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シュテルンベルクの花嫁  作者: 北村 清
第3章 シュテルンベルク領の領都

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領主の帰還(2)

まず、リヒャルト様達の前に引きずり出されて来た、シュヴァルツワルド家の三人の木こりはひどい有様でした。そもそも連れて来られた時既にフルボッコにされていて衰弱しきっていたのです。


「ルネ。」

とコンラート様がジークルーネ様に話しかけられました。


「居酒屋で騒動になった時、君がまずシードルをこの男の顔にかけたと聞いている。そのシードルに何かまた毒物を混ぜていたのか?」


・・・・。


『また毒物』

というフレーズに聞いていた者達みんなが顔色を失いました。


「そうなら、解毒薬を飲ませてやれ。」

「こいつらが今にも息絶えそうなのは、私のせいじゃありませんよ。そもそも、シードルに混ぜたのは筋弛緩剤です。そんなたいした量じゃないし、とっくに解毒されてますって。」

「えへっ」という擬音が似合う表情で、ジークルーネ様が言われます。

本当に、毒を使ってたんですか⁉︎


でも、今思い返してみるとノコギリを振り上げた時この男は足元がふらついていたような気がします。酔っているせいだとばかり思っていましたが、毒入りの酒を顔にかけられたからだったのですか!


「カミル。」

とコンラート様が騎士のカミルの名を呼びました。


「ルネと決闘をしたらしいな。それを聞いて肝を冷やしたぞ。ルネは常に複数の毒薬を持ち歩いている。それを知らずに近寄って怒らせたら命はない。無事で良かった。」


カミルが口をぽかーん、と開けて立ち尽くしていました。他にも『武器』を隠し持っていたのか?とショックを受けているのだと思います。


「イティエル。」

と別の騎士に今度は声をかけます。最初ジークルーネ様の護衛に指名されたイケメン騎士です。


「私はルネと結婚する。だからおまえは騎士団をやめろ。おまえとジークレヒトとの間にあった因縁をルネは知っているし、ルネはそんなおまえを絶対に許さない。ルネに毒殺されたくなかったら、ルネの前から消えてくれ。騎士を続けたければエーレンフロイト家に推薦状を書いてやる。ただしレベッカやユリアーナ嬢の中でもおまえの評価は下の下だという事は覚えておけ。」


「おまえ、ジークレヒト様と何があったんだ?」

と騎士団長が聞きます。イティエルはうつむいて答えませんでした。


「コンラート様!」

ひざまずかされていたレスフィーナが叫びました。


「シュテルンベルクの忠臣の一人として申し上げます。そのような女を妻にする事はおやめください。複数の毒薬を持ち歩いてそれを使う女などシュテルンベルクの女主人に相応しくありません。だいたいコンラート様の御母上は毒殺魔に毒殺されたのですよ。それなのに!」


えっ⁉︎

と思いました。


コンラート様のお母様が亡くなっている事は勿論知っていました。だけど、お母様は殺されていたのですか?


「私の妻は私が選ぶ。おまえの意見は聞いていない。おまえは『シュテルンベルクの忠臣』なのかもしれないが、私に対する忠誠心が無い。そんな奴の意見など穴の空いた水筒より価値が無い。」

「忠誠心が無いだなんて、そんな!そんな事ありませんわ。わたくし・・。」

「確かに私の母上は毒殺された。私は何の罪も無い者に毒を飲ませる者は許せない。そしておまえは、何の罪も無いルネに食中毒という毒をもった。私がおまえを許す事も信頼する事も決して無い。」


「私はシュテルンベルク家の為に行動したのです!あの女はコンラート様をないがしろにし、騎士団を侮辱したんです。だからわたくしは!」

「私がおまえにルネに対する嫌がらせを命じたか?それとも、騎士団の誰かが命令したのか?」

「それは・・・。」


「ルネは騎士団をさげすんだ。それに対しカミルが怒り決闘をした事は構わない。それはカミル自身の問題だったし、双方が与えられたルールの中で行動したからだ。しかし、おまえは頼まれてもいないのに他人の事にクチバシを挟み、卑劣な手段でルネを殺そうとした。おまえのように僭越せんえつな女は万死に値する。私はルネが平民の身分だったとしてもおまえを許さない。」

「殺そうとなんてしてません!ただ、ちょっと汚くむせるところが見たかっただけで。」


「冗談だったというわけか?おまえは母上を毒殺した犯人と同じ事を言うのだな。冗談のつもりだった。からかっただけだ。と。私は冗談で人を傷つける人間が許せない。本気で傷つけるつもりだったというのなら、まだ多少は情状酌量の余地があったものを。」


「コンラートはシュテルンベルクの次期後継者だ。コンラートの言葉には当主である私の言葉と同じ重さがある。コンラートの決定が当主の決定だ。レスフィーナ、オリガ、キルファ、サビーネの四人は死刑に処する。その判断が妥当かどうかを判断してもらう為、四人は王都の司法省に護送する。」

リヒャルト様がそう言われると


「お許しください!」

「どうかお慈悲を!」

とオリガとキルファとサビーネが叫び出しました。レスフィーナは完全に放心しています。


無慈悲な判決に、家臣達も騎士達も皆言葉を失っていました。


「閣下。」

と、その時ある人物が声をあげました。

ジークルーネが喧嘩相手に筋弛緩剤入りのドリンクをかけてからケンカをするエピソードは『侯爵令嬢レベッカの追想』の第三章の『ジークルーネとの再会』で紹介していますので、もし良ければ覗きに来てください(^∇^)

皆様が押してくださるブクマや評価、リアクションにいつも頑張ろうと励まされています

心から感謝します

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― 新着の感想 ―
10日に続いての更新、とっても嬉しいです。レベッカが過去に殺害された年齢にどんどん近づいてきて、今後の展開から目が離せません。これからも楽しみにしています!
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