第27話 私にはもう、分からない。
全然分からない。
何が起こってるのか、誰か私に説明してよ。
説明を求めているのは、きっと私だけじゃない。
だってそうでしょ?
昨日まであんなに仲良かった榊くんが、躊躇いもなくマサくんを殴り飛ばしたんだから相応の理由があるはずなんだ。
でないと、この状況に納得できない。
「——————えぇ、とりあえず予鈴が鳴ったから席に着け」
担任が指示を出すと、生徒たちは黙って自分の席へと着席する。
「まずは、榊。お前はなんで久山のことを殴ったんだ?」
「…………すみません」
「いや、すみませんじゃ分からないだろ。人が人を傷つける行為には、何かしらの理由が伴うはずなんだ。それともお前は理由もなく久山のことを殴ったとでも言うのか?」
担任の問いに対して、榊くんは目を逸らしたまま何も答えなかった。
何かを隠している……。
榊くんの様子を見ていれば一目瞭然だ。
恐らく、担任もそのことには気がついている。
だが、生徒の不祥事を見過ごしておけないのが先生という名の仕事なのだろう。
担任は、榊くんが隠し通そうとしている真相を暴こうと他の生徒にも聴取する。
「断片的な情報でも構わない。何か知ってる人がいたら教えてくれないか?」
「——————あの、先生」
長い沈黙の後に、一人の女子生徒が挙手した。
我部香凜さんだ。
「おう、我部。何か知ってるのか?」
「サカケン……榊くんが久山くんを殴った理由は私には分からないですけど、思い当たる節があるんです」
そう言って、我部さんは私に視線を向けてくる。
え、急になに。
ドキッと心臓が跳ねた。
「今朝、姫柊さんの席がなかったんです」
「姫柊の席がなかった、というと?」
「そのままの意味です。そしたら、久山くんが自分の席を姫柊さんの席まで移動させて、姫柊さんが登校してきたらどこかへ行っちゃったんです」
「もしかしたら……」と言葉を綴る我部さんの言葉に、担任が難しい表情を浮かべていた。
「職員室へは来てなかったしな……。姫柊、悪いが机の中の教科書かノートを調べてくれないか? その席が久山のかどうかが知りたい」
「は、はい。分かりました」
担任に言われた通り、机の中にあった教科書とノートを一冊ずつ机の上に広げる。
そして名前を確認してみると——————マサくんの物だった。しかも二つとも。
いや、これ……何かの間違いだよね?
机の中にあった他の教科書やノートも隈なく調べる。
だけどやっぱり、現実は変わらなかった。
「姫柊、どうだった?」
「……全て、久山くんの物でした」
「……そうか」
その直後、朝のホームルームの終わりを知らせるチャイムが校内に鳴り響いた。
「とりあえず、状況は分かった。あとはこっちで対応するから、みんなは気にせず勉学に励んでくれ」
そう言い残して、担任は教室から足早に立ち去っていく。
きっと、マサくんの元へ向かったのだろう。
「——————気にせずって言われてもね……」
誰かが、言った。
いや、自分で口にしたのかもしれない。
あるいは、頭の中で思ったことと現実で誰かが言ったことを区別できていないのかもしれない。
どちらにせよ、すでに解は決まっている。
なんでこんな事になってるの?
……分からない。
マサくんは何がしたかったの?
……分からない。
私は、どうしたいの?
……分からない。
この状況も、マサくんの行動も、私の気持ちも、全てがひとりぼっちの状態。
色々考えても、何をどうしたらいいのかが自分の中で上手くまとまらない。
だけど、一つだけ私の中に確信があった。
——————また、失敗をしたのだと。
やっぱり私は、誰かと仲良くなんてできないのかもしれない。
素の自分を否定され、更には偽物の自分も否定された……私って、一体何のために存在してるんだろうね。
その後のことは、あまり覚えていない。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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