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ボクたちピグミー

あなただけに付いて行かない♪

「散開しろ!」

『……くっ!』

『わぁ~っ!』


 ポダルの掛け声で、三人が散る。一ヵ所に固まっていては全滅するだけだし、何より誰が最優先で狙われているのかが分からない。危険ではあるが、先ずは様子見をした方が良いだろう。


『ガヴァォオオオオン!』

『う~わ~!』


 一撃目を躱されたマンティコアが、空中で蜻蛉返りして、再び急降下してくる。狙いはたくあんのようだ。


(クソッ、思ったより頭が良い!)


 幼虫時代が嘘のようなキマイラの的確な判断に、ポダルが舌を巻く。事実、たくあんを失うと森の突破がかなり難しくなる。ラゴスは相手にもされていないが、実力差を考えると仕方ない。


『ゴァアアア!』

『させないっ!』

『ひゃ~ぁん!』


 キマイラの牙に噛み砕かれる寸前、ラゴスが素早く擦り抜けながら、たくあんを掻っ攫う。腐ってもネコ科動物、俊敏性はピカイチである。

 まぁ、それだけと言ってしまえば、それまでなのだが。


「伸びろ魔剣!」

『ギャヴォッ!?』


 しかし、そこでポダルの援護が入る。込める魔力の量を増やして、まるで如意棒の如く刀身をビョーンと伸ばしたのだ。燃費は最悪だが、彼女の持つ唯一の遠距離攻撃と考えれば、こんな手法でも無いよりはマシである。

 だが、機動力が蜻蛉並みのキマイラに当たる筈もなく、易々と躱される。


『コォォォ……バヴォオオオオッ!』

「うぉぁっ!?」


 さらに、口から凄まじい吐息を放ち、小規模な磁気嵐を発生させた。この旋風が持つ吸引力は凄まじく、ポダルは逃げる間も無く渦の中心に拘束される。

 しかも、そこへ火炎放射まで行った為、火災旋風が巻き起こり、周囲の木々ごとポダルを火炙りの刑に処した。



 ――――――バシュゥゥゥッ!



『【πιτσιλιά(ピツィリア)】!』

『ガァヴォオオッ!?』


 すると、何処からともなく膨大な水流が飛んできて、旋風諸共炎を鎮火した。


『いじめちゃだめだよぉ~!』


 もちろん、やったのはたくあんだ。


『ガァァゴォオオオオッ!』


 邪魔立てされた怒りに任せて、キマイラが再びたくあんへ襲い掛かる。

 しかし、それは悪手というもの。来ると分かっていれば(・・・・・・・・・・)罠に嵌める(・・・・・)のは容易い(・・・・・)


『【ηλιοφάνεια(イリオファーニア)】!』

『ギャヴォッ!?』


 たくあんの身体が太陽の如く輝き、眩い閃光がキマイラの視力を一時的に奪って墜落させる。こうなってしまえば、キマイラと言えど、まな板の上の鯉と同じである。


『ポダルちゃ~ん!』

「どりゃっしゃぉおおおおおおっ!」

『グギャアアアッ!?』


 そして、危機を脱したポダルの放った渾身の一閃が、キマイラの首を撥ね飛ばす。


「やった――――――」

『まだだよ! てぁっ!』

『ギキィィ!』


 と、勝って兜の緒を締め損ねたポダルに、首なしキマイラの尻尾が襲い掛かったのだが、寸での所でラゴスが尻尾で弾き返し、次いでポダルが止めの一撃を放った事で、キマイラは今度こそ息絶えた。


「危ねぇ……!」

『キマイラの祖先は昆虫だから、神経節を潰さないと』

「完全に動きを止めるまで攻撃し続けろって事か……」


 また一つ勉強になったねぇ~♪


『ふひゅ~……ちょっとやすませてぇ~』

「たくあん!」


 と、たくあんがへなへなと落ちてきて、ポダルが慌ててキャッチする。昨日はミルメコレオ、今日はキマイラと、強力な魔物との連戦は、確実にたくあんの体力を奪っていた。これは一晩眠ったくらいでは治らないだろう。


『ピグピグ~!』『ピグミミ~!』『ピグミン!』


 すると、隠れ潜んで遣り過ごしていたピグミーたちが、何かを伝えようと身振り手振りをし出した。


『プリ~ン……』


 ついでに深部で肉体形成を終えたスプリガンも、元のサイズで復活した。彼もまた何か言いた気にしている。

 だが、学の無いポダルには、彼らが何を言わんとしているのかがさっぱり分からない。頼みの綱のたくあんはすっかりお眠である。


『……彼らの棲み処に案内してくれるそうだよ。そこなら安全だって』

「おお、分かるのか!?」

『多少はね。精度は片言程度だけど』

「充分だよ、ラゴス! 助かった!」

『そ、それ程でも……』


 ポダルの心からの感謝に、ラゴスが照れ臭そうに視線を逸らした。やはり褒められ慣れていないようだ。


『ボクタチ!』『ピグミン!』『アナタダケニ!』『ツイテイク!』


 こうして、たくあん一行はピグミーの棲み処で厄介になる事となった。胴上げのようにワッショイワッショイ持ち運ばれるポダルたちの姿は、傍から見ても非常にシュールな光景である。

 ……やっぱり君たちピ○ミンだよね?

◆ピグミー


 インドやアフリカ辺りに棲んでいる「小さな人」、ようはギリシャ神話における小人族である。コウノトリ(もしくは鶴)と喧嘩する奇妙な毎日を送っているが、これは何処ぞの女邪神が原因らしい。「ガリバー旅行記」に出演した事もある。

 正体は動く地衣類。主に人間の子供の死体に寄生して新たな肉体として魔改造して活動する。

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― 新着の感想 ―
[良い点] かわいいやつらだけど本格的なバトル(間違えれは死ぬ)を展開してます!絵をイメージするとさらに楽しくなりました!くせになります… [気になる点] 特にありません [一言] またお目にかかりた…
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