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シュテルンベルクの花嫁  作者: 北村 清
第1章 母の故郷(ふるさと)
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百万の蛍(1)

フリーデリーケ・フォン・シュテルンベルクは8代目当主の7人の子供の末子として生まれたそうです。


幼い頃から手先が器用で裁縫が上手く、7歳にして「もうこれ以上教える事はない」と刺繍を教える家庭教師に言われたと伝えられています。

絵を描くのも上手で、父親は彼女を王宮に出仕させ宮廷画家にしたかったようです。しかし、彼女はパッチワーク作家になると宣言して父親を激怒させました。


その時代のパッチワークは、貧乏人がお金を手に入れる為に作る日用品で、貴族の令嬢が作る物ではなく、まして生涯の職業にするものではありませんでした。

もしも貴族の令嬢がそんな物を作っていたら

「あそこの家はお金がないのね。」

と、ひそひそ噂されてしまう。そんな物だったのです。

そう囁かれる 屈辱に父親は耐えられなかったのです。


もしも考えを変えないのだったら、家門から追放しシュテルンベルクの籍から外す!と父親は言いました。

フリーデリーケは先祖である『聖女エリカ』同様、それで構わないと言って荷物をまとめて家を出て行きました。フリーデリーケが家を離れたのはエリカが家を出たのと同じ15歳の時の事でした。


ただしエリカと違って、父親に内緒で母親や兄が仕送りを続けたそうです。その為、フリーデリーケは生活で苦労する事なく、悠々自適な一人暮らしを満喫しました。フリーデリーケは職人街であるフェーベ街で暮らし、機織りや染色の工房に弟子入りして勉強しました。そして自分好みの布を自作し、自分で染めた糸で作品を製作しました。


そんな充実した生活も2年で終了します。高齢だった父親が病気で死んだのです。9代目当主になった兄はフリーデリーケを家に呼び戻し、シュテルンベルクの籍に戻しました。その後フリーデリーケは王都の屋敷内で貴族令嬢として優雅に暮らしながら、作品を次々と世に出して行きました。


シュテルンベルク家は平和でしたが、ヒンガリーラント国内は不穏な状況でした。隣国ブラウンツヴァイクラントとの戦争が始まろうとしていたのです。

ヒンガリーラントの王様はブラウンツヴァイクラントとの戦争が始まる前に、後方からの侵略をされないようヒンガリーラントの南にあるトゥアキスラントと同盟を結ぶ事にしました。その同盟の証として、側妃である蛍野妃が産んだ王女をトゥアキスラントの王太子と結婚させる事になりました。トゥアキスラントは足元を見て莫大な花嫁料を要求しました。更に、王女が唯一人で嫁いで来るよう指示し、侍女や護衛騎士を同伴させる事を許しませんでした。


フリーデリーケは、その王女の持参する嫁入り道具としてタペストリーを作るよう王室から依頼されました。フリーデリーケの作るパッチワークの美しさが既に社交界で大きな話題になっていたからです。フリーデリーケは僅か2ヶ月でタペストリーを作り上げました。

それが、後にヒンガリーラントの国宝となる『百万の蛍』だったのです。



当時の蛍野宮では毎年夏に『蛍の宴』と呼ばれる夜会が行われていました。睡蓮やアヤメが咲く池のほとりに蛍を放ちその美しさを皆で鑑賞するのです。

その光景をフリーデリーケは布の上に再現しました。


乱れ飛ぶ蛍。

水面に映る光。

水辺に咲く花々。

そして満天の星。それをパッチワークと刺繍で再現しました。


そのあまりの美しさに、父王の正妃である王妃がそのタペストリーを横取りしようとしたほどだそうです。


王女はそのタペストリーを含む、たくさんの宝物を持ってたった一人で、トゥアキスラントに嫁いで行きました。



そのタペストリーは、トゥアキスラントでも大変な話題になり同時に騒動を引き起こしました。

トゥアキスラントの王妃が自分のサロンに飾りたいというのを、嫁いだ王女は断固として拒否したのです。


王女は故郷の宮を思い出すそのタペストリーを自分の寝室に飾ると主張し、寝室に置かれたら見に行く事ができなくなると王妃が猛抗議して、結局王女のサロンに飾る事で話は決着しました。


騒ぎの元となったタペストリーはトゥアキスラントの社交界で話題になり、貴族達が皆見たがりました。王女のサロンは人気の的となり、招かれる事が最高の栄誉と言われるようになりました。


王女を妻として愛するつもりがない!と公言していた王太子でさえ、そのタペストリー見たさに王女のサロンに日参しました。


トゥアキスラントの王妃は、そのタペストリーが羨ましくて羨ましくてたまりませんでした。そして思いついたのです。フリーデリーケをトゥアキスラントに呼び寄せれば良いのだと!


トゥアキスラントの王妃はヒンガリーラントに圧力をかけ、フリーデリーケを呼び寄せようとしました。

しかし、当のフリーデリーケが断固として拒絶したのです。


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