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シュテルンベルクの花嫁  作者: 北村 清
番外編

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博物館(2)

しかし、どこから見れば良いのでしょう?


「ぬいぐるみ動物園はどこかしら?」

とティナーリア様が言われます。


「そこに最初に行くと、ルミ様がそこから動かなくなりますよ。ぬいぐるみ動物園は最後にしましょう。」

と母が言いました。それから


「パンフレットを買いましょう。」

と言いました。博物館はとても広く、半日で全てを見て回る事はできません。なので見たい物を、ピンポイントで見て回る必要があるようです。

パンフレットは銀貨一枚の値がしましたが、とても詳しく館内の情報が書き込んであります。買って悔い無し。な一品でした。


「・・世界の硬貨、世界の絵本、世界の民族衣装。」

ティナーリア様がパンフレットの情報を読み上げていきます。それから、美しい眉をひそめられました。


「世界の・・。これ読めないわ。」

そう言って恥ずかしそうに目を伏せられます。15歳まで字の読み書きができなかったティナーリア様は、今も少し字の読み書きが苦手なのです。どれどれ。と思って私はパンフレットをのぞき込みました。


「えーと・・世界の・・拷問、処刑道具。」

「ああ、そのブースは残念ながら、20歳以下は立ち入り禁止なのですよ。だから、ルミ様は入れないんです。」

と母が言いました。これっぽっちも残念じゃありませんよ!


「お母様のお勧めの場所はどこですか?」

と姉が聞きました。


「私が一番好きなのは『世界の鉱石』の部屋ね。」

と母が言ったので、まずその部屋に行ってみる事にしました。


『世界の鉱石』を集めた部屋は二階にありました。

そこは不思議な形のキラキラした石であふれていました。


私が最も驚いたのは『黄鉄鉱』という石でした。ノミで削り出したわけでもないのに、綺麗な立方体をしているのです。

他にもコランダムやベリルなどの宝石の原石がキラキラと輝いていました。


「『水晶』って綺麗ね。」

と、フェルミナ様が水晶の結晶を見ながら目を輝かせられました。『紫水晶アメジスト』『黄水晶シトリン』『紅水晶ローズクオーツ』『煙水晶スモーキークオーツ』等々、たくさんの水晶の美しく大きな結晶が並んで置いてあります。


「『琥珀』もあるのかな?」

とフェルミナ様が聞かれました。

「ええ、ありますよ。」

と母が言って、琥珀の置かれた台に案内してくれました。そこには鶏卵くらいの大きさがある琥珀が置かれていました。

その琥珀は光の当たり具合によって、茶色にも金色にも見えました。


「すごく綺麗!琥珀ってこんなに綺麗な石なのね。」

と嬉しそうにフェルミナ様は言われました。


正直、ここに来るまでは「鉱石って、つまり石よね」と思っていました。石なんか見て何が面白いのだろう?と思っていましたが、どの石にも目が釘付けになりましたし、こんな石が欲しいな、と思いました。

時間をかけてそのブースを堪能した私達は次に『世界の民族衣装』のブースに移動しました。


その部屋にはたくさんのマネキンがあって、色とりどりの民族衣装が飾られていました。

そこもまた、宝石とは違う意味でキラキラとした部屋でした。

こんなにもたくさんのデザイン、模様、素材の服があるのだという事にびっくりしました。ありきたりな言葉ですが「世界は広い」と思いました。


「アミィお姉様には、この服が似合いそう。」

とフェルミナ様がティナーリア様に言われました。その服はフラットカラーで、肌にピッタリと布地が密着した服でした。服のサイドにものすごく大きなスリットが入っていますが、男性がはくトラウザーズのような物をスカートの中にはくので足が見える事はありません。


「ルミにはこの服がきっと似合うわ。」

ティナーリア様がそう言われたのは北大陸の国の衣装です。全体にモコモコと白い羊毛がついていて、もふもふの小動物を思わせる可愛い衣装でした。


「この服可愛い。着てみたいな。」

とフェルミナ様が言われます。

「では、仕立て屋を呼んで同じような服を作りましょう。」

と母が言いました。


「北大陸のある国では冬至の日、悪い妖精がその国の王女様をさらおうとして、王女様が外国の服を着て外国人のふりをして難を逃れた。という伝説があるそうです。それでその日には子供達は外国の服を着てお祭りをするのだそうです。その習慣がヒンガリーラントにも広まって、近年では冬至の日に子供達が外国の服を着て仮装するというのが流行っているそうですよ。フェルミナ様も冬至が来る前に外国の服を用意してみませんか?」

「する!この服を着てみたい。」

フェルミナ様は飛び跳ねて言われました。いろいろな習慣やお祭りがあるのだな。と私は思いました。


『世界の民族衣装』は、三階で最も広い広間に飾ってあります。その部屋を更に進むと、珍しい布を飾っているブースがありました。更に奥にたくさんの人が群がっている場所があります。人々の視線の先には一枚のタペストリーがありました。


「あれが『百万の蛍』です。」

母がそう言いました。



『百万の蛍』は、聖女エリカが製作したタペストリー『街の灯』を連想させる作品でした。

漆黒の布に色とりどりの布を縫い付け、星空と水辺に乱れ飛ぶ蛍を表現しています。百万という言葉がついているので、キラキラチカチカした派手な物を想像していましたが、むしろ静謐せいひつで上品な作品でした。

引き算の美、というのでしょうか。極限まで無駄な物を削ぎ落とした作品で、魂を吸い込まれそうなほど優美な作品でした。


「なんて綺麗。」

と周囲にいる人達も皆口にしています。


「すごく素敵だわ!」

とティナーリア様も目を輝かせておっしゃってくれました。


「かつてこの博物館で『一つだけ持って帰る事ができるとしたら、何を持って帰りたいたいか?』というアンケートをとった時、このタペストリーが一位になったのです。」

と、タペストリーの側にいた学芸員キュレーターが説明をしてくれました。


「二位は何だったの?」

とフェルミナ様が聞かれました。すると学芸員の女性はにっこりと笑って

「お嬢さんが20歳になったら教えてあげましょう。」

と答えられました。

まさかと思いますが、拷問道具じゃないでしょうね⁉︎

と蒼ざめる私にそっと母が教えてくれました。


「『世界の絵本』のコーナーにある春画本よ。」


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