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ズキュンバキュ~ン♪

『ギャヴゥゥゥッ!』

『カァガギィイッ!』


 早速、ケルベロスの一頭が切り込んでいく。鋭い牙で食らい付き、前足の鉤爪で追撃を加える。如何にも獄狼らしい戦い方だ。


『グルァアッ!』

『ジュルァッ!』

『ギャィィン!?』


 続いてもう一頭が背中から襲い掛かろうとしたが、アムフィシーンの尻尾は、まるで第二の頭であるかのように素早く動き、ケルベロスを挟み掴んで投げ飛ばした。


『ギャヴォオオオッ!』

『ガルゥッ!?』


 そして、噛み付いていた方のケルベロスをも力尽くで振り払い、口から蒼い炎を吐いて焼き殺そうとするも、こちらは惜しくも躱される。


『アヴォオオン! ガヴォオオオン! ……グルヴォオオオオオオオン!』


 だが、その間に残るリーダー格のケルベロスが生き残った蟲たちを遠吠えで集め、白銀の戦闘形態へ移行した。三つ首の魔獣を思わせる神々しい雄姿を晒し、人狼の戦士が如く立ち向かう。四本の腕から繰り出される殴打と斬撃は凄まじく、二回り以上はデカいアムフィシーンを後退させた。


『……ギェアアアヴォオオッ!』

『クォォ……ッ!』


 しかし、超獣を超える大怪獣たるアムフィシーンが押されっぱなしである筈も無く、電撃のような翼刃を一本槍が如く変形させつつ突き出し、猛威を振るっていたケルベロスを串刺しにして、呆気なく葬る。


『ガヴォン!』

『ジュルァヴォオオオッ!』

『ギャィン!?』


 さらに、チャージし終えて助太刀に入ったケルベロス(噛み付いていた個体)をも一突きで処刑して、そのまま大回転、派手に散らせてしまった。鋏で掴み飛ばした個体はピクリとも動かないし、実質的にケルベロスは全滅したと言える。こうなると次にどうなるかなど、考えるまでもない。


『ガルヴッ! ガブゥッ! ……ジュルァヴォオオオッ!』

『おっと~?』


 蹴散らしたケルベロスたちを食い散らかしたアムフィシーンが、今度はたくあんたちを睨み付けた。言うまでも無いが、纏めて食うつもりだろう。食欲旺盛な奴である。

 もちろん、たくあんたちも大人しく食われる筋合いはない。全力で抵抗し、勝つ!


『ぬぬぬぬ~ん! 【ηλεκτρική(イレクトゥリキ)】!』

『ギアヴォッ!?』


 流石に肺魚が電撃魔法を使うとは思わなかったのか、アムフィシーンが怯み、動きが止まる。


「【超電導波(サンダーフォース)】!」

『【神炎皇咆ゴッド・ブレイズ・キャノン】!』


 その隙にサイカとユダが魔法で追撃。


《《サラダバ~♪》》《ボクプリ~ン♪》

「「逃げるんかい!」」


 ソドムとゴモラたちは逃げ出した。何時もの事。


『ガカァギィイイイイヴヴヴッ!』


 だが、アムフィシーンは表層的なダメージしか受けておらず、むしろ怒り心頭と言った様子で咆哮を上げ、翼刃の体節部から蒼い炎を噴出し始める。これが彼の戦闘形態なのであろう。


『ギャヴォオオオオオオオオッ!』


 そして、鶏冠に炎を集中させて巨大な火剣と変じ、それを叩き付けた。


『う~わ~!?』

「くそっ!?」

『ドワォ!?』

《《あ~れ~!》》《プリ~ン!》

「「わーい!?」」


 たくあんたちは直撃こそしなかったものの、凄まじい爆発と、それに伴う地盤沈下に巻き込まれ、バラバラに分断されてしまった。

 アムフィシーンの下に残されたのは、


『ぬ~ん……!』

「あたたた……」


 たくあんとプルの二人。必然的にアムフィシーンのターゲットは二人に切り替わる。


『キィイイイイイン!』


 瓦礫を吹き飛ばし、炎を掻き消して現れたるは、宙を舞うアムフィシーン。翼刃より噴き出した蒼い炎をブースターにして滞空しつつ、尻尾の鋏で攻撃を仕掛ける。


『ギゴヴォァヴヴヴッ!』


 さらに、炎の噴出する方向を変え、ミサイルが如く突っ込んできた。


『ぬ~ん! 【ιπτάμενος(イプターメノス) δίσκος(ディスコス)】!』

「おわっ!?」


 しかし、たくあんは寸での所で飛翔して回避。ついでに、その辺の瓦礫に魔法を掛けてUFOに変え、足手纏い(プル)を戦線より離脱させる。


『ぬんぬんぬんぬんぬん!』

『ガァカァギィイイィッ!』


 そして、肺魚と大怪獣の空中決戦が始まった。


『ギャォッ、クァッ!』

『あたらないも~ん!』


 アムフィシーンが翼槍の突きを左右で繰り出すが、たくあんはぬんぬんと躱し口から大水球を放って反撃する。アムフィシーンは一瞬怯んだものの直ぐに体勢を立て直し、尻尾の鋏でたくあんを掴んで鶏冠の大火剣を叩き込む。


『ぬる~ん! う~ぬんっ!』

『ギャヴォッ!?』


 だが、たくあんのスベスベお肌は鋏の拘束をいとも容易く解き、滑るように大火剣を回避しながら、尾鰭で引っ叩いた。魔法で酸化能力を極限まで上げた、腐食するテールスイングだ。


『ぬぅ~んっ!』

『……カァッ!』

『めがぁ~っ!?』


 更なる追撃を加えようとするたくあんであったが、突如アムフィシーンが目から眩い光を放ち、彼女の視界を奪った。


『ガカァアッ!』

『うぬぬ~ん!』


 その隙にアムフィシーンは翼刃を変形、二本槍のムーンサルトを食らわせて、たくあんを墜落させる。


『クヴォオオオッ!』


 さらに、ジェットの勢いで急降下して体当たりをかまし、立ち直る前に仕留めてしまおうと、極太のビームを放った。尻尾をアンカーとして地面に突き立て、両翼刃と鶏冠を前に合わせて炎を集束、発射する、アムフィシーンの切り札である。たくあん絶体絶命のピンチ!

 と、その時。


『随分と情けないな、たくあん』


 何処からともなく火柱が飛んできて、ビームを相殺しつつたくあんを守る壁となった。


『ぬ~ん? きみってたしか……』

『シャナだよ。今はな』


 そして、颯爽登場するは、アスラ神族の「灼熱のシャナ」。どうして故郷へ帰還した筈の彼女が冥界下りをしているかは不明だが、今この場においては些細な事。


『いいから、さっさと決めるぞ!』

『わかったよぉ~♪ ぬーんっ!』

『ギャヴォァアアアアアアアッ!?』


 復活したたくあんがシャナに加勢し、二人分の力を浴びせられたアムフィシーンは跡形も無く吹き飛んだ。

◆出目金


 目が飛び出している琉金の変種を固定化した品種。琉金の体型にまん丸お目々が特徴的で人気もあるが、丸型特有の疾患の多さに加えて目の病気にもなり易い為、見掛ける機会に反して飼うのは結構難しい。もちろん、日頃のメンテナンスや飼い方次第ではあるが。

 ちなみに、我が家に住んでいる「バキュン」という黒出目金は金魚掬い出身の個体だが、既に三年近く生きており、元気もいっぱいである。先立った相方の「ズキュン」(こちらも黒出目金)も草葉の陰で微笑んでいる事だろう。

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