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シュテルンベルクの花嫁  作者: 北村 清
第3章 シュテルンベルク領の領都
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朝食

朝食を食べる為、私とジークルーネ様、お母様、ニルスとクオレは食堂へ集まりました。


昨日ジークルーネ様がテイクアウトしたサンドイッチを食べたので、ニルスとクオレも元気そうです。だけど、全食テイクアウトで済ますわけにもいきません。それに、昨日サンドイッチを買った店が今どういう状況になっているかわかりません。幼い子供達でも食べやすい朝食が用意されていると良いのだけど。


という期待はあっさり打ち砕かれました。


朝食に出て来たのは、本のように分厚いステーキ肉、ハード系のパン、オムレツ、そして1メートル先にも匂いが漂って来るヤギのチーズでした。パンはものすごく固そうなのに、それを浸す為のスープはありません。


私達、料理長に嫌われるような事を何かしましたか?

と言いたくなるようなラインナップです。

どうして、柔らかめのパンや果物を出してくれないのでしょう?


子供達でも食べられそうなのはオムレツくらいです。しかし、そのオムレツに違和感を覚えました。

オムレツがのせられた皿はカートにのせられて運ばれて来ました。

五つある皿は四つが同じ柄で、桔梗の花の絵がふちに描かれています。でも一つだけ無地の皿にのっていたのです。


あの無地の皿を誰の前に置くかしら?と思っていたら、レスフィーナはその皿は私の隣に座っていたジークルーネ様の前に置きました。


これは明らかにおかしいです。この場にいる人間の中で最も身分が高いのはジークルーネ様です。そのジークルーネ様の前に一番安物の皿を置くなんて明らかに異常です!


もしかして毒⁉︎


と疑いました。どの皿の料理に毒が入っているかがわかりやすいよう、皿の種類を変えたのではないでしょうか?


「毒見を致します。」

とジークルーネ様の護衛騎士をしているアルスリーアが言いました。私は反射的に言ってしまいました。


「待って!」

自分でも意外なほどの大声が出てしまい、部屋中の人間が注目しました。

ジークルーネ様が苦笑いされました。


「そうだね。今日の毒見はロベルトにしてもらおうかな。いいかな?」

「はい。かしこまりました。」

ロベルトは意外そうな顔をしましたが、すぐに頷きました。レスフィーナ達三人の侍女を見ると、明らかに狼狽しています。


ロベルトはオムレツを一口食べました。


反応はすぐに顔に出ました。ロベルトは顔をしかめ、すぐにハンカチを取り出し口内の物を全部出しました。


「料理人を呼んで来るんだ!」

とロベルトが叫びます。


「毒が入っていたの⁉︎」

私が聞くとジークルーネ様は

「匂いを嗅いでみてください。」

と言ってオムレツの皿を私の方に差し出しました。私は匂いを嗅いでみました。部屋中に充満するヤギのチーズ臭が邪魔でしたが、顔を近づけると明らかな腐敗臭が鼻に届きました。


「腐っているの?」

「そのようです。」


犯人の性格悪すぎでしょう!


このオムレツはまだ温かいです。だから早めに作ったオムレツを長く放置して初夏の陽気で腐ったのではありません。腐った卵を割って溶いて焼いてソースをかけて出して来たのです。これはうっかりミスなどではありません。犯人が悪意を持って用意したのです。

到底許される事ではありません。


料理長が食堂にやって来ました。他の料理人達も一緒です。


「このオムレツを作ったのは誰だ⁉︎」

とロベルトが怒鳴りました。


「自分ですが。」

と料理長が言います。

「食べてみろ。」

「確かに素材の味を活かした味付けではありますが、だけど・・・。」

「いいから食べるんだ!」


料理長が何故か私とジークルーネ様を睨み、オムレツを口にしました。途端に

「うえぇぇっ!」

と聞き苦しい声をあげます。


「これはどういう事だ?」

「そんな馬鹿な。何かの間違いだ。こんな・・こんなはずない!」

そう言った後、料理長はくわっ!と目を見開きました。

「皿が違う!こんな皿じゃなかった。」

「言い訳をする前にヒルデブラント様に謝罪をしろ!」

「自分は悪くない!これは陰謀だ。自分を陥れようとする陰謀だ!」


「落ち着きなさい、二人共。」

厳しい声で母が言いました。


「これは到底、看過できない事態です。騎士団長を呼びなさい。犯人が誰かをつまびらかにして、逮捕させます。」


使用人達の間に動揺が走ります。


そうして、その日最大の騒動が始まりました。


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