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10 マクマホン茶葉屋

新聞の、ある大きな見出しの文字に釘付けになった。1週間後に大規模な大雨と台風が来るらしい。

今のうちに雨戸の手入れもして、大雨に備えなければいけない。雨戸を閉めれば問題ないとは思うが、一部の窓の隙間風が気になる。窓枠の木が壊れたり、腐ってダメになってしまう前に対策をしよう。


大雨台風対策は午後にやるとして、午前中は市場に向かおうと思う。

基本的に喫茶「調合屋」は私用が無い限り開店しているのだけど、今日は息抜きも兼ねて買い物をする予定だ。

そんなわけで今日は、朝から店の扉に閉店中のプレートを下げ、1人音楽をかけながら店のメンテナンスを行っているのだった。

先日切らしたクロッサの茶葉をはじめとした飲料、食材、調味料が一部不足しているため、今のうちに買っておきたいからリストに書き記す。調合屋として使う薬品類は今のところ問題なく、在庫が足りているため買う予定はない。




買うものリスト、財布、衛生用品……必要なものは、あらかた鞄に入れただろう。

カウンターテーブルに置いておいた水の入ったグラスを一気にあおり、飲み干す。


市場はここから徒歩5分もかからない場所にある。買ったものを入れる大き目の袋は持っていくが、物によっては店まで届けてもらう必要がある点には留意しておかなければならない。

あと、買いすぎと無駄遣いには注意しよう。


「いってきます。」


誰に言うでもなく店内に声をかけ、私は裏口から表通りに向かった。




___一軒目、「マクマホン茶葉屋」。


文字通り、ここは茶葉を取り扱っている茶葉専門店である。

カウンターで書面を眺めている猫背の人影が見えたが、来店した私の姿には気付いていないようだ。


「パメラさん、こんにちは。」


「………おや、調合屋の。いらっしゃい、ゆっくりしていってね。」


彼女はマクマホン茶葉屋の店主、パメラ・マクマホン。

老齢のピクシーの女性で、この店を1人で切り盛りしている。

元々は彼女の夫であるデリック・マクマホンのお店だったが、彼が亡くなってからは妻であるパメラさんが1人で経営をしている。


彼女は目線だけで私を捉えると、再び手元の書面に視線を戻した。これが彼女流の接客なのだ。

軽く会釈し、私は店内を周ることにした。


このお店の店内は細長い長方形のような形になっており、両方の壁と敷地の中央に、紅茶の缶が並ぶ棚が置いてあり、左奥には、パメラさんのいる小さなレジカウンターが設置され、右奥には店の裏側に繋がるのであろう扉がある。


店全体は遮光カーテンによって日光が遮られているため、照明の明かりだけが頼りになっている状態だ。多くの紅茶は日光を遮断して保管をするのが鉄則なので仕方がないが、足元に気を付けないと棚の角で足を打ちそうだった。


この茶葉屋は棚の1区切りごとに紅茶の缶を陳列している。手前においてある1缶目はサンプルとなっており、茶葉の香りを確認することができる。商品は2缶目からなので、気を付けないとサンプルの缶をレジに運ぶことになる。壁にその点に関する注意書きはしてあるが、見てくれないお客様もいるのだろう。


(さて、まずはいつも通り。クロッサ、ガラムラゼ、ウルーの茶葉。)


クロッサ

中東洋の国が原産の茶葉で、あっさりとした渋みと甘い風味、コクの深さが特徴。

柔らかく飲みやすいため、当店でも最近仕入れるようになった茶葉の1つである。

おすすめの飲み方はストレート、ミルクティー、アイスティー。

5段階評価で表すなら渋みが2、コクが4。

(4話にて提供をしようとして買い忘れていたことに気が付いた茶葉。詳細は4話に。)


ガラムラゼ

この国の最北端にあるタギン地方のレヴィーオ県で採れる茶葉で、風味は強いがクセがなくバランスの取れた味わい。

アイスティーの多くはこのガラムラゼで提供されることが多いので、このことを覚えておくと、違う茶葉だった時に新たな驚きと発見があるかもしれないね。

おすすめの飲み方はストレートとアイスティーとレモンティー。

5段階評価で表すなら渋みが3、コクが4。


ウルー

北西部の国が原産の茶葉で、紅茶特有の風味と香りが強い。一方で渋みは抑えめなので、香りに反して軽い口当たりと飲み心地だったりする。私はアイスティー系の飲み物を提供するとき、この茶葉を使用することが多い。

おすすめの飲み方はストレート、アイスティー、レモンティー。

5段階評価で表すなら渋みが2、コクが2。



3つの茶葉の缶を見つけ、両腕に抱える。

そんな私を見ていたのか、「ちょい」とパメラさんが籠を差し出しながら声をかけてきた。


「使いなさいな、落とすと危ないよ。」

「ありがとうございます。すみません、お借りします。」

「ヒャッヒャッ、こちらこそお買い上げありがとう。…ところで調合屋さんよ。」


何でしょうと声をかける前に、パメラさんは1つの缶を私に差し出した。


「デイジー…こんな茶葉、お店にありました?」

「いや。つい1か月ほど前に仕入れてみたのさ。試飲してみないかい?で、良ければ買ってくれ。」

「それでは、お言葉に甘えて。お願いします。」

「ヒャッヒャッ、賢い子だ。待ってな、すぐ淹れてあげるからね。」


そう言い残すと、パメラさんは店の裏側に消えていった。

試飲が提供されるまでの間、私は再び店内を眺めていることにした。




「…ああ、これはミルクティーに向いている茶葉だね。」

「おや、分かるかい。」


デイジー

東部の国原産の茶葉で、味とコクが深くて甘味が強い。

ストレートでも飲めるが、この味の濃さはミルクティーに向いている。

5段階評価で表すなら渋みが3、コクが5くらいだろうか。


「店で出すかプライベートで飲むかは決めていないけど、これもいただきます。」

「ヒャッヒャッ、毎度あり。少し割高になるけど、小さい缶のサイズもあるよ。」

「それは助かる。デイジーの茶葉の飲み物がお店で売れなかったら、私一人で消費しないといけないからね。」

「あたしの店の商品に狂いはないさ…。問題があるとするなら、あんたの紅茶の扱いに対する腕前の問題だね。」

「ははは、手厳しい。」




「はい、これが商品だよ。また来てね。」

「ありがとうございます。ではまたいずれ。」


紅茶の缶の重みが増えた袋を手に持ち、私は茶葉屋を後にした。

次に向かうのは、食材の店だ。

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