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シュテルンベルクの花嫁  作者: 北村 清
第4章 婚約式に向けて

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婚約式の準備(1)

シュテルンベルク領の領都への旅を終え、私はまた王都へと戻って来ました。


決して長くはない旅でしたが、私の人生を変える旅でした。

今でも、歴史ある伯爵家の当主に求婚をされたのが信じられないような気持ちです。


まだ領都にいるうちに、母とニルスとクオレとジークルーネ様とコンラート様に婚約の報告をしたのですが、皆とても喜んでくれました。

正直、コンラート様と母の反応がとても心配だったのですが、二人共祝福してくれたのでほっとしました。


王都に戻り、オイゲンとヨハンナに婚約を報告すると、二人は涙ぐんで喜んでくれました。リヒャルト様と王女殿下が婚約するかもしれなかった事がいろんな意味で相当不安だったのでしょう。ありがたいのですが、内心引くほどの喜び具合でした。


と言ってもこれで、めでたしめでたし、なわけではありません。婚約や結婚はゴールではなくスタートだからです。私にはこれからしなくてはならない事が数々あります。その中で最も優先すべき事はコンラート様とジークルーネ様の婚約式の準備です。そして私とリヒャルト様の婚約はその時に親戚や友人達に向けて発表をするという事に決まりました。



帰って来てすぐ、私とリヒャルト様は婚約証書にサインしました。弁護士資格を持っているエーレンフロイト侯爵が立会人になってくださいました。平民ならばこれで婚約は終了ですが、貴族の婚約の場合王室の許可がいります。これが難題なのです。簡単に許可がおりるかどうかは天のみぞ知るです。


この件で私にできる事はありませんので、私はコンラート様の婚約式の準備を始めました。


リヒャルト様には、あまり派手な式にはせず、本当に親しくて心から祝福をしてくれる人達だけを招きたいと言われています。


なので私は、コンラート様とジークルーネ様から招きたい友人達の名前を聞き、オイゲンやヨハンナと相談をしながら招待客のリストを作りました。


と言っても、招待をした人達全てが来るわけではないでしょう。全員にとって都合の良い日にちなどあるわけがないからです。誰にだって都合というものがあります。


来るのが3分の2くらいと考えて、その予定で料理や食器を用意する事にします。


婚約式はお茶会形式で行います。夜に舞踏会形式でする方が本来は多いそうですが、ジークルーネ様が断固として拒否されたからです。


何でもそつなくこなす印象のあるジークルーネ様ですが、ダンスだけは苦手なのだそうです。

「男性パートならわりと得意なんだけど。」

と謎な事をおっしゃっていました。


ですが、婚約式が昼間になった事で、未成年のカトライン様とフェルミナ様をお招きする事ができました。フェルミナ様もですが、カトライン様が飛び上がって喜ばれ、現在いそいそとドレスの準備をなさっておられます。婚約式まであまり日にちがないので、既成服に手を加えたものになりますが、もう二度と会えないかもしれないと思っていたジークルーネ様にまた会えるという事がとにかく嬉しいのだそうです。


私は招待客のリストを眺めました。


エーレンフロイト家を呼ぶのは当然ですが、他に新しく王太子となられたルートヴィッヒ様、ルートヴィッヒ様の従兄弟のフィリックス様とエリザベート様、それにそのご家族とそうそうたる立場の方々です。ルートヴィッヒ様の弟で、ヒルデブラント侯爵家に養子に入られたクラウス様もお招きしています。

リヒャルト様のご姉妹方は全員お招きしていますが、ヒルデブラント家からお越しになるのはクラウス様と父君であるクリストハルト様だけです。継母とそのご姉妹方は皆、領地に引きこもっておられるそうですし、叔母であるアレクサンドラ様にも招待状を送ったのですが、ヒンガリーラントの社交界を離れた身だからと出席を断られました。

再従姉妹にあたられるというグレーティア令嬢からは「出席したい」という連絡を頂いたのですが、こちらの方でお断りを致しました。

ジークルーネ様とは不仲な親戚ですし、シュテルンベルク領に行く前にコンラート様から聞かされた話を思うと、とてもお呼びする気になれません。


他には、リヒャルト様のご友人達、医療省の部下、懇意にしている商人や芸術家の方々をお招きしています。


これだけの規模のお茶会を開くのは私には初めての経験なのでわからない事だらけでしたが、オイゲンやヨハンナがいろいろと的確なアドバイスをしてくれました。

このような華やかな催しをシュテルンベルク邸で開催するのは数年ぶりの事らしく、二人共とても張り切ってくれています。


若いお二人の門出を祝う為にも、何のトラブルもない温かい式にしたいと私も心から思いました。


思ったのですが・・・。


招待状を配り始めた途端騒ぎが起き始めました。


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