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シュテルンベルクの花嫁  作者: 北村 清
第1章 母の故郷(ふるさと)
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昼食を終えて(2)

・・そういう事ではなくて、名前とか年齢とか知りたかったのですけれど。


「何せ冤罪をかけられて捕らえられた平民を助ける為に、単身地下牢に乗り込んで斧を持って大暴れした人ですから。」


想像を凌駕した強さでした!


「冤罪って・・何があったんですか?」

と姉が聞きます。


「んー。罪の定義は難しいですね。平民が貴族に逆らう事は罪だと考える貴族も多いですから。でも、私の婚約者はそうは思わなかった。結局、一族内の上位者に睨まれて一時期行方をくらませていました。その間エーレンフロイト侯爵夫人や、国王陛下の姪のエリザベート公爵令嬢が援助してくれていたのです。微力ながら私も援助していましたが。」

「・・そうなんですか。」


「シュテルンベルク伯爵の前でジークルーネ令嬢の話題、出さない方がいいですよー。伯爵、彼女の事めっちゃ嫌ってますから。」

と突然ヨーゼフ様が言われました。

コンラート様の婚約者の名前はジークルーネというようです。


「・・そうなんですか?」

「昔っから、コンラートに『あの女とは別れろー』と口うるさく言ってますからね。名前聞くだけでめっちゃ不機嫌になります。オイゲン達も、今話題になったって事伯爵には秘密にしててね。」

「承知致しました。」

と言ってオイゲンは頭を下げました。


私達家族はリヒャルト様の庇護を受けている立場です。不機嫌になるとわかりきっている話はしない方が良いでしょう。


しかし、御当主は優しいし、息子さんは立派だし、使用人達も皆優しくて理想の家庭だと思っていましたけれど問題も少しはあるのですね。

私はそう思って、紅茶を口に運びました。



ジグゾーパズルを作っていたニルスが少し眠そうになってきたので、私達家族は西館に帰る事にしました。まぶたが重くなっているニルスはオイゲンが抱っこしてくれています。後、ヨハンナと騎士のセラが私達について来てくれていました。図書室を出て長い廊下を歩き出した所で

「こら!」

と母が姉に言いました。


「オイゲンにコンラート様の婚約者の話は出さないで欲しい、と言われていたでしょう。」

「ごめんなさい!でも、あの話の流れで聞かないというのも逆に変だと思って。」

「どうか、お気になさらないでください。若君が自分から言い出されたのですから。」

とオイゲンが言います。


「そうですよー。私は聞けて良かったです。若君の婚約者の事は屋敷内じゃ禁句、みたいな扱いになってて、ヨハンナさん達は色々知ってるんだろうけれど騎士達の方には何の情報も入って来なくって、噂ばかりが乱れ飛んでて正直すごく気になってましたから。若君の口から話が聞けて良かったです。」

とセラが言うとヨハンナも微笑んで言いました。

「私達だって何も知りませんよ。エーレンフロイト家が保護しておられた事もさっき初めて知りました。でも、アルベル様が保護しておられるのなら安心ですわ。それが知れて私はほっとしました。」

「ですって、お母様。」

「調子に乗るのではありません、エマ。」


話しているうちにエントランスに着きました。そしたらそこに、息を切らしたリヒャルト様がおられました。


「リヒャルト様。医療省からお戻りになっておられたのですか?」

とオイゲンが驚きの声をあげます。

「ルートヴィッヒ殿下がお越しと聞いて大急ぎで帰って来たんだ。何か問題が起きていないだろうな?叔母上、リナ殿、エマ殿。大丈夫でしたか⁉︎」


「ええ、今図書室で仲良く遊んでおられますよ。」

と私は答えました。


「皆様、お互いにぽんぽんと本音をぶつけ合ってとても仲がよろしいのですね。一国の王子様にあれだけ自由な発言が許されるだなんて、こちらの家門は本当にすごい家なのだなと、感服致しました。」

「許されませんよ!首が吹っ飛びますよ!コンラートは昔っからルートヴィッヒ殿下と馬が合わなくて・・その最近は尚の事王家に反感を持っていて、レベッカがいたら二人共多少は猫を被るのですが、本当に大丈夫でしたか?余計な火の粉が飛んで来ませんでしたか?何か恐ろしい思いをしたりとか?」


「大丈夫ですよ。まるで仔猫同士の猫パンチを見ているようでしたわ。お二人共素直で正直で。本当に恐ろしい宮廷闘争は笑顔で仲良くして、裏で非道な画策をするものですからね。」

と母が答えました。

「あそこまで正直でなくても良いのですけど。二人共もう20歳なのだし。子供ではないのだから、もう少し取り繕って欲しいものです。」

リヒャルト様はそう言ってこめかみを押さえました。


「私は王子に挨拶をして来ます。」

と言った後、リヒャルト様は


「リナ殿もエマ殿も・その・・・えっと、髪型似合っているよ。」

と少し照れたような表情で言われました。


「・・ありがとうございます。」

姉が答え、私も慌てて

「ありがとうございます!」

と答えました。


不意打ちな言葉に耳が少し熱くなりました。

ニルスに「可愛い」と言われた時とは全然違う気持ちが湧き上がって来ます。


その気持ちが何なのかよくわからなくて、私は耳の熱を振り払うように頭をぶんぶんと振りました。


なんとなく深く考える事は危険だと思えました。

次話にてついに、エーレンフロイト家を訪問します


レベッカがようやく登場します!

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