく話を続ける。聞かれてマズイことはないのだろうかと思うが、そこはウィローズに判断をゆだねるしかない。


「人間なら100以上の数値は出ない。ドワーフや獣人でも、エルフであってもだ。何らかの原因がある……が今のところはわからないな。これによる問題が起こるかも不明だ。儂は前例を知らん。知っている奴に聞くことだ」

「……」


 『知っている奴に聞く』……簡単に言うとガイアルは思った。そもそも属性調べをこの街で知っている人間がどれくらいいるかもわからない。おそらくこの街ではウィローズだけではないのだろうか? 貴族や王族でも属性調べをしたという話も聞かない。

 ガイアルが思いにふける中、スイロウの食前酒にウィローズが手を伸ばした。その瞬間、スイロウとガイアルに緊張が走ったことをラーズは見逃さなかった。だが、その緊張の意味を知ることはない。


「これは……なるほど……」

「何がナルホド……なの、ウィローズちゃん?」

「こうなる」


スイロウ

火・0 水・100 風・100 土・0 光100・ 闇・0


「あははははは、ゼロが3つもありあがんの~! 火とか使えないの、コレ!?」

「使えないといえるレベルだな。だが、人間が100が最高値であると言ったが、また最低値は1であるはずなのじゃが?」


 そう言ってスイロウを見る。が、口を真一文字に結び『特に語ることはない』と態度で示す。

 どうやら、おかしいのはファイレだけではないようだ。そしてファイレは原因不明だが、スイロウには心当たりがあるようだ。いや、具体的に知っているのかもしれない。でなければ属性調べを断るとも思えない。

 『こうなると……』とウィローズは思わざるを得ない。ガイアルが普通とは考えづらい。そう思い、食前酒を口に含む。

 口の中で食前酒を前例通りにコロコロと転がしている。そして、いつも通りに首を傾げる。

 ファイレは特殊な人間が見れるのが楽しいらしく、ガイアルも何かしらあるのだろうとワクワクしている。

 ウィローズの喉をお酒が通過するのがわかった。


「どうだった、ウィローズちゃん?」


 その問いに神妙な眼つきでスイロウとガイアルはただ黙っている。彼女たち自身にとってはちょっとした答え合わせなのだろうか?

 ウィローズは……といえば、今までより微妙な顔をしている。


「そうだな……ラーズはこの数値をどう見る?」


ガイアル

火・33 水・51 風・49 土・28 光・14 闇・62


「うーん、いたって普通かな。若干、弱い? えーっと闇が強いか……」

「これって!?」

「ファイレは気が付いたか」

「"気が付いた"? 何に?」


ラーズ

火・33 水・51 風・49 土・28 光・14 闇・62

ガイアル

火・33 水・51 風・49 土・28 光・14 闇・62


「……」

「ぅ……ん? 俺の属性値に似……てる?」

似てる(・ ・ ・)じゃなく、まったく同じだ。可能性は低いが全く同じことがないわけじゃない。それに普通ドワーフは火と土の属性値が高いが低い奴もいる。だが、その二つが重なる可能性はほぼないだろうな」

「えっと、それはどういう……ことだ?」

「お兄ちゃん、簡単に言えばガイアルはお兄ちゃんの属性値をコピーしたんじゃないのかなぁ? そんな方法があるか知らないけど」


 ファイレはガイアルを見るがいつも通りの無表情。それにいつも通りの無口。話す気はないらしい。結論から言えば、おそらくガイアルの正しい属性値ではないのだろう。

 しかし、なぜそんなことをしたかわからない。というか、そんなことができるのかもわからない。ひょっとしたら、コピーではないのかもしれない。


「余興としては僥倖(ぎょうこう)。あやつらからも前金を貰っておるし小僧がボンボンに勝てるようにしてやろう」

「スイロウとガイアルの正体はいいの?」

「おぬしは?」

「別に興味はな~い。お兄ちゃんは?」

「スイロウはスイロウだろうし、ガイアルもガイアルだからな。性格さえ問題なければ俺としては仲間であってほしいと思ってる。属性がわからなくても困らないだろ?」

「育てる方向として困るだろうがな……。まぁ儂が面倒見るわけでもないので貴様らが勝手に努力すればいい」

「そうだ! 俺、闇は嫌なんだけど、それでアルーゾに勝てるのか? たった一日で?」

「……ふー。そんなに難しくはないだろ。儂が教えれば、おそらく8割程度 勝ちの見込みがあるじゃろうな」


 ウィローズはヒレステーキをレアで頼んでいた。薄く切りそれを指でつまみあげ上を向いて口に運ぶ。大口を開けて一口で食べると頬を膨らませモグモグと口を動かしている。


「8割……そんなに高い勝率が可能なのか? いや、一度ラーズの状態を見てから判断した方が……」


 今まで訓練に付き合っていたスイロウが、ウィローズの勝率に異議を唱える。ガイアルも食事をはじめながら同調している。6日間もそれらしい成果が無かったのだから当然といえる。


「ラーズの状態? そんなもん関係なかろう。猫や犬でも勝率8割ならできる。もっとも死にもの狂いになってもらう必要はあるがな」


 汚れた指をペロペロ舐めながら答える。

 フォークやナイフを使わない料理を選んでいるのもあるが ほとんど手掴みで食べながら、いやらしい笑みをこぼすウィローズ。

 それに見合う方法を授けるだけ。

 だが、ハッキリ言うなら どうでもいいのだ。ラーズが伯爵の息子を倒そうが倒せまいが……。


『それよりも……』


 何百年ぶりかわからないがウィローズは面白いおもちゃを見つけた気分だった。

 それは炎の天才少女でも、極端な属性持ちでも、フェイクのドワーフでもない。

 それは、面白味のない闇属性の青年。

 久しぶりに運命の分岐を選択できることを心から楽しんでいた。

ろりBBAは属性以外の能力も調べていますが

彼らに語ることは無かったようです

教える必要もないしね

ちなみに細かい属性には樹とか金とか雲とか色々あります

面倒なので出てくることはありませんが・・・

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