コンラートの告白(3)
「はい。私もハーゲンベック子爵夫人の事はそんなに脅威だとは思いませんが、ゲオルギーネ夫人は恐ろしい相手だと思っています。今尚、ヒルデブラント一族内で最大の権力があり、彼女の指示一つで動く者が大勢います。社交界での影響力も絶大です。彼女にはジークルーネを物理的に殺す事も社会的に殺す事もできるはずです。・・でも、ジークルーネにだって、普通の人生を歩む権利があるはずです。私は彼女に幸せになってもらわなくてもいい、ただこれ以上不幸になって欲しくないと思っています。普通に生きていって欲しいと思っています。私はそうできるよう、彼女の側にいてあげたいと思っています。生涯彼女を支えていってあげたいと思っているのです。」
とコンラート様が言われました。
「ジークルーネを支え切れるのか?心に傷を抱えた人間は厄介だぞ。途中で投げ出したりせず、生涯守り続けられるのか?」
とリヒャルト様が聞かれます。
「そうしたい、と心から思っています。」
感動しました。
今、ものすごい愛の言葉を聞きました。
生涯支えたい、側にいてあげたい、守りたい。なんて、人目が無かったら転げ回ってきゃあきゃあ言いたいくらいロマンチックな言葉です。
感動で胸が震えました。
「その為にゲオルギーネ夫人とも私は闘う覚悟です。」
とコンラート様が言われました。
「おまえが闘う必要はない。」
「父上!」
「闘うなら私が闘う。これは一族のトップ同士の問題だ。おまえはジークルーネを守る事に集中しろ。命も、感情もだ。」
「・・・・。」
「どうか、あの子に対して私に償わせてくれ。私はあの子が平民の使用人と駆け落ちしたという話をずっと信じていた。あの子の事を誤解して、ずっと憎んでいた。今更だがあの子に償いたいのだ。」
「エーレンフロイト家は全面的に君とジークルーネ嬢の味方だ。」
とエーレンフロイト侯爵が言われました。
「そもそも人をレイプして、その相手を脅迫し、金をゆすり取るなどハーゲンベックの連中は万死に値する。そんな者に味方をするゲオルギーネ夫人の事も許せない。僕は司法大臣だ。性犯罪も脅迫も許す事はできない。」
うんうん、とアルベルティーナ様もレベッカ様もうなずいておられます。
「具体的にジークルーネ様をどうやってお守りしますか?リヒャルトさんがゲオルギーネ夫人という方ときっちり話をつけるまではどこかで保護しておく必要があるでしょう?」
とお母様が言われました。
「この屋敷でもいいけれど。」
とアルベルティーナ様が言われます。
「事が片付くまで余計な雑音が聞こえないよう、王都から離れた方が良いのではないかしら?いっそ、シュテルンベルクの領都はどう?
国境を越えた先はすぐヴァイスネーヴェルラントだし。何か問題があっても、すぐにジークルーネ様の叔母様という人の所に逃げ込めるわ。勿論、本人の希望を大切にしたいと思うけれど。でも、もしジークルーネ様がシュテルンベルク領に行かれると言うなら、私が彼女に同行するわ。」
「いいと思います。」
レベッカ様が母の提案に賛成しました。
「私はあの人がまた、ハーゲンダッツ・・じゃなかった、ハーゲンベック領に殴り込みに行かないかが心配ですよ。最高のタイミングでコンラートお兄様が現れてジークルーネ様を連れ戻してくれたから良かったけれど、お兄様がリンゴを投げなきゃあの人絶対あのバカ親子を斧でやってたと思いますよ。あの親子が破滅してくれるまで王都から離れていた方が絶対良いと思います。というか私、今あの人がアイヒベッカー家の屋敷を抜け出して、ハーゲンベックの領館を焼き討ちに行ってないかすごく不安です。」
「明日の朝までは大丈夫だろう。どこの領都も夜の間は門を固く閉めている。」
とコンラート様が言われました。
逆に言うと、明日の朝が来てしまうと大丈夫ではなくなるかもしれないという事でしょうか・・・。
そして、明日の早朝アルベルティーナ様とレベッカ様と母と私でジークルーネ様を迎えに行く事が決まりました。
シュテルンベルクの屋敷に戻った頃は、もうすっかり夜になっていました。
長い一日でした。怖い話や悲しい話もたくさん聞きました。
私は日記帳をそっと閉じました。
明日の話し合いが順調に進みますように。
明日が良い日になりますようにと、心から祈らずにはいられませんでした。
第2章完結しました
次話より第3章、シュテルンベルク領の領都編になります
更なるトラブルに巻き込まれてしまうヒロイン達
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