表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイツの本性を暴いてみた!  作者: うちよう
姫柊花音の本性を暴いてみた!
9/29

第9話 友達勝負、開幕!

 姫柊ひめらぎ家訪問から一夜明けた翌朝。

 静かに席に突っ伏していると、いきなり肩をツンツンされた。

 一々確認するまでもない、どうせ花音かのんだ。

 ぼっちの俺に、こんなイタズラをしてくるのは彼女だけだからな。


 「んだよ、せっかく良い夢みてたの……」

 

 そう言いかけて、俺は言葉を詰まらせた。

 思いがけないことが目の前で起こっていたのだ。

 花音が……泣いてる……。


 「ごベんね、ぎのうは、ごべんね。ごべんね、おんどうに、ごべんね……」

 「あっ、えっと……」


 大変綺麗なお顔をぐしゃぐしゃにしながら号泣する花音。

 エマージェンシー、エマージェンシー! 至急状況を報告せよ、大至急状況を報告せよ!

 ——————なんて言葉が、俺の脳裏を幾度いくどとなく過る。

 俺だって一人の人間だ。

 いくら人間不信だからといっても、涙には滅法めっぽう弱い。

 てか花音さん、できれば校舎裏とかでお話できないかな? 教室だと視線がかなり痛すぎるんだけど……。

 まあ、すでに手遅れなんだけどね。

 第三者からすれば、俺が花音を泣かせてる絵面みたいになっているからね……。


 「ま、まあ、落ち着けって。急にどうしたんだよ」

 「ぎのう、わたじのせいでマサぐんに迷惑がげたがら。だがら、ごべんね……」

 「いや、別に迷惑だなんて一ミリも思ってないけどさ……」


 言いながら俺は、ふと思った。

 花音の日頃の行いから察するに、己の行いを悔いて謝罪するなんてまずありえない。

 となれば、この謝罪もあの変態兄が深く関与しているはずだ。

 つまり、この一連の会話の流れも兄に聞かれている可能性は十分に高い。

 俺は花音にそっと耳打ちする。


 「お前、盗聴器のことって何か知ってる?」


 俺に言われても、花音はキョトンとしている。

 やはり、あの兄は秘密裏に実の妹に盗聴器を仕掛けていたのだ。

 本当に現実で起こるんだという驚きよりも、シンプルにキメぇ~の気持ちの方が強かった。

 盗聴器に声を拾われないように、再び花音に耳打ちする。


 「もしかしたら、世一さんに盗聴器仕掛けられてるかも。一旦自分の身の回りを確認した方がいい」

 「う、うん。分かった」


 花音は、泣きじゃくりながら自分の身の回りを念入りに確認する。

 そうして出てきた盗聴器の数は——————0個。

 あれ、予想してた結果と大分違うんですけど……。


 「盗聴器なんて、ないよ?」

 「お、落ち着け! これは何かの間違いだ! 何かの陰謀いんぼうだ!」

 「落ち着かなきゃいけないのは、マサくんの方じゃないかな?」 

 「いやいや! だって世一さんが昨日お前の学校鞄スクールバッグに盗聴器を仕掛けたって……」

 「それ、昨日だけの話じゃないかな? 私が嘘を吐いてるかもしれないから、その証拠集めとして……」

 「……」

 「……」


 よくよく考えれば、花音の言う通りだ。

 世一からすれば、毎日盗聴器を花音に仕掛けるメリットはどこにもない。

 むしろ、バレた時のデメリットの方が大きいはずだ。

 なんで、そんな当たり前なことに俺は気が付かなかったんだ……。

 てか、なんで花音は盗聴器の話を聞いてそんな平然としていられるの?


 「……マサくん、顔が赤いよ? 大丈夫?」

 「う、うるさいっ! そっとしておいてくれ!」


 クソ、花音がこの調子だから俺も調子狂うんだよ。

 そこはいつもの調子で「はっず〜。普通に考えたら分かるよね? やば、はっず〜」って嘲笑ってくれれば俺も「しつけぇな、いい加減にしないとはっ倒すぞ」って言い返せるのに。

 そうだ、俺が恥をかいたのは全部花音のせいだ。

 なんで今日はおしとやかなんだよ!

 いつもみたいにアホ丸出しでこいよ!!!

 そんなことを考えていると、花音が心配そうに顔を覗かしてくる。


 「マサくん、体調悪いなら保健室いこ? 私も一緒に行ってあげるから」

 「マジでやめてくれぇ!!! 頼むから通常営業に戻ってくれぇ!!!」

 

 頭を抱えながら必死に懇願こんがんした。

 なんというか、ここまで慈愛じあいに満ち溢れていると、逆に何か企んでるんじゃないかと考えてしまって身体がゾワゾワするんだ。

 だから、一刻も早く通常営業に戻っていただこう。じゃないと俺の身が持たない。


 「久山、おはよう」


 事情も知らない陽キャのさかきが話しかけてきた。

 榊の登場とともに黄色い声が聞こえてくる。

 やっぱりこういう男子はモテるんだろうな。裏の顔持ってそうだけど。

 現に作り笑顔が半端ない。


 「……はよ」

 「なんだよ、そっけないな〜。昨日は熱く語り合った仲じゃないか」

 「熱く語り合った覚えはないんだが、夢と現実を間違えてるんじゃないか?」

 「全く、もっと()()を大事にしないとダメだぞ?」

 「は? 誰がとも……」

 

 俺が否定しかけたその時、ドンッと鈍い音が後ろから聞こえてきた。

 あまりの音の大きさに思わず振り返ると、いつの間にか席に着いていた花音が机に額をぶつけていた。


 「おま、何やってんの?」

 「マサくんに……マサくんに……友達がいたなんて……そんな……そんな……」

 「俺も友達いたことに衝撃受けてんだけど。てかお前はお前で、さすがに衝撃受けすぎだろ。てか、俺に友達は一人もいないから」

 「何言ってるんだ! 僕たち友達だろ!」

 「何言ってるの! 私たち友達でしょ!」


 二人の声と机を叩く音がハモった。

 あまりの声と衝撃音の大きさに、クラスの視線が再び俺たちに集中する。

 悪目立ちしたくないっていうのに、これ以上は本当にやめてくれ。


 「榊くんだったっけ? いや、でしたっけ? ごめんなさいね、マサくんの交友関係は一枠しか空いてないんですよ〜。だから、お友達にはなれないんです〜。ほんっっっとうにごめんなさいね〜」

 「いや、なんで俺の友達枠をお前が勝手に決めてんの? てか、さっきも言ったけど友達は……」

 「姫柊さんこそ何を言ってるんだい? そもそも男女の友情が本気で成立すると思っているのかい? これがまた成立しないんだよな〜。だから、姫柊さんと久山は友達にはなれないんだよ。だから友達は僕だけってことさ」

 「いや、だから俺に友達なんていないし。そもそも、友達っていうのは互いに腹を割って話せる関係性がなきゃ成立しないわけで、そもそも俺はお前たちに……」

 「はい、カッチーン。だったら勝負しようじゃない! どっちがマサくんの友達に相応しいか!」

 「いや、だから俺の話を……」

 「はっはっはっ! 面白い。僕と久山の友情を見せてやろうじゃないか!」


 勝負なんてどうでもいいから、まずは俺の話を聞け!!!

 てか、榊に関しては昨日今日話した仲だろうが! 友情もクソもないだろ!!!

 まあ、ヒートアップしてるこの二人に今更何を言っても聞く耳を持たないだろう。

 だったら俺は、二人の友情とやらを全力で避けるだけだ。

 こうして、前途多難の俺の一日が幕を開けたのだった。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

今後とも、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ