答えと結末
「お前は触るな! 無能力者にあの衝撃は……」
「……っ」
握りしめた剣は俺の手に馴染むようだった。なぜだろう。初めてではない気がする。
「なぜ持てる!?」
――この剣は
『私たち、無力者だからこそ扱える』
「――うっ!」
頭にノイズが入る。掠れたなにかが浮かび上がる。
「……い、もっとスピード出させろって。」
「そんなこというなよ。俺達すらご飯をまともに食べられていないんだ。馬が可哀想だろ」
これは俺と誰かの会話だ。
「魔法のせいで全部全部無茶苦茶になった!」
この声……
大きな馬車が行く末は町のはずれ。町は浮くことなく地面に並び様々な店が並んでいた。そして、この噴水。
スレイブル?
小屋では、一人の老婆が複数人を連れていた。
「よく帰ってきた。」
「よう老婆、どうした?頑張ったんだから感謝してくれよな」
老婆はそれに答えることなく、後ろの人から布で巻かれたものを見せた。
「ようやく完成した。我々が抗うすべは、はるか昔から動物を相手に抗いのし上がった技術のみ。これが最後の希望。勇者の剣じゃ」
そう言うと、隣にいる男に剣を手渡した。
「勇者?この剣が?」
「あぁ、これは私たち無力者なら誰でも使える。魔法すら全て切り落とす剣じゃ。これから勇者としてお前は乗り込んで代表を殺せ。決してその剣のことを話してはいけぬ。お前が勇者だと言い張るんじゃ。」
「そんな、コイツ1人で行かせるのか!? 俺が行く!」
その時、少年は俺に耳打ちをした。
「心配するな! 俺が死んだら、お前に剣を託す。2人でこの町を制覇する。勇者は2人いるってな混乱させようぜ」
「……おば様の言ったこと覚えてないのか?お前が死ぬ前提とか、ひどい約束事だ。」
俺はお前の後ろ姿を見送った。だが、その瞬間に……俺たちの小さな集落が焼き払われた。
そうだ。俺はそこで死んだんだ。もうお前に会うことはなかった。お前に全てを重い荷を託して。
「……お前の意志だというのか」
――あぁ!
「まだ記憶が完全に戻ったわけではないが……なんとなく理解した。そういうことか」
「どういうことだ!」
「俺が勇者だということだ。」
(よく分かりきってはいないが力を貸してくれ)
彼女にではなく上面に剣を振り、瓦礫を落としては逃げ出す。まずはエスティアだ。
「エスティア!!」
「ユイト!?」
俺が彼女の言葉が聞こえる場所に行くと、楔で繋がれている彼女がいた。
「その剣、あなたが勇者なの? 全てを壊してくれる勇者……でも……私は」
「勇者といえども訳ありだ。その話しはここを逃げてからでいいんじゃないか?」
「うん!!」
俺は軽く剣を振り、彼女についたくさびを壊した。
「私は昔から村でいじめられてさ。あの魔女もあの2人も村の人達も復讐したかった。……でも、今は、ユイトと一緒にいるだけでいい。貴方と居たい。」
俺を抱きしめると、彼女は手を開いた。
「やっと自由になれたし。自分の悔いは全部ここで終わらせないと。全てを終わらせろ。……オルデ」
彼女の手から魔方陣があらわれた。この建物全体に呪文がかかれていく。
「――させるわけないでしょう」
っ!
俺は瞬時に、襲いかかる水を切り落とした。
「なんてこと。その剣が思い立たせ勇者にするなんて。そうよ。無能力者なら誰でも使える。バレないように隠してきたのに! ほんとこのクソ女……その醜い顔だけでも吐き気がするのに、なんてことを!!そんな呪文だって気味の悪いものをつくりやがって!!」
「ヴィン様。なぜそのように声を荒らげるのですか……なぜそんなに怒っていらっしゃるのですか? あなたはそんな人では……」
俺を追いかけてきたソウルイタと兵はヴィンの言葉に驚いているようだった。
「あんなに澄ました方が、こんな人だなんてな」
「正直、本性がこんなんだったなんて」
後ろでもコソコソとヴィンを非難する声が聞こえてくる。
「なっ……違うのです。それはこの悪魔に操られて! 速く私を守りなさい!」
ヴィンは必死に言い訳するが、彼女達は後ろに下がっていく。
「もう黙れ。エスティアは一人でに頑張っていたんだ。そして、この呪文でお前が負けるのが全ての結果だ。」
「わたしはただ、ユイトといるだけで幸せなんだ。あなたとは違って、どんな私でも全て受けいれる人がいてくれる。」
彼女は笑いながら、手を上にあげると呪文が少しずつ発光していく。
「ふざけるなっ!!」
「……っ!」
俺は、ヴィンの攻撃を剣で受け流した。
「じゃあ、いこうか。ユイト」
瞬時に俺の前にくると前のように担ぎ上げては視界が真っ暗になった。その時間はわずか0.1秒ほど。気づけば町が全て燃えていた。
「……やりすぎじゃないのか」
「ごめん。つい嬉しくて。大丈夫、皆魔法使えるんだから逃げられるよ。それに魔力が無くならない限り死ぬことはない。」
「そうかもしれないが、あまりにも損害が……もう少し思いやってあげたほうがいいぞ」
そういうと、彼女は衝撃を受けたようにしていた。
「そっちの方が好き?」
「あぁ」
「ユイトに向けるみたいに、皆を思いやれるのかな」
「エスティアならできるよ」
俺はそう言った後に剣を握りしめた。彼から……みんなから受け継いだ勇者の剣、そして色々抱え込んだ彼女。あの檻の中では想像できなかったことばかりだ。
「で、これからどうするんだ?」
「……ユイトを他の町に連れいく。ユイトが一番だから。」
本当に思いやる気あるのかなこの人。
ま、彼女の傷が癒えるのを願って歩いて行くしかない
「どこにいきたい?」
「楽しい場所」
「いいね!」
俺の役割は、彼との約束と彼女の願いを果たすことかもしれない。
これからどう生きるかは俺と彼女で決めればいい。この未知の世界で、託された剣と一緒に。
「大好きだよユイト」
「痛い」
抱き潰されそうになりながら俺達は帰っていった。次の町にいく準備をしよう。
……だが、そう上手くはいかないらしい。
身体が動かなくなっていく。脳からの信号がおかしい。
まるで、剣に身体の全てを奪われるように。
俺は……なんで生きているんだ。
「ユイト?」
「……ここは」
勇者になるべき彼を見送り、俺は死んだ。
なのになぜ生きている。
「だれだ。能力者か!?」
俺は咄嗟に剣を構えた。能力者は殺さないと、俺たちの世界のために! 俺たちが無能力者が笑いあえる世界のために!
「なにいってるの? ユイト」
「まて。なんで……ここに剣があるんだ。これはっ……セイヤのものだ!」
あいつが死ぬわけない。セイヤはこの剣を持っていたんだ。
なら……ここに剣がある理由は?
「死んだのか!? セイヤは! それに俺たちの軍は!? ばあ様は!?」
「……何言ってるの!? あなたは私と一緒に町をみて、たくさん思い出を作ったんだよ!?」
彼女は俺を知っているかのように泣き出した。