第3隊隊会議
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また、完結しない可能性がございますので、ご注意ください。
※王都騎士団の隊会議は、各隊により出席隊員が異なります。
第3隊では、下記8名にヴェリルアナを加えます。
隊長、副隊長(隊会議書記)
総務取纏役、探査員長、兵糧取纏役、武具管理員長、医療員長、渉外員長。
朝5つ刻を少し過ぎたころ。
「入りますよ~っと」
声と共に、ルドリー(副隊長)とソルテ(総務取纏役)が第3隊隊長室へと入ってくる。
2人は疲れた様子で、少々くたびれている。
セルラッドは、書付していた手を止めた。
「人員は決まったか?」
「この通りに。」
ソルテは、紙を差し出す。
昨日の護符剥離報告を受けてから、ルドリーと共に、討伐隊の人員を見直し、ユリ教の本丸である聖都への派遣組10名、両団連携組20名を選抜したのだ。
これで王都見回りを含む通常業務を行うのは、22名となる。
内訳:
第3隊総勢120名-第3隊隊会議のメンバー(8名)-討伐隊(60名)-派遣組(10名)-連携組(20名)
上記人員に、正規隊員ではないヴェリルアナは含まれていない。
ちなみに、セルラッド以下数名は、討伐隊員の減員も考えた。
しかし、両団会議を経る前であり、減員の場合は王軍にも護符剥離事件を伝える必要がある。
どこまで護符剥離の情報を漏らしてよいか不明であったので、減員は避けた。
この王軍は、正規隊員2万人の王直属の軍隊である。
同じく王直属である、近衛騎士団及び王都騎士団の両団とは、上層部の人的交流や討伐隊等の共同行動があるが、比較的距離がある。
王都は、護符付きの外壁でしっかりと囲まれている。
建国時の、魔物対策事情、王位争いの事情、護符の事情、及び人員確保の事情等により、王都を広く造ることはできなかった。
そのため、王都では大体5000人強の在都人数制限を取っている。
王軍は、人数的な問題で王都にはとても収容できなかった。そのため、総帥ごと王都に近い都市に配備されている。
王都に近い4都市は、王都から半径2~3kmの距離をもって造られているので、実際の距離的に王軍と両団は関係が遠い。
また、王都はその都門で厳しい検問があり、王軍といえどめったやたらに入都ができない。
王軍だけではないが、王都内の者とそうでない者には、心理的に距離があった。
「アイゾー(探査員長)、リレタラック(渉外員長)は、両団会議の前に他隊のやつらと話し合うって出て行った。
ドスミ(兵糧取纏役)も、何人かの隊員と高床蔵に向かっている。」
「そうか。」
「3隊の夜番免除申請書はこちらに。」
ソルテはまた別の紙を差し出した。
騎士団には珍しく、ソルテは事務作業を進んでこなす貴重な人員だ。
セルラッドは頷いてそれを受け取る。
「両団会議は9つ刻、御前会議は11つ刻から行うそうだ。
時間が延びることも考えて、夜の4つ刻からまた隊会議を行う予定だからその予定で行動するように。」
「わかりました。朝の隊会議が終わり次第、各小隊長を集め、ある程度の説明を行います。」
「ああ、ルドリー、ソルテ、任せる。」
3人はいくつかの打ち合わせをする。
そうするうちに隊会議の定刻6つ刻となり、サザラ(医療員長)が顔を出した。
本日の朝の見回り組のゴットン(武具管理員長)は、少し遅れてやってきた。
「あれ、ヒメさん一緒じゃないのか?」
ルドリーがゴットンに尋ねる。
ヴェリルアナは、いつも朝の見回り組を務める隊会議メンバーと共に現れるのである。
「見回りのときに、ヒメの使いがやってきて少し遅れると伝言を受け取った。」
へ~っと、ルドリーは目を眇める。
「わかった。では人数は少ないが、これから会議に入る。」
まず、ソルテが紙を配布する。
「昨日の西都門の出入りは紙に記載したとおりです。
出入り業者、物品、荷物量に取り立てて変化はありません。」
週初めの1の日であれば、隊間で共有された情報(7の日開催の団会議で報告される、その週における、他隊管轄の事柄。都門の出入りほか多数)も併せて報告する。
しかし本日は2の日であるので、報告量は少ない。
ソルテは、こまごまと破損武具数や在庫医療物品、本日の食事メニュー等を報告していく。
「そして、本日の主要な議題だが。」
セルラッドがそう言ったとき、隊長室の扉がノックされた。
ヴェリルアナが名乗りを挙げたので、入室を許可する。
「遅くなり、失礼いたしました。」
ヴェリルアナは一礼して、自席に座る。
「ちょうど今、護符の話をしようとしていたところだ。補佐、報告を。」
セルラッドは促す。
「了解しました。
昨日の巡回ですが、ビトー隊員と共に、王城前広場を起点とし、西都門経由で北都門まで実施しました。
北都門まで後5枚、という6枚目の護符に、外壁からの剥離、及び保護膜の消滅を確認。北都門までの残り5枚の護符の状態確認後、ハルト第2小隊長へ報告。
その後、巡回経路を逆に回り、護符の保護膜の状態確認後、都内に異常事態が発生していないか確認、派出所へ戻りました。 」
「他隊の巡回により、その1枚以外の護符に状態異常は見受けられなかったそうだ。」
セルラッドが補足する。
「6枚目の護符ですが、剥離はされていたものの2~3cmほど、また破損は見当たりませんでした。
保護膜があったと思われる外壁の場所に傷や変色ははなく、状態はきれいです。
修復士によって、貼り直し、及び保護膜形成は可能と思料します。」
みな、静かにヴェリルアナの話を聞く。
「通常、護符に至る前に保護膜に接触を拒絶されます。
無理に保護膜を破れば、なにがしかの痕跡が外壁に残り、結界を管理しているユリ教会の都内本殿でも異常を察知できるはず。
御前会議で何かしらの報告があるかと思料します。
また、結界に対する影響についても、報告があると思料します。」
「わかった。両団会議へも話を通しておく必要があるな。
補佐は両団会議へは出席するのか?」
セルラッドは問う。
「いえ。この後、公爵邸に戻り、御前会議には顔を出させていただきます。」
「わかった。」
ヴェリルアナは報告を終えた。
「それでは、本日の会議は終わりとする。
解散。」
セルラッドの声と共に、集まった隊会議メンバーは配布された紙をルドリーに渡し、隊長室を出て行く。
ルドリーは書類を保存用と破棄に分け、無骨な手でファイリングをしていく。
一応重要書類なので、隊会議資料は副隊長であるルドリーに管理を任されている。
根っからの武道派であったが、ルドリーは成長しているのである。