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シュテルンベルクの花嫁  作者: 北村 清
第1章 母の故郷(ふるさと)
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昼食会(3)

会話は、私達がこの屋敷でどのように過ごしているか?という事に移りました。


ヨーゼフ様はニルスに積極的に話しかけてくださいます。ヨーゼフ様には幼い弟がいるという話でしたので、きっと幼い子供の相手をするのに慣れているのでしょう。

ニルスはウサギやアヒルを見に行ったり、さくらんぼを摘みに行ったり、タングラムパズルをしたり、レーリヒ卿にもらった飛び出す絵本を見ていると答えました。


「タングラムパズルも、飛び出す絵本もレベッカ姫が作ったんだよ。」

と、ルートヴィッヒ殿下が言われました。

「別にその情報今いらんだろ。」

とフィリックス公子が言われます。


「何ていう題名の絵本?」

とヨーゼフ様が聞かれました。

「三つのお願い、です。」

「ああ、お星様が空から降って来てお願いを3つ叶えてくれる、ってアレね。」

「今ここに、お星様が落ちて来たらニルスは何をお願いする?」

とコンラート様が聞かれました。


「えーと、唐揚げいっぱい食べたいです。」

ニルスの答えに笑いが起こりました。


「それと、僕ネズミが嫌いだからネーボムク男爵のおうちの大きなネズミがいなくなったらな、って思います。」

「ネズミがいるの?僕もネズミは無理だあ。」

ヨーゼフ様が肩を震わせて言われました。


「あと・・最後のお願いは、またこのおうちに遊びに来たいです。」


コンラート様が不思議そうな顔をされました。

「また、来たい、ってどういう意味。ずっといてくれていいんだよ。」

「で・・でも、クオレやアリゼ伯母さん達と『十日経ったら帰る』って約束したんです。」


「・・・そう。」

とコンラート様は言われました。


「約束したのだったら、約束は守らないといけないね。だけど、この家にはいつ来てもいいんだよ。ここは君のお祖母様の家でもあるのだから。」

「本当ですか⁉︎」

「ああ、私は迷惑と思っている相手に『来てもいい』なんて嘘をついたりはしない。」


そうでしょうね。さっきからのあなたの態度を見ているとわかります。あなたはその場の雰囲気に合わせて適当な事を言ったりはしない人ですよね。


「僕、新しいジグゾーパズルを手に入れてさ。今日持って来ているんだ。ニルス。後から一緒にやろうよ。」

とヨーゼフ様が言われました。


「ジグゾーパズルですか?どんなパズルなんですか?」

「大人数で一緒にできるパズルだよ。組み立てて綺麗な絵を作るんだ。まあ百聞は一見にしかずだ。後から実際にやってみよう。」

「はい。」

ニルスはすっかりヨーゼフ様に懐いているようです。嬉しそうに返事しました。


そうこう話しているうちに、緊張と衝撃で胃が痛くなるような昼食会は終わりました。

「お茶をご用意致します。図書室へどうぞ。」

とオイゲンが言い私達は移動しました。



図書室に着き、私達は窓の近くの長机の側の椅子に座りました。机の上にお茶とクッキーが並べられます。ヨーゼフ様とニルスには果実水です。


ヨーゼフ様が机の上にジグゾーパズルのピースを広げました。ピースは100個以上ありそうです。


「何の絵なんだ?」

とルートヴィッヒ王子が聞かれました。


「雪原の白ウサギ。」

「めちゃくちゃ難しそうだな!」


「ここにあるピースを全部はめ込んで絵を完成させるんだよ、ニルス。まず、四隅のピースを見つけ出すのがポイントなんだ。」

ヨーゼフ様がそう言われました。ルートヴィッヒ様もフィリックス様もコンラート様もパズルを覗き込んでいます。


アレだけひどいセリフを言い合っていたのに、結局仲良く遊んでいます。不思議な光景です。


私も初めて見るパズルを興味深く眺めていました。

そしたら、コンラート様が輪の中から外れて私達の方に寄って来ました。


「叔母上とエマさん、それとリナさんと話したい事があるのです。少し良いでしょうか?」

声をひそめてそう聞かれます。


「ええ、勿論です。」

「ニルスに聞かれたくないので、あちらに。タペストリーの前に行きましょう。」


私は少し緊張しました。いったい何の話なのでしょう?

私達が立ち上がると、ちらっとヨーゼフ様がこちらを見られました。


私達はタペストリーの前のソファーに移動しました。オイゲンが私達のお茶を運んでくれます。そしてそのまま背後に控えました。人が近づかないよう盾になってくれているようです。


「さっきの、ニルスの『三つのお願い』ですが。」

前置きもなくコンラート様は話し始めました。


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