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シュテルンベルクの花嫁  作者: 北村 清
第1章 母の故郷(ふるさと)
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昼食会(2)

普段のサンドイッチしか出てこない昼食と違い、今日の昼食はとても豪華です。サンドイッチと共に腸詰入りの野菜スープに、茶色く油で揚げられた鶏肉が出てきました。

お肉をかじると、ザクっという大きな音がしたので驚きました。少し恥ずかしく思いましたが、そのおいしさに感動しました。


「これ、おいしいな。どういう料理なんだ?」

と、ルートヴィッヒ王子が言っているのを見るとヒンガリーラントの伝統料理というわけではなさそうです。


王子のその言葉を無視して

「今日の昼ごはん、超豪華だね。普段はサンドイッチだけなのに。」

とヨーゼフ様が言われました。


「殿下方がお越しという事で料理人が腕をふるいました。」

とオイゲンが答えます。


「別に気を使わないでいつも通りで良かったのに。」

とコンラート様が言われます。

「気を使え!」

とルートヴィッヒ様が怒りました。

「というか、これは何て言う料理なんだ⁉︎」

「唐揚げです。エーレンフロイト家に売ってもらったレシピなので、詳しい情報はエーレンフロイト侯爵に金を払って聞いてください。」

「えへ。まいどありー。」

と言ってヨーゼフ様がにこにこと笑われました。


「コンラートさんは、怪我をして入院しておられたのですよね。傷はもう大丈夫なのですか?」

と母が質問しました。


「お気遣いくださりありがとうございます。もう大丈夫です。叔母様達の方はいかがですか?体調を崩したりなどなさってはおられませんか?」

「ええ、大丈夫ですわ。」

「差し障りのない範囲で、ブラウンツヴァイクラントの状況を教えて頂けるでしょうか?」


母が本当に当たり障りのない事を話します。


姉が少しそわそわしているのはフェルミナ様の事を会話の俎上そじょうにのせたいからでしょう。もしも王族であるルートヴィッヒ様が庇護を申し出てくだされば、フェルミナ様のお立場は揺るぎないものになります。


「今はもうすっかり良くなりましたけれど、ニルスとフェルミナ様が高熱を出した事があったんです。」

と姉が会話に割って入りました。


「フェルミナ様とは?」

という質問を期待していたのでしょうが


「それはニルス君大変だったね。」

とフィリックス公子が言われて、それで終わりました。


ごく自然にスルーされたのか?高度に政治的な話題になるという事でわざとスルーしたのか判別できません。もし、わざとなのだとしたらこれ以上話題にする事は無意味でしょう。姉は会話の運び方を失敗したのです。


「湖水地方といえば、ラベンダーの花畑が有名なんだろう?丘一面が紫色に染まるらしいね。とても美しいだろうな。僕も一度見てみたいと思っているんだ。」

ルートヴィッヒ王子が言われました。

会話が全く私達とは関係無い事に変わってしまいました。私は残念な気がして心の中でため息をつきました。


「今、叔母上の話を聞いているのです。殿下の希望は聞いておりません。」

・・会話が元に戻りました。


「黙って聞いていろ、ルーイ。実際に自分の目で目撃した目撃者の話は貴重だ。伝え聞いた話よりもずっと価値がある。おまえの趣味嗜好の話はまた今度にしろ。」

とフィリックス様も言われました。


「叔母上が住んでおられたのは『夏の王都』なのですよね。御子息や娘婿殿の所在がわかれば『冬の王都』の情報もわかるのでしょうけれど。まだ、どこにおられるのか、情報は入って来ていないのでしょうか?」

とコンラート様が質問されました。

「ええ、まだ行方不明です。」

「そうですか。」


そこで王子殿下が口を挟まれました。


「そのうち、きっとわかるよ。ベッキーがヒンガリーラント国内だけでなくブラウンツヴァイクラントに接している全ての国の新聞に、探し人の情報と賞金をのせたのだろう。だから、きっとすぐに見つかるさ。」


その発言を聞いた途端、コンラート様の周囲の空気が冷たくなり、ヨーゼフ様は頭を抱えました。


「その情報を伯母様達が知って希望を持って、結局何もわからなかったら余計にガッカリさせるから、この話は伯母様達には秘密にしておこう、ってなってたのに殿下何で喋っちゃうんですか。んもー。」

とヨーゼフ様が言われます。


「・・・え?」

と言って王子殿下が絶句し、コンラート様は冷たい声で


「殿下。お願いだから帰ってください。」

と言われました。


情報省に詳しい情報を依頼しているというのは知っていましたが、そんな事までしてくださっていたのかと驚きました。

ブラウンツヴァイクラントは大きな国です。大小7つの国と国境を接しています。その全ての国で新聞にのせたというのならとてつもない金額がかかった事でしょう。

嬉しかったです。

そして、その事実を知れて良かったです。確かにその事実を知っていたら期待が大きくなったでしょう。それが叶わなかったら期待した分落ち込んだでしょう。

でも、そんなにまで私達の為に力を尽くしてくれた人がいる、という事は知っておきたいです。知れて良かったです。


コンラート様やヨーゼフ様は優しい方です。でも王子殿下は愛すべき方だと思いました。


こんな方が婚約者で、レベッカ様はお幸せね。そう思いました。


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