ソフィー教授の思い出(2)
病院の看護師がソフィーをエドラの病室のドアの前まで案内すると、静かに去っていった。
ソフィーがドアを開けて中に入ると、エドラは髪を束ね、大きなバスローブを着て、病床に座りながら、小さなテーブルに何かを書いていた。
隣のベッドサイドテーブルには、大きな書類の束が二つと小冊子が置いてあった。彼女はまるで研究室で書類を書いていた時のように見えた。
この光景に、ソフィー教授は一瞬ドアを出て、ここが本当に産科病棟なのか確認しようとした。
彼女は、妊娠が偽装で、エドラがこの保護対策と秘密保持が一流の病院を使って何か重要な話をしようとしているのではないかと疑い始めた。
エドラが顔を上げて彼女を見て、微笑みんだ。
「先生、お久しぶりです。」
到着する前、ソフィー教授はたくさんの言葉を考えていたが、最後に言ったのはただ一言。
「お元気ですか?」
「運よく、医療魔法と薬のおかげで出産はほぼ無痛でしたが、産後は少し不快感があります。」
「本当に出産したんですか?」
「本当ですよ。」
「それで、あなたの娘さんは?」
「彼女の父親が外に連れて行きました。花を見に行くと言っていました。」
「名前はつけたの?」
「彼は娘にピノと名付けました。どうやら沈黙の山脈にしか咲かない珍しい花の名前らしいです。」
「あなたのパートナーは花に詳しいんですね。」
「確かに、彼は花屋さんです。」
ソフィーはエドラの隣の応接椅子に座り、二人は色々な話をした。
翡翠魔法学院のある大魔法師の不倫が発覚した話から、ソフィーの研究室のグッピーが一度にたくさんの稚魚を産んだ話まで、エドラが学院を去ってから関わっていない時間を補った。
エドラのパートナーがただの一般市民の花屋であることに、ソフィーは複雑な思いを抱いていた。
彼女にとって、エドラは自分の娘のような存在であり、常に最良のものを望んでいた。
計算高く、心の中を隠すばかりのセーコ王太子は好きではなかったが、それでも権力と勢力を持つ皇族だった。
ソフィーは知っていた。エドラが自分を無理に押し付ける人ではないことを。彼女が一般市民のパートナーを選んだのは、彼を好きだからに違いない。
ソフィーがエドラの書いたものをうっかり目にするまで。
そこには「幻霊魔法の全面解析と来訪者の過ち」と書かれていた。




