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シュテルンベルクの花嫁  作者: 北村 清
第2章 侯爵令嬢達と宝石の姫達
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ハーゲンベック領へ(1)

ジークルーネ様とレベッカ様。レベッカ様の二人の護衛騎士。カトライン様の護衛騎士、そして兄のライルの六人がハーゲンベック領へと向かう事になりました。


ジークルーネ様は珊瑚姫様に「ここで待っていてください」と言いましたが、大人達で話し合い珊瑚姫様には別邸に来ていただく事になりました。私はカトライン様と珊瑚姫ウルスラ様を別邸へとお送りしました。


それから私は急いでシュテルンベルク邸へ戻りました。今日あった事を母に報告する為です。


屋敷に戻るとリヒャルト様は医療省へ行っていてお留守でしたが、コンラート様は屋敷におられました。コンラート様と母は馬場でニルスとクオレを仔馬に乗せてあげていました。


私は母とコンラート様に、今日あった事を全て話しました。


「ジークルーネ様はお優しい方ですね。」

と私は彼女を褒めたのですが、コンラート様は蒼ざめておられました。


「ハーゲンベック家は、ジークルーネが数年間行方をくらませる原因になった一族です。熱した油と火のように、近づけばどのような事になるかわかりません。ハーゲンベック子爵夫人はジークルーネを憎んでいますが、ジークルーネの憎しみはそれ以上です。」


確かジークルーネ様は、地下牢に閉じ込められた平民を救出する為に斧を持って大暴れし、その為に王都にいられなくなった。と以前お聞きしました。

私は何となく、ヒルデブラント家の地下牢に平民の方が閉じ込められたのかと思っていましたが、もしかしてハーゲンベック家の地下牢だったのでしょうか?


「ジークルーネを迎えに行って来ます。」

「お待ちください、若!」

と声をあげたのは、シュテルンベルク騎士団の王都支団長のブルーノでした。


「我らもお供します。コンラート様は大切な当家の若君。そしてヒルデブラント姫君は、若の大切な御方です。すぐに馬と武具を用意します。」


その時私は思い出しました。

「そういえば、レベッカ様がコルネリア令嬢とリーシア令嬢にエーレンフロイト騎士団を迎えに寄越すよう依頼しておられました。」

「何と!それは、遅れをとるわけには参りません。」


「ジークルーネ様とレベッカ様は馬車で行かれたの?」

と母が質問しました。

「いいえ、スピードを重視して全員騎馬よ。」

「では、妊娠しておられるミラルカ様をどうやって王都までお連れするの?」


あっ!

と思いました。

言われてみればその通りです。激しく走る馬に乗せて連れ戻ったりなどしたら絶対流産してしまいます。


「私が馬車に乗って、ミラルカ様を迎えに行くわ。リナ。あなたは大学病院に連絡をして受け入れ体制を整えてちょうだい。」

「お母様、私がハーゲンベック領に行きます。お母様が王都に残っていてください。」

「リナ。ハーゲンベック領はたぶん危険な土地なのよ。」

「だからこそ、お母様を行かせられません。私が行きます!」


話をしている間に支団長が急いで同伴する騎士を選抜し、私達は出発しました。

私が乗るのは、少しでも揺れが少ないように、シュテルンベルク家所有の中で最も良い馬車です。その馬車には目立つ所にシュテルンベルク家の家紋が彫り込んでありました。


「行くぞ!」

コンラート様とブルーノ支団長が一番前を行きます。10人ほどの騎士達が私の乗った馬車を囲むように走り出しました。


王城特区の門まで行くと、どこかの騎士団が立ち往生していました。お揃いのローブを着ているので、どこかの家門の騎士団だとわかります。

そして、どこの騎士団なのかは容易に想像ができます。エーレンフロイト騎士団です。

10人以上が一斉に行動しているので、不審がられて色々質問をされているようです。


コンラート様が騎馬のまま前を行き、門番と話をつけました。


開いた門から一斉に騎士達が全速力で飛び出して行きます。当然ながら通行人の注目の的です。


「エーレンフロイト騎士団とシュテルンベルク騎士団だ!」

「また熊が出たのか!」

通行人のそんな声が聞こえて来ました。


シュテルンベルク騎士団とエーレンフロイト騎士団は、王都内を一区、二区、三区と抜けて行き、ついに一番外側の門に辿り着きました。

ここから先は王都の外です。ハーゲンベック領はここから馬車で一時間ほどの距離にあるそうです。


石畳の道を10分ほど進むと右手側にリンゴ園が見えて来ました。小さな立て看板があって『アイヒベッカー農園』と書いてあります。


ヒンガリーラントに帰化する事が決まって、私はヒンガリーラントの貴族について勉強しています。全ての家はさすがに覚えていませんが、公爵家と侯爵家は全部覚えました。アイヒベッカー家というのは、確か侯爵家です。最近の話題過ぎてまだ貴族名鑑には載っていませんでしたが、つい先頃、当主が結婚をしたのだそうです。


しばらく走っていると道が二股に分かれていました。馬車は細い方の道に入りました。道が急に悪くなりがたがたと馬車は激しく揺れました。

そして、ついに馬車はぬかるみにはまって立ち往生してしまいました。私が御者と二人旅をしていたのだったら焦ったところですが、周りには20人以上の騎士がいます。数というものは力です。馬車は10秒ほどで、ぬかるみを脱出しました。


そして更に10分ほど走り、馬車はハーゲンベック領の領都に到着しました。


北村は、リナの従妹のレベッカを主人公にした『侯爵令嬢レベッカの追想』という話も書いています

その作品の最新話辺りで本作と全く同じ事件について書いています

しかし、視点が違うと、感じ方やわかっている情報が違っていたりするのでもし良かったら内容を読み比べてみてください(^◇^)


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