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茨姫は悪魔と呼ばれる俺に依存する  作者: 大井 芽茜


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幕開け

ユイトは魔力が生まれつき使えず悪魔と呼ばれ恐れられていた。

そんな中、出会ったエスティアと冒険をする。

だが、その途中に無能力者のみ使える勇者の剣に乗っ取られてしまい身体が動かなくなった。


エスティアとユイトは勇者について知るセイヤのもとへ向かったが……

「さあ、今から仕上げにはいる。とくとご覧あれ!! 我らの勇者の再誕を――――!!」

「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」


 見上げる人々は声を荒らげながら手を伸ばす。泣き叫びながら、渇望していたかのように声を荒らげる。それが俺には恐怖だった。


「待てっ!! 俺はなにも聞いていない! それに何をする気だ!!」

 セイヤは俺を見下ろすように見ると、笑みを見せる。


「俺はずっと待っていた。悪魔と呼ばれる無能力者を。殺されることなく生きてきた者を。」

「……それは、家族が俺を守ってくれていたからだ! お前らのためじゃ!」

 どれだけ身体を動かそうとしても、ただ身体は固まったままだ。座っているだけでも痛みが走る。でも、こんなところで倒れる訳にはいかない。


「そうか。お前を愛していたんだな……我々が何もしなければお前は当たり前のように愛され幸せだったかもしれない。」

「……どういうことだ」

 セイヤは俺の方へ振り向くとニヤリと笑っていた。


「嫌だよ! そんなことさせないから!」

 後ろからエスティアの声が聞こえる。


「ユイトは私が、私のせいで生まれてしまった。だから責任を取らなきゃいけない。あなたに頼んだのは、この町で1番の学校の先生で……勇者について知っていたから……あなたのおかげで魔法を使ってユイトに会えた。あなたのおかげで死なずにすんだ。でも……!」



「なにをいっているんだ。お前だけで悪魔を呼べるとでも?」

 セイヤが腕を広げた途端、また声が聞こえてくる。


「誰だお前は!こっちは血を毎日捧げてんだ」

「嫌いなやつは全部殺して捧げたんだぞ!こっちは」

「勇者は我々のものだ!!」

 殺す?血を捧げる……?何を言っているんだ。誰もが自慢のように声をあげる。


「この日のために我々は準備をしてきたのだ。何人の殺しの罪を研究として隠してきたと思う?いや、はなから法なんてただの権力者を守るために作られたものだ。昔に比べればこんなもの気にするまでもない。」

「そんな……」

 セイヤは吐き出すように笑みを浮かべ、大声で笑いだした。



「悪魔を呼ぶには、我々も悪魔とならなければならない。何千人の嘆きを、死への恐怖を、血を……我が魔力として汲み上げた。そして、最後の無能力者の生き残りが死に絶えたあの村にエスティアが殺した2人を媒体に魔力を流し込んだ」

 あの村は、無能力者が……俺があの時みた村だったという訳か。



「……そんなことができるわけない! だって、魔素を取り込んだ血は、他の身体には合わない!!」

「へえ知らなかった。だが出来たから問題ない。さて、子どもを作れるほどの富があるのはお前のとこだけだったという話だ。勇者がいた町なんて嫌われているだろう。不幸ながらお前という悪魔を作ってくたばってくれた」


「そんな風に言われるのは不愉快だ。なら、あの火事も……お前らが焼いたのか。」

「あぁ。媒体を触られたからな。バレる前に消してやった。まあ、魔力とともに歴代を紡いだ記憶は全部お前にいったみたいでよかった」

 なんてひどい話だろう。これなら、お前らのせいで俺は村も家族も失ったと?ただ勇者といわれたよく分からないもののために。


「さあ、エスティア剣を持ってこい」

「……いや!」


「だろうな。まあ、別にいいが。」

 そういうと、セイヤは手を上に伸ばした。そこへ剣が現れる。


「「!!」」

 なぜだ。セイヤは確かに……記憶では無能力者だが死んだんじゃないのか。それにこいつは、ここで元気に生きている。空だって飛べていた。悪魔と言われることもない。なぜだ。


 その剣は無能力者にしか扱えないのに。



「さあ、世代は代わる。私はこの立場のまま、お前は勇者となり……この憎き世界を滅ぼすのだ。私たちを引きづれて! 私たちを殺したこの世界をっ!! そして、我々の世界を取り戻す」

「そんなことさせるわけっ!」

 エスティアの甲高い声が聞こえ、茨が舞う音がする。


「なら……もうお前はいらない。俺の邪魔をするなら消えるだけだ。」

 そして、茨の音はすぐに止んだ。セイヤが握ったその剣は、素早くエスティアに向かっていた。


 暫くして、鈍く崩れ落ちる音がする。

「……おい、エスティア!」



「さあ。行こうユイト。私の代わりにお前が成すのだ。屍を上り、その血で作り上げた魔力を受けた身体……無能力者達の記憶は埋めれるだけ埋めてやった。私の記憶もだ。」


「俺は死にたくない。勇者とか興味が無い、エスティアとこの世界を見るんだ。お前の話を聞いて、何となく理解した。尚更俺の家族が守ってくれたこの命をおわらすわけにはいかない。」

 俺は睨みつけた。その剣をもう握る気はない。もし握れば次は本当に消えてしまう。


エスティアのために俺は生きるんだ。


「そうやって必死に抗っているようだが……お前はその運命から逃れられない。そこで動かない彼女のように」

「……」

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