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根源破滅天魔神

絶望せよぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!

 「サロニカ」防衛線にて。


「何なんだ、あいつは……!」


 指揮官が忌々しそうに悪態を吐く。

 神に追われた魔獣たちから街を守る為に戦い続けている防衛軍だが、敵の数は未だ減らず、少しずつ前線が押し上げられている。恐怖の対象が直ぐ傍の山頂にて暴威を振るっているから仕方ないのだろうが、いい加減にして欲しい。何ならアスラ神族や謎の巨大生物が刺激したせいで、益々どうしようもなくなっている感もある。


『フゥゥゥ……ッ!』


 だが、今彼らを悩ませているのは、魔獣たちの中でも一際巨大で狂暴な、それでいて奇妙としか言いようのない行為を繰り返す“こいつ”である。一頻り暴れたかと思えば、周囲の魔物を食い千切り、かと言ってこちらの味方でもなく、普通に攻撃を仕掛けてくる。本当に一体何なのだろう。


「奴を最優先で退けねば……うおっ!?」


 さらに、悩める指揮官の下へ、新たな悩みの種(・・・・・・・)が舞い込んできた。


「君たちは――――――」


 ◆◆◆◆◆◆


 キッソス山の頂。


『【mirabilia(ミラビリア)】!』


 たくあんの物とは似て非なる魔法により、アルゴスとほぼ同じサイズに巨大化するシャナ。和金、コメット、ヒドジョウ、ヌマエビやタニシの群れと言った、日本のアクアリウムショップに置いていそうなラインナップの使い魔を召喚し、アルゴスへぶつける。


《ブォフォフォフォフォフォッ!》


 しかし、全ては無限大エナジーによって邀撃された。ズル過ぎる。

 ただし、撃ち落とされるのはシャナも想定済みなのか、それらを生贄に距離を詰め、見事に正面突破した。

 まぁ、大変なのはこれからなのだが。


『はぁああああっ!』

《フォヴァアアッ!》


 生身を巨大化させただけのシャナに対して、全身を百の単眼巨人(ギガンテス)で装甲化しているアルゴスとでは、明らかに強度が違う。殴って拳を痛めるのはシャナだし、蹴って脚を折るのもシャナだ。その差は数打で如実に表れ、あっと言う間に満身創痍となった。

 そして、最後の閃光によって巨神シャナは呆気無く滅ぼされる。


『掛ったな、阿保が』


 ――――――なぁんちゃってぇ!


《ブヴォァッ!?》


 戦いを優位に進めていた筈のアルゴスが、何時の間にかダメージを負っていた。シャナを殴り、切り裂き、へし折った装甲部分が腐食し始めたのである。

 さらに、ボロボロだったシャナのボディが修復され、元の綺麗な生身に戻り出した。よく見ると無数の死体が集まり一体化する事で傷が回復しており、かなりグロテスクな様相を醸し出している。


『秩序を乱す愚か者は、己の滅ぼした者によって滅ぼされる。それが永劫回帰の、驚死(ミラビリア)の罠なり』


 これぞ【mirabilia(ミラビリア)】の罠。

 生態系を乱し多くの生物を絶滅させるアルゴスの習性を利用し、サロニカ防衛軍や追い立てられた魔物たち、果ては殉職した同僚のアスラ神族すら活用して、触れた物に死の呪いを与える巨神兵(よろい)を膨大化し続ける。それがシャナの目的だ。彼女は最初から全てを見捨て、生け贄に捧げる腹積もりだったのである。

 悪魔かお前は、と言いたい所だが、新人とは言えシャナもアスラ神族……神の一柱なので、考えている事はアルゴスと変わらない。同じ穴の狢だ。


『貴様は存在自体が……無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!』

《ブヴォォォォォッ!》


 今度はシャナのターン。あらゆる損壊を度外視した、無慈悲な暴力がアルゴスを襲う。壊れた傍からスクラップを集めてまた壊す、スクラップ・アンド・ビルドすら鼻で嗤う限界突破の殴打によって、一つ、また一つと、百眼の鎧が解かれていく。

 そして、全ての眼が抓まれた所で、止めの一撃が降り注ぐ。


《悲鳴を上げろぉ! 雄牛(うし)のようなぁああああああああああ!》

《ブモォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?》


 ギリシャでそれはアカン。



 ――――――ピィー……ッ!



《オォォォ……》


 文字通り全てを打ち砕かれたアルゴスがダラリと仰け反り、そのまま力なく倒れる。



 ――――――ピキィイイン!



《……ギゴガゴォグヴォオオオオオオオオオオオオオオオッ!》

『何ィッ!?』


 ……かに思われたが、何と斃れる事無く踏ん張り、自ら百眼巨人の死骸(ギガンテス)を脱ぎ捨て、真の力と姿を解放した。金色に輝くグレイボディに蒼い稲妻が血走る極光の巨神が爆誕する。



◆『分類及び種族名称:根源破滅天魔神(ダイマシン)=ゼウス』

◆『弱点:なし』

◆ゼウス


 ギリシャ神話における最高神にして稲妻の化身。農耕の神「クロノス」と大地母神「レア」の息子で、父を打倒して全ての頂点に立った超絶叩き上げの神でもある。

 しかし、彼を語る際に一番話題に上がるのは、顔さえ良ければ誰でも犯すとんでもない「浮気性」であり、メンヘラ極まる正妻による制裁が何故か被害者女性に向いてしまう為、ゼウスに目を付けられたが最後、その女性は永遠なる地獄を見る破目になる。

 この世界におけるゼウスは、アルゴスの正体にして真の姿であり、間違いなく最高神ではあるのだが……?

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