一年C組 高宮 天と霧野 晋平
「じゃあ全員リストバンドをはずしてその場で待機しなさい。」
教師の声が体育館に響き、生徒達は手首につけられたリストバンドをはずし始めた。
このリストバンドは政府指定のもので、着用が義務づけられている。一定の魔力を抑える機能があり、これによって凶悪な魔法による犯罪が防がれている。
学校の授業や特定の仕事でのみ、政府の認可を得てはずすことが認められている。
「今日は魔法武術の基礎の授業だ。まずペアを組んで、前の授業でやった移動魔法を復習しなさい。」
教師の指示を受け、リストバンドをはずし終わった生徒達がペアを組みに動き始める。
「しんぺー、俺と組もうぜー」
その中の一人、高宮 天は、親友の霧野 晋平に話しかけていた。
「お前では相手にならないんだけどな」
話しかけられた晋平は笑いながら軽く返す。
「余裕でいられるのも今のうちだ。今日こそお前をボコボコにして病院送りにしてやるぜ!」
「たかが授業でどれだけやるつもりだよ。あと、俺が魔法武術得意なこと知ってるだろ?そろそろ10敗目じゃないのか?」
天は魔法武術を得意とする晋平には歯が立たないのである。それでも負けん気の強い天は何度も何度も晋平に挑んでは返り討ちにされている。
「は、なら魔法剣術の時に目にものみせてやるよ!」
「魔法剣術は通常授業にはないだろう」
「おい高宮と霧野、早く始めろー」
なかなか始めない二人を見かねて教師が注意をする。
「すいません。今から始めます。」
「りょーかいでーす」
大人の対応をとったのは晋平だ。天はあらゆるところで晋平より子供である。
「まずは移動魔法の復習だっけ?あれ退屈なんだよなー」
「そんなこと言うもんじゃないぞ。魔法武術でかなり重要なんだからな。」
「へいへい、わかりましたよ」
軽いやり取りを交わしながらようやく二人は真面目に授業に取り組み始めた。
日本魔法高校軍事科には午前中行われる通常授業と、午後に行われる特別授業がある。
午前中の通常授業では普通の高校生の行う授業や、全ての魔法戦闘に必要なことを学ぶ。
午後に行われる特別授業では、入学時に行われた適性検査によって決められたクラスで、専門的な魔法戦闘を学ぶ。これによって自分に合った戦闘スタイルを身につけることができるようになっている。
ちなみに天のクラスは魔法剣術、晋平のクラスは魔法武術である。
ほかにも魔法陣や召喚魔法、自然魔法など様々なクラスが存在しているのだ。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、魔法武術の授業が終わった。
ちなみに、記念すべき天の10敗目であった。