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シュテルンベルクの花嫁  作者: 北村 清
第1章 母の故郷(ふるさと)

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昼食会PART2(1)

明けて翌日です。


ついにカロリーネ大叔母様に会える日となりました。


昨日コンラート様に『力になる』と言ってもらえたので気持ちはかなり楽になりました。

それでも、私達は確実な助力を得る為に朝食を食べながら簡単な打ち合わせをしました。


今日会う親戚の方々は親戚とはいえ、私達家族より遥かに高位の貴族です。その方達が話すのを差し置いて自分の意見を主張するわけにはいきません。まずは、相手の話を聞き、それから会話を自分達の話題にスライドさせていかねばなりません。

チャンスは一度だけです。

一度頼んで断られたら二度目はありません。それが貴族にものを頼むという事です。


朝食を食べた後、私達はまた『青鷹の間』へ行きました。


そして、今日着る服を選びます。

ものを頼む身であまり派手にするのは好ましい事ではありません。なので、昨日よりも地味な服を選びました。


身支度をしているとあっという間に時間が経ち、私達は馬車に乗って出発しました。エーレンフロイト邸はシュテルンベルク邸の隣の隣の隣の敷地にあるのだそうですが、ブラウンツヴァイクラントにあった我が家から隣の隣の隣の家に行くのとはわけが違います。一つ一つの敷地が広い為歩いて行くのは不可能なのです。馬車は二台で、一方の馬車に私達家族とコンラート様、ヨーゼフ様が乗り、もう一方の馬車にシュテルンベルク伯爵とルートヴィッヒ王子、フィリックス公子が乗られました。

王子殿下とコンラート様を一緒の馬車に乗せない方が良い、と伯爵様が判断されたようです。


私は正直、王子様と別な馬車になってほっとしました。



馬車の中ではヨーゼフ様が楽しそうにずっと喋っていました。話好きな方なのだな、と思いますが話が面白く、それなのにカチンとくるような事や言質を取られそうな事は一切言われません。頭の良い方なのだな、と思いますし、これがヒンガリーラントの貴族教育なのかと思うとヒンガリーラントの貴族のレベルの高さに感心します。

でも、その割にルートヴィッヒ王子は失言が多かったですよね。やはりこれは、ヨーゼフ様の性格でしょうか?


エーレンフロイト邸の庭はシュテルンベルク邸とはだいぶ雰囲気が違いましたが、屋敷の雰囲気はよく似ていました。何故なら、ほぼ同じ時代に同じ建築様式で建てられているからだそうです。


侯爵夫婦とレベッカ様、そしてカロリーネ大叔母様はエントランスで私達を待っていてくださいました。

当然一番最初に声を発したのは、この場で一番身分が高い人。つまりルートヴィッヒ王子です。


「ベッキー、久しぶりだね。会いたかったよ。」


「美しい朝でございます。王国の輝く星であられるルートヴィッヒ殿下にご挨拶申し上げます。」

レベッカ様はにこりともせずにそう言って貴族の礼を取られました。


温度差がひどいっ!


ヨーゼフ様に聞いていなかったら、衝撃を顔に出していたかもしれません。


「姉様は、とても優しくて情に厚い人なんだけど愛想がないんだよね。作り笑いとかすごい苦手で表情とかほとんど変わらないから、冷たい人とか、キツい人って誤解されやすいの。でも本当はすごく感受性が豊かで優しいんだよ。だから、姉様が無表情でも嫌われているのかも、とか誤解をしないであげてね。」


愛嬌のカタマリのようなヨーゼフ様がそう言われたので、ヨーゼフ様に比べて少し愛想が乏しいのかも、くらいに思っていましたが、これは本当に愛想がないみたいです。

昨日のルートヴィッヒ様の発言を聞いていて、見ていられないくらいの熱愛カップルなのかと思っていましたが、むしろ見ていられないほどのレベッカ様の塩対応でした。


「ノエライティーナ伯母様、エマ様、リナ様もようこそおいでくださいました。レベッカと申します。お会いできて嬉しく思います。」

と言ってくださいましたが、お面のように無表情です。ヨーゼフ様に聞かされていなければ歓迎されていない、と思った事でしょう。というか、歓迎されているのでしょうか?


その後、エーレンフロイト侯爵が進み出られて挨拶をされました。ヨーゼフ様とそっくりのお顔立ちで、レベッカ様の100倍くらい愛想の良い方です。


そして、車椅子に乗ったカロリーネ大叔母様が私達に声をかけてくださいました。


「まあ、まあ、まあ、あの小さかったノエルがこんなに大きくなって。子供だけでなく孫もいるだなんて!」

そう言う大叔母様の目尻に涙が浮かんでいました。

全身で私達に会えた事を喜んでくださっています。私も姉ももらい泣きしてしまいそうになりました。


ふと、大叔母様の真横に立っているレベッカ様のお顔を見ていると、唇の右側と目元がピクピクと痙攣していました。


もしや、これは笑顔を作ろうとしているのでしょうか⁉︎


皆が歓迎をしてくれているのだ。と思うと本当に、本当に嬉しかったです。


その後私達は食堂へ移動しました。もう昼食の時間なのです。


ただ、その前にもう一人紹介された人がいました。その女性の顔を見るとヨーゼフ様の顔が輝き、ルートヴィッヒ殿下は「げっ!」と言われました。


「エリーゼ!何でおまえがいるんだよ?」

「ベッキーの伯母様と従姉達にご挨拶しようかと思ったからよ。私達、親友ですもの。」


国王陛下の姪であられる姫君が親友だなんてさすがです!


ただ、ものすごく威厳のある姫君だったので挨拶するのも緊張しました。


そして、食堂へと案内されました。

シュテルンベルク家の執事よりはるかに若い執事が、案内をしてくれます。執事に限らず、若い使用人が多い家だと思いました。


「エーレンフロイト家は、王都の貴族家の中で最も料理がおいしい家と言われているんだよ。」

とルートヴィッヒ殿下が説明してくださいます。レベッカ様と仲が悪いというフィリックス公子も別に否定はされませんでしたので、たぶんその通りなのでしょう。


私達の前にたくさんのパンと大皿が並べられます。

不思議な料理が皿の中央に置かれていました。驚きの波動がルートヴィッヒ王子やリヒャルト様からも伝わって来ますので、皆さんも見た事のない料理なのかもしれません。

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