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第十三話

短めですけど、投稿します。


どうも、うまくいかない・・・・


 生徒会室をゴールにする放課後の見回りにおいて、同行したのは昼休み同様大黒柱先輩ともうひとり、七転由起だった。なにやらニコニコ笑顔で僕に追従してくる。


「万さんはどこにお住まいなんですか?」


「正直村」


「メールアドレス交換してくださいよ」


「僕携帯持ってないんだ」


「え、本当ですか?」


「もちろん本当だよ。僕はなによりも嘘が嫌いなんだ。あとピーマン」


「携帯買おうとは思わないんですか?」


「思わないなぁ。別になくて不自由したこともないしね」


「え、でも友達とも待ち合わせとか、あった方が便利じゃないですか」


「友達? ああ友達ね、友達。友達との待ち合わせね。そうだね、確かにあればあるで多少は便利になるかもしれないし決して使えないと言うわけじゃないけど、でもほら僕くらいになると友達とはもう以心伝心だからね。シンパシーどころかテレパシーできるレベル? もちろんそういう能力者に限らずだよ。だから僕は携帯電話は必要にはならないかなーって思うんだよねあくまでも僕くらいになればの話だけどね?」


「へー、そうなんですかあ」


「・・・・・・・」


 心なしか、軽く流されたような気がする。


 放課後。僕を迎えに来てくれた大黒柱先輩と一緒に見回りを始めてしばらく。いつの間にか僕の背後にいて、いつの間にか僕と楽しげに会話をしているのが、この由起。


 気配を無くす能力でも持っているのかと聞きたくなる。なんで僕は先輩を放置して会話に花を咲かせているのだろうか。年功序列は大切だ。年上は敬わねばならないと誰かに言われた気がする。


「すいません、大黒柱先輩」


 僕が話し掛けると、僕と由起の半歩後ろを歩いていた大黒柱先輩は、ハッと目を開いた。何か、ボーッとしていたように見える。


「・・・・大丈夫ですか? どこか具合でも?」


 心配して出した質問なのだが、大黒柱先輩はとっても柔らかい笑顔で「ううん、大丈夫。ただ、ほら、二人の邪魔をしちゃいけないかなーって」と言った。


「邪魔、ですか?」


 大黒柱先輩は片頬に手を当て、とても上品ひ微笑んだ。そうして「だって恋人同士の語らいを邪魔するなんて、野暮でしょう?」なんてちょっとよく分からないことを言っている。


「なっ、何を言ってるんですか大黒柱先輩はっ?」


 と、由起も同様したように言っている。本当に何をいっているのだろうか。


「全く何を言ってるんですか大黒柱先輩は。そんな、恋愛とかの描写がしたいけど面倒臭くなっちゃってヒロインが主人公に惚れるまでの描写を至極簡単なもので済ませてしまった展開の早過ぎるライトノベルじゃあるまいに。ましてや僕と由起が? ありえませんとも」


 なあ? と由起に同意を求めたのだが、由起が僕になんらかの反応を示すより早く、大黒柱先輩に「ダメだよ万くん。例え万くんにその気がなくっても"ありえない"なんて言っちゃダメだよ。相手を傷付けちゃうよ」とたしなめられた。


 え、僕が悪いのかこれは。



     ●



 昼休みのように何か問題を発見するでもなく、何事もなく無事に生徒会室にたどり着いた。これから会議という名の雑談が始まる。実りはないだろう。


「じゃあね、由起」


「はい、また明日」


 微笑ましいものを見るように微笑んでいる大黒柱先輩をよそに、由起と別れた。この後由起は家に帰るだけだ。いや、もしかしたらコンビニとかに寄り道をするかもしれないけど。


「失礼しまーす」


 特に失礼だとは思っていないけど、入室するさいのマナーだと思う。人の家に上がるときに言う"お邪魔します"みたいなものだ。ちなみにノックはしていない。


 生徒会室には僕と大黒柱先輩を除く三人が既に揃って席に着いていた。何やら話し合っている様子である。


「"俺"だと俺と被るな。"オレ"はどうだ?」


「ううん、僕みたいな口調で"俺"とか"オレ"だと違和感がないかな? それよりもやっぱり"ボク"の方が・・・」


「あのな全哉。"ボク"なんて僕っ娘以外に認められるわけないだろうが」


「でも"ぼく"もダメなんですよね? じゃあどうすればいいんですか?」


「だから"オレ"でいいじゃないか」


「堂々巡りじゃないですか」


 何の話をしているんだろう。


 白熱していた話し合いの最中だったが、九重先輩は入室した僕と大黒柱先輩に敏感に気付いたようだ。朗らかな笑顔を浮かべているような気がする声音で迎えてくれた。


「おお、おかえり。七五三はどう思う?」


「なにも何をですか?」


「一人称だよ」


 何の話をしているんだろう。


「俺の一人称は"俺"だろ? 全哉の一人称は"僕"で、お前の一人称も"僕"。おまけに口調まで似てるんじゃややこしいじゃないか。ってことで全哉に新しい一人称をつけてやろうと思って話し合ってた」


「そうですか」


「今のところ候補は"オレ"、"拙"、"我輩"、"吾輩"、"儂"、"一哉"だ」


「取り合えず、自分の名前を一人称にする男子生徒は絶対反対です。気持ち悪い」


「一応弁解しておくけど、この候補挙げたの全部九重先輩で、僕じゃないからね?」


「というか、どうでもいいじゃないですか一人称なんて。なんなら僕が一人称変えますよ」


「ほう? なんて?」


「僕は、これから僕のことを"僕"ではなく"僕"と呼びます」


「変わってねーじゃねえか」


「僕は、これから僕のことを"ぼく"ではなく"しもべ"と呼びます」


 生徒会室では、基本的にこんな話しかしていない。




.

あ、ちなみにですけど、七五三は普通に携帯持ってますよ。

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