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第十一章

「Miraiさんいらっしゃいますか?」

「もう居られません」

「え?」

「言伝を預かっています。こちらです」

 いつもの占いルームに行くと、DVDが再生された。

「貴女にもう占いは必要ありませんね。まだ三回分の占い権利が有りますので私が思う、貴女に必要な占いを最後にお届けします。まず、貴女は本の出版で成功するでしょう。三作目で賞を手に入れます。貴女が歩んできた道、辛かった事を面白可笑しく描いてしまえば、貴方の過去を払拭する事にもなり、運が開けるでしょう。そして旦那様。旦那様は貴女を心の底から愛しています。その愛に寄り添って生きていけば、悪い事等起こりません。旦那様を信じて生きなさい。最期に絵里香ちゃん。彼女は大学で美術の才能を開花させ、旦那様の描く絵の様に素晴らしい画家になるでしょう。貴女とは深くつながっています。貴女の老後を見てくれるのは彼女です。貴女は幸せに満ち満ち溢れています。それを恐れないで受け止めなさい。私はここを去り、次私を必要とする人の元へ行きますが、貴女の周りには助けてくれる友人、夫、娘が居て、生涯幸せに暮らせる事をこのDVDに記録しておきます。お持ち帰り頂いても構いません。きっと、貴女はもっと強くなる。そして、幸せを本当の意味で掴む事ができます。あなた自身を愛してあげなさい。これが私の最後の占いです。どうかお元気で。さようなら」

 私は涙が出た。Miraiさんの想いの詰まったDVD。

「あのっMiraiさんはどこへ行ったんですか?私あの方にお礼が言いたいんです」

「Mirai様は行く先を教えずに旅立たれました。きっとどこかで貴女の出版する本を読んでいるでしょう」

「本……!そうだ、Miraiさんの事を描こう!それって別に制限されてませんよね?」

「はい、特別制限はされていません。もし貴女がMirai様の事を描いてもMirai様には何の影響も有りません。ただMirai様の占いが本当に必要な人の元へ旅を続けるでしょう」

「ありがとうございます!」

 私はお礼を言うと出版社に急いだ。

「必ず当たる占い師の話?」

「そうなんです。必ず当たる予言者の様な占い師の話。そして私が幸せになる話です。どうですか?」

「面白いんじゃないですかね」

「ありがとうございます!描いてみます!」

 私は帰宅すると原稿用紙に向かった。

「絵美、新作かい?」

「うん、これが三作目。Miraiさんの事を描こうと思うの。Miraiさんは私の元から消えてしまったけれど多分どこかで私と同じ様な悩みを持った人を救い続けてる。そんな不思議なMiraiという占い師の事を本にしたいの」

「良いと思うよ。で、Miraiさんはどこへ行ったの?」

「それが分からないの。受付の人も知らないって。桃の缶詰から必ず当たる占い館は消えてしまった。でも、Miraiさんが気付いてくれる位有名な本にしたい。そして、お礼を言いたいの」

「絵美は優しいね。Miraiさんはきっと絵美の本を読んでくれるよ」

「そうだと嬉しいな」

 私は何かに憑りつかれた様に作品を書き綴った。

 三か月後、出来上がった原稿を出版社に持ち込んだ。

「必ず当たる占い館……これが仰っていた例の話ですね」

「はい」

 緊張している事を悟られないようにじっと担当者の目線を見つめた。

「うん、面白い!特に主人公が占いに翻弄されていたのに占い師に出会ってから人生を開花させていくのが面白い」

「ありがとうございます」

「ジョーンズ先生、これ、預かりますよ」

「お願いします」

 私は本が出版されるのを心待ちにした。本の内容はこうだ。

 主人公のエミリーはアメリカのカリフォルニアに住んでいる。そこでOLとして働いていたが毎日占いに翻弄されて生きていた。するとある日必ず当たる占い館という所に辿り着き、Miraiという占い師に出会う。彼女の言う事は全て予言の様なもので、エミリーは彼女の言う事を信じて生活するが、以前の様に占いに翻弄される事は無くなった。

 しかし、彼女は禁忌とされている人の寿命について質問してしまい、人生をやり直す事になる。辛かった人生を再び歩む事になるが、記憶は残っている。Miraiに言われた通り生活し、今度は占いに翻弄される事無くMiraiの言葉だけを信じ、愛する人に再び出会い、結婚し、子供を儲ける。愛する人の寿命が分からずMiraiの元へ行った時が訪れた。しかし最後Miraiに占って貰った時に禁忌の占いをし、主人は百一歳で大往生する事を知っていたエミリーはMiraiに逢うことなく、人生を全うした。

 人が何かに縋りたいと思う時、それは大抵間違ったものに縋ってしまうものだが、エミリーは運が良かった。Miraiに出会えたのだから。


 この本は百万部を売り上げ、漫画の賞も貰った。テレビや雑誌の取材もあり、私は事実である事を隠したけれど、エミリーが絵美を文字って作った人物名である事も隠し、思いつきであると説明し、ベストセラーとなった。

 ある日、白い飾り気の無い封筒が一通届いた。裏を見るとMiraiと書かれていた。

 私は驚いて封を開けた。

『お久しぶりです絵美さん。貴女は私の占いを信じ、行動し、幸せを掴んだ人の一人ですが、占いのお蔭だけとは限らない事をもう知っていますね?私が告げたのはただの予定された事実だけ。その過程をどうするかは貴女次第。実際、困っても占いに来なかった日もあったでしょう。貴女の本を読みました。これは貴女をモデルにした物語ですね?とてもキャラクターが活き活きしていて良い本でした。私も本の内容までは予言出来ませんから、これは正真正銘貴女の作品です。私の力で産まれた物では有りません。貴女は自信を持って生きていきなさい。貴女なら大丈夫。ご主人を信じ付いて行き、絵里香ちゃんを大事に育てなさい。そしてDVDで言った通り、貴女自身を大切にする事、それが幸福の切符となる筈です。私を描いてくれてありがとう。あなたの次回作を楽しみにしています』

「Miraiさん……」

「ん?手紙かい?」

「うん、Miraiさんから。本読んでくれたって」

「良かったね。絵美の夢は叶ったかい?」

「まだ!私、まだまだ幸せを掴むの。ダンテが居ればできると思う!」

「ふふふ、絵美、変わったね。怯えた兎みたいな子だったのに強くなった。誰のお蔭かな?」

「ダンテのお蔭だよ。Miraiさんの占いはきっかけに過ぎない。ダンテが運命の人で良かった」

「絵美、おいで」

 手を引かれて暖かい胸に包まれた。

「愛してる、ダンテ」

「アイシマス、絵美」

 キスをして、長いハグをしていると絵里香が学校から帰って来た。

「またイチャついてる~」

「絵美は絵里香のマムだけど、僕の奥さんでもあるからね。毎日こうしていないとおかしいでしょ?」

 当たり前の行動だ、と言わんばかりのダンテに絵里香はため息を付いた。

「まぁ良いけど。親が仲悪い子って結構居るからさ。うちは離婚の心配は無いなぁ」

「勿論さ。絵美が嫌だって言っても僕は絵美と一緒に居るよ」

「ハイハイ、あ、今日学校でこれ……」

 絵里香が取り出したのはモネの庭の様に美しい池を描いた油絵だった。

「綺麗だね!」

「凄い……流石親子」

「金賞貰ったの。ね、ご褒美に画材買ってよ」

 目をキラキラさせて懇願されると親は弱い。それにゲームや漫画では無く画材が欲しいと言われれば彼女の才能を伸ばしたいと思う親の建前断れる筈が無かった。

「良いよ、今度の日曜日、画材屋さんに行こう」

「ダディありがとう!」

「二人とも、聞いて」

 私は少し真剣なまなざしで二人を見た。

「どうしたんだい?」

「何?真剣な顔して」

「引っ越そう!」

 これは前々から考えていた事。もっと広くて綺麗なマンションに家族で引っ越して、新たな生活をする。前の私なら今年は転居には運が無いとか有るとか考えて引っ越しをしていたけれど、今はもうそんな考えが無い。

 きっともっと幸せな家庭を築ける。

「ダンテと絵里香の作業場も有る所。こことかここ、良いと思わない?」

「候補も決めているんだね」

「マム、何時に無く積極的だねぇ」

「うん!マムは強くなったからもうこういう事で悩まない事にしたの!」

 絵里香はきょとんとしていたけれど、私は決意を胸に新しい生活を夢描いた。

「私は学校変わらなければ良いよ」

「僕も、絵美の考えに付いて行くよ」

「じゃあ決まり!再来月引っ越そう!」

 私達は新たな住処を得た。ここが本当に終の棲家になれば良い。そう思いながら。

「新しい家の匂い~」

「絵里香、荷物自分の分はちゃんと片付けてね。マムには分からないから」

「はーい」

「ダンテ、私の本棚整理手伝ってくれる?」

「昔引っ越した時みたいだね。懐かしいよ」

「そうだね」

 家族三人で片付けをして、ゆっくりめの昼食を摂った。ダンテがマフィンを焼いてくれていた。

「マム、手紙来てるよ」

「え?もう?」

 郵便局に住所変更の届けは出していたが、初日に郵便物が届くとは思っていなかった。

「あ!」

 封筒の裏にはMiraiの文字。

『終の棲家を見付けましたね。おめでとう』

「Miraiさん……」

 私は少し涙ぐんだ。占いではなく、祝福のメッセージ。Miraiさんも私の成長を喜んでくれている様に思えて嬉しかった。

「Miraiさんかい?」

「うん、占いじゃなくて、引っ越し祝い」

「もう絵美には占いは必要無いんだね」

「うん、そうだね」

「占いをする事は悪いことじゃないけれど、それで人生を振り回してしまっては意味が無いからね。良かったよ絵美が前向きになってくれて」

「ありがとう。私、随分強くなったみたい。前は怯えてばかりだったけれど……絵里香も耳が聞こえるようになったし、実力を開花させて絵の才能を発揮してる。ダンテも画家として順調に歩んでくれているし、私は本なんて出せた。これ以上幸せな事は無いよ」

 そう、もしMiraiさんに会えたらこう言おう。

「私は幸せです」と。



最後までお読みいただきありがとうございます。

Miraiはあなたの傍に居るかもしれません。

でも占いは当たるも八卦当たらぬも八卦。

それを心の中にしっかり置いて、良い事だけぽっけにいれておきましょう。

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