閑話 元祖おもしれー女
「――むむ!」
魔の森で。
何かを受信したボクはそんな声を上げた。
「シャルロット様。どうしたのですか?」
尋ねてきたメイス君に向けて、ボクは決め顔で答えた。
「またアーク君が女をたらしている気がする!」
「……はぁ?」
「女だけじゃなく男もたらしている気がする! あの人たらしが!」
「はぁ……」
「ん。いつものこと」
大して気にした様子もないミラ君だった。いやいやライバル(仮)が増えるんだよ? 一大事じゃないかい? こういうハーレムものでは初期メンバーの影がドンドン薄くなっていくのはお約束なのだから! 早々にテコ入れをしないと!
「シャルロット様が何を言っているかよく分かりませんが……人が増えてもシャルロット様が埋もれることはないかと」
「ん。ないない」
なるほど、つまりボクとアーク君の絆はすでに盤石だと言いたいんだね? 分かるよ。
「……ははは……」
「ハッ」
これ以上ないほどの苦笑をするメイス君と、鼻を鳴らすミラ君だった。ミラ君ってそんなキャラだったっけ?
まぁでも! 心配する必要はないかな!
なにせボクは公☆爵☆令☆嬢という高貴な存在で!
ボクッ子という貴重な存在で!
アーク君とは『前世の知識を持つ者同士』という絆が存在するのだから! ぽっと出のヒロインには負けないよボクは!
……いやまぁ、万が一、公爵令嬢を超える高貴な王女様系ヒロインとか、他にもボクッ子が出てきたりだとか、前世の記憶持ちが増えたらちょっとヤバいかもしれないけどね! そんなことはあり得ないから心配する必要はないさ!
……う~ん、なんだか寒気がするぞぉ? 風邪でも引いたかな?
あとでエリーに診てもらおう。
そんなことを考えながらボクたちはお仕事を始めることにした。
キングゴブリンたちはダンジョンの中で農業を始めるけど、やり方が分かっていないみたいだからね。ここはボクたちがお手本を見せようということになったのだ。
クイ、っと。どんなときでも頼りになるメイス君が眼鏡を押し上げた。
「ダンジョンマスターに関する文献を信じるなら、ダンジョン内における耕作は例があります。天候の操作は自由自在ですし、病害虫の発生もダンジョンマスターの管理下にありますから、これ以上ないほどの耕作適地となるはずです」
そんな本まで読んで覚えているのかと感心するべきか。そんな本まであるのかと疑問に思うべきか……。
「こちらはダンジョンマスター――初代真王に関する記述ですね。まぁ本格的な研究がされたことがない、神話や伝承、あるいは奇書という扱いですが」
真王ねぇ?
フレズ君たちが何度か口にしていたけれど、原作ゲームには登場しなかったはずだ。いや読み方が同じ『魔王』なら出てきたというか、ラスボスだったけど。
正直、今さら魔王が出てきても相手にならないよね。ボクたちが強すぎるという意味で。なにせシルシュ君が要るし。ライラ君もいる。魔術師ではミラ君とボクもかなりの戦力となるし、兵士としてはこれからどんどんゴブリンが増える。そしてさらにアーク君がいるのだから……。
…………。
……あれ? なんだかこれって『フラグ』っぽいかな?