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シュテルンベルクの花嫁  作者: 北村 清
番外編

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博物館(3)

ここで一旦、休憩という事になりました。


博物館の中にはカフェスペースがあるのです。そこで紅茶やコーヒー、果実水が飲めますし、サンドイッチやクッキーも食べられるそうです。


「立っていたら目立つから、護衛の三人も座ってちょうだい。」

と母が言い、八人で丸テーブルを囲みました。大人達は紅茶を注文しフェルミナ様は果実水を注文されました。クッキーの盛り合わせも一緒に頼みます。


カフェの隣には売店があり、博物館に飾られている物のレプリカが売られているようです。商品の半分以上がぬいぐるみで、それを見てフェルミナ様はぬいぐるみ動物園の事を思い出したようです。

「次は、ぬいぐるみ動物園を見に行こう!」

と言われました。

それで、お茶を飲み終わった私達はぬいぐるみ動物園を見に行きました。


ぬいぐるみ動物園には、三つの大陸を模した三つの巨大なローテーブルがありました。更に小さな島々を模しているのでしょう。小さなローテーブルもたくさん置いてあります。そしてそこには、私の知らないたくさんの動物達のぬいぐるみが置いてありました。

世界中にはこんなにたくさんの種類の動物がいるのか!と驚くばかりです。動物だけでなく鳥や魚のぬいぐるみもあり、どれも可愛らしくて大人の私でも夢中になるような夢のようなエリアでした。


当然フェルミナ様も大喜びです。かなりの広さのあるエリアですので、端から端まで見て回るのにはけっこうな時間がかかります。確かにここに最初に来ていたらフェルミナ様がここから離れなくて、ここを見るだけで終わってしまった事でしょう。


「すごいなあ。可愛い。あれも可愛い。」

そう言いながら一つ一つのぬいぐるみを熱心に見ておられました。


そしてかなりの時間が経ち、大人達の間に「ちょっと飽きた」という空気が流れ出した頃、すがやかなベルの音が響き始めました。


「閉館30分前の合図の鐘よ。」

と母が言いました。


「ルミ様。帰る時間ですわ。最後に売店に行きましょう。そして、今日の思い出にぬいぐるみを一つ買って帰りましょう。」

「うん、わかった。」


フェルミナ様が「これが欲しい」と言って選んだぬいぐるみは、サメのぬいぐるみでした。正直、そのチョイスには驚きました。

母はティナーリア様にも何か買う事を勧め、ティナーリア様は白黒模様の動物であるバクのぬいぐるみを選ばれました。


その間に私も買い物をしました。今日の思い出にと私が選んだのは小さなシマエナガのぬいぐるみがついたキーホルダーです。

数ヶ月前にカバン一つを持って亡命して来た私は『思い出の品』の全てを母国に置いて来ました。その思い出の品も家も、全てが焼けてしまったはずです。その事を思うと胸がとても痛みます。だけど新しく祖国とするこの国で思い出は新しく作って行く事ができる。小さな小鳥のつぶらな瞳を見ていると、そう信じる事ができました。


今日の事は忘れない。そう思いました。


レンタルしていたブレスレットを返し、私達は外に出ました。

青空だった空は夕焼け空に変わっています。


「あー!『世界の絵本』のお部屋も見てみたかったのに見るの忘れてた。」

とフェルミナ様が言われました。

忘れてくれて良かった。と思いました。いったいどんな品がどんなふうに展示してあるのか、確認してからでなければ幼児を連れて入るのは悩むブースです。母が

「またの機会に見に行きましょう。」

と言ったので、そうおかしな場所ではないのかもしれませんが。


「美術館の方にもいつか行ってみたいわ。」

とティナーリア様も言われました。御二人がこんなに楽しそうにしている所を初めて見たような気がします。

祖国を捨てて、ヒンガリーラントに来て。ネーボムクの所では辛い思いをしましたが、ようやく少しずつ幸せになる事ができるようになったのだと思いました。


私達は馬車に乗り込みました。

ずっとハイテンションだったフェルミナ様でしたが、疲れていたらしく馬車の中で眠ってしまわれました。サメのぬいぐるみを抱き枕のようにきゅっと抱きしめておられます。


素敵な一日だったな。

そう思いながら私達は別邸に帰りました。

そして、私達には帰る場所がある。

それはなんて幸せな事だろう。そう思いました。

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