命ある限り
戦え!
《ヴォアアアアッ!》
ヘラが帰還雷撃の爪痕を大地に刻み、円盤カッターの嵐をシュシュっと放ち、十二本の大竜巻を龍が如く発射する。
『ぬぬぬぬーんっ!』
対するたくあんは雷爪撃の荒波を素早い身の熟しで躱し、台風手裏剣はバリアをピンポイントで凝縮展開した拳で打ち砕き、続く十二嵐龍神を超轟哮によって吹き飛ばす。
――――――ガォン!
《ギャヴォオオッ!》
すると、ヘラが超光速移動で背後を取り、雷神拳を振り下ろした。
――――――ブゥン!
『ぬぅうううんっ!』
《グヴォァアアッ!?》
だが、たくあんもまた転移魔法により位置を変え、強烈なリバーブローからのアッパーカットを食らわせた。
『ぬぅん! ぬぅん! ぬぅん! ぬぅん! ぬぅん!』
さらに、身体を∞軌道で動かし、左右の連打を叩き込む。音が非常に痛そうである。
《グゥルルル……!》
これには流石のヘラも蹈鞴を踏む。外皮装甲を貫通して脳が揺さぶられたのだろう。
……逆に言うと、ここまでしないと小動もしないという事でもあるが。
《ヴォアアアアア!》
と、ヘラが己を嵐に見立てた高速回転で突進を仕掛けてきた。アルゴ・ヒュドラに大ダメージを与えた脳筋技だ。食らえば一溜りもあるまい。
『ぬぬぅぅぅぅん!』
しかし、たくあんは避ける処か同じように大回転、空間すら抉る魔弾となって邀撃した。凄まじい轟音と爆発を巻き起こしながら両者が激突し合う。
――――――ガキィイイインッ!
『ぬぅ~!』《フヴゥゥゥ!》
そして、何度かぶつかったものの決着は付かず、両者は一旦仕切り直した。
『ぬぬぬぬぬぬぬぬん!』
先に仕掛けたのはたくあん。時を置き去りにする程の速度でバリア・バレットを繰り出す。
《ハァアアアアアアッ!》
だが、ヘラは凄まじいバレットドッジで回避して、エルボーでたくあんの顔面を殴打した。
『ぬん! ……いった~い!』
《ヴルォアッ!》
たくあんも負けじと手刀を放ったのだが、ヘラは頭部の硬度を一時的に爆上げし、逆に痛い目を見させる。しかも、そのまま頭突きを食らわせ、怯みを狙う。
『ぬりゃあああああああっ!』
《ブヴォァアアアアアアッ!?》
しかし、たくあんは怯む事無くボディーブローを叩き込み、更には破壊光線を撃ち出して、ヘラを天高く吹っ飛ばした。分厚い暗雲を貫き、陽光の下へ曝け出される。
《フゥゥゥァ……ヴォルァアアアアアアアアアアアアッ!》
すると、ヘラが東京二十三区を覆い尽くす程の極大嵐を生み出し、地表へ打ち下ろした。避けるとか守るとか、そういう問題では無い。
《フゥッ! ハァッ! ブルヴォォォォ――――――》
さらに、嵐の中で一際輝きながら、滅びの呪文を唱え始める。
そう、たくあんを脅威と見做し、本気の攻撃を仕掛けたのだ。
『ぬぅぅぅぅぅ……ッ!』
対するたくあんも、極大嵐の拘束を正面から突き破って、命の耀きを以て反撃に転じる。
《【ανάθεμα】!》
『【Ψυχή】!』
――――――GABBBBBBBBBBBBBBBBB!
――――――ZAAAAAAAAAAAAAAAAAA!
そして、互いにL字に組んだ腕から光線を同時に発射。
さらに、ビーム同士がぶつかっても留まる事無く突き進み、零距離の撃ち合いに縺れ込む。その様はまさに天使と悪魔の対立と言った構図である。
《ギャヴォオオオオオオオオオオオオオッ!》
『ぬぅうううううううううううううううっ!』
――――――GABBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB!
《グルヴォァアアアアアアアアアアアアッ!》
『はぁあああああああああああああああっ!』
――――――ZAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!
《ヴァォオオオオオオオオオオオオオオッ!》
『てぁあああああああああああああああっ!』
――――――GWABBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB!
《ゴァアヴォオオオオオオオオオオオオッ!》
『うぅぅぅりゃあああああああああああっ!』
――――――ZWAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!
双方共に一進一退の接射を続けていたが、
《ヴォアアアアッ!?》
少しずつヘラが押され始め、やがて身体に罅が入り出した。神の無限出力が力負けし始めたのだ。
『ぬぬぬぬぬぬぅううううううううううううううっ!』
『『『行けぇえええ!』』』《《キュアアアアッ!》》
たくあんは独りではない。ポダルの、クリスの、ラゴスの、ケリュネイアとディオメデスの魂が宿っている。絆の力は、全てを滅ぼす天災すらも押し返し、ぶっ貫けるのである。
《……チィィィィクゥゥゥゥゥショォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!》
そして、たった独りで戦い続けたヘラの肉体にも限界が訪れ、粉々に打ち破られるのだった。
◆絶滅
生物は何れ滅び、種は何時か絶える。しかし、それは今ではないし、誰かの都合で引き起こされる筋合いも無い。
生きよ。




