四月二十七日②
「ふむ」
山の外…谷の中にひっそり作られた航空基地で兵器群を眺めてだいたいこの世界の装備は解った、小銃は五発装填可能のボルトアクションタイプ、飛行機は…これは最近になって作られたらしいがレシプロ式の単翼機だ、重爆撃機になると双発や四発原動機などがあるらしいが…生憎ここにあるのは陸爆位で…ああ、この爆撃機は急降下爆撃機の事だ、地球だとシュトゥーカとか彗星とかが有名かな。
「命中率は…」
ボルトアクションを構え、木製の的に向かって撃ってみる。
「ド真ん中、試射もしてないのに当てられるとは…上々の命中率だ」
だが問題はマジンと呼ばれた兵器…いやこれ兵器なのか?まるでジャパニメーションに出てくるロボットのようだ、全高五百四十三センチ、総重量四千十八キログラム…五十ミリ戦車砲を改造した半自動小銃を携えた装甲で覆われた巨人、なんのいやがらせか腰に剣まで刺している。
「おいVV、これは何かの冗談か?」
隣で腕を組みながらこちらを睨んでいるVVに聞いてみる。
「はっ、やはり貴様は蛮人か、こういった機動兵器を見た事もない中小国の生まれか」
VVはどうやら僕の故郷がマジンを作れない大した工業基盤を持ってない小さな国だと決めつけたようだ、生憎、こちらの世界の世界全ての工業力を足しても恐らく日本一国の生産力には勝てないと言っておこう。
「ふむ、ま、僕の祖国より変な所に特化しているのは認めよう」
兵器企画書を見るとコイツはどうやら浮いて背中に着けたロケットで高速移動が出来るらしい…がなんじゃこりゃ…石油がない代わりに水溶マデグライドがどーたらこーたらと書かれている。
「おい、VVマデグライドとは何だ?これ読みにくいんだけど」
「文句を言うな…いいかマデグライドとはな…」
小一時間ほど説明して貰ったが要するにこれが僕らの世界の石油でありレアメタルのようだ、だが気発しないというのは素晴らしいと思う…つーかVVは教師に向いていないな、伝統とかいつ見つかったとか加工方法とか知らなくてもいい。
僕が聞いたのは用途だ、他の事はいらない。
「まぁいいよ、この紙に書いたとおりに軍の編成を行っておいてくれ」
VVに紙を渡してヘルメットを被る。
「おい、どこに行く?」
紙を受け取ったVVはこちらを訝しげに睨んでいる、別段怪しい事をするわけじゃない。
「ちょっと首都を見てくる、地図は渡されたけど防衛隊の戦線がどこまで摩耗しているのか見てこないと」
ゴーグルを着けて小銃を肩に担ぐ、革の弾丸ポーチを括りつけて戦闘機に乗り込む…レーダーがないのはありがたい…それに今日は雨、こちらも危険を伴うが敵の航空機の追撃をかわしやすい。
「おい!危険だぞ!」
「いいからプロペラ回してくれ、すぐに帰ってくるよ」
「…どうなっても知らんからな!!」
VVが悪態を着きながらスタータを回し、それに連動してプロペラが回る…さてこのあたりでエンジンをかけて…よしよし上手くいった。
「車輪止めを外して!!」
車輪止めが外されて機体が前に進む、VVに手を振ると顔をそむけながらも手を振り返してくれた、帽振れはしてくれなかったが…まぁいいだろう。
「…おいおい、原動機を吹かすと機体まで震えてないか?」
道が舗装されていない土道だと言うのもあるのだろうが…こりゃ揺れすぎだ!操縦桿を引いて離陸し、風防を閉める…やばいなぁ、谷から出たら思ったより大雨だ…それに風も強い上にどれで足引きこんでいいかわからない。
「えーっと…あったあったマニュアルマニュアル……どれどれ?………これか?」
翼から何か歯車がはまるような音がした、どうやらこれは安全装置だったようだ…戻して戻して…
「…これかな?」
機体が僅かに揺れて失速している…って墜落しちまう!これ手動混成レバーか…あぶねぇあぶねぇ。
「これか」
レバーを引くと足が引きこまれたのか速度があがった、トルクレバーでスピードを調節し東を目指す、操縦桿を引いて雨雲の上に出てのんびりと太陽を眺める。
『救世主ナナシよ!何をしておる!?』
ぶら下がった通信機の受話器から甲高い声が響き渡る…恐らくこれは魔王セリスだろう。
「偵察だよ魔王様、戦術地図だけじゃ街の細かい形とかは理解しがたいからね」
そう返すと悩んでいるのか子犬が寂しさのあまり唸ったような声が聞こえた、お前は犬か、いや角が生えてる分牛か?
『あまり無茶はしてくれるなよ?そなた一人の体ではないのだからな』
僕は妊婦か、そう返答して通信機を切る…雨雲が厚くて地面が見えない、あまり雲の切れ目から下を覗くのは良く無さそうだ、簡易式だが滑走路が見えた、敵はあまり航空機を重要視していないのか艦載機クラスの小さな戦闘機がいくつも並んでいる、ここから見える戦闘機だけで三十機、大してこちらの戦闘機は僕が乗っているのを含めて十八機…こりゃ無理だ、太平洋戦争初期の零戦クラスの活躍をしなくては。
「…そろそろかな」
操縦桿を僅かに倒して機体を下に向ける…緩やかに加速しながら雲を突き破る…やっぱり大雨だ、こんな中風防を開ける訳にはいかないので機体をひっくり返して下を眺める。
やはりかなり損耗しているのが見える、死体を埋葬する余裕がないのか隅に敵味方に関わらず山となっている…こりゃ首都奪還後も疫病の対策とかで大変そうだ。
首都をグルッと回ってある程度の状況をメモして機体を上昇させる…雨と言えどやはり気が付くか、敵の戦闘機が哨戒に上がってきやがった、心理的には雲の上に出て逃げたいところだが…生憎雲の上は風も弱くあの五機の戦闘機を相手にするには分が悪すぎる、僕はエースじゃないのだから。
取る手は一つ、そして幸運にも敵はこちらをまだ発見していない…僕が見つけられたのは敵の滑走路を見たら丁度敵が上がってくる所だったからだ、雲の切れ目から見える太陽を見た後時計を見て方角を確認し敵の後ろに回り込む、そのまま飛んでいる戦闘機は無視しして機体を急降下させる。
「がっ…!」
体にかかるGで視界が暗転しそうになる、エアブレーキを作動させて機銃の安全装置を解除する…恐らく敵の突発的な奇襲を防ぐために格納庫の外に並べられている飛行機達に狙いを定めてトリガーを引き絞った。
十三ミリ機銃四丁が主翼と機首から火を吹く、徹甲弾、焼夷弾、曳光弾の順に発射され飛行機に降り注ぐ…地面に止まっている機体など子供でも撃ち抜ける…爆撃機を中心に攻撃して火を吹かせる…が、どうやら僕の腕がよほど悪いのか燃えあがった五機以外は穴だらけになっただけであった。
「ちっ、もう上がってきやがった」
反転して追撃に移りたいところだが生憎本業のパイロットなどと戦えるわけもなく僕はさっさと雲の中に逃げ込む…雲の中の飛行は基本無茶に分類される、乱気流で飛行機の揚力をまともに保てず失速…そして墜落とのコンボによって先人たちは空に散って行った。
「やっぱり無茶か!?」
期待がとんでもない揺れ方をしている、下手したら翼が捥げるかもしれない…念のため落下傘を背中に背負って準備しておく、数キロ進んだところで雲の上に飛び出す…どうやら墜落だけは免れたみたいだ。
『ナナシ~そろそろ帰ってきてたもれ~…余は寂しいぞー…』
さて魔王様が泣き出しそうだからさっさと帰路に着くとしよう、大体の作戦は出来上がった、さぁ反撃だ、蹂躙だ…魔王様が望む世界を作ってあげようじゃないか!
投稿ミス?バグかな




