戦いの後に
えびえび~♪
「さて、どうしたもんかね……」
屍と化したラドンを見遣りつつ、ポダルが呟く。
『とりあえず、食べてみましょうか』
クリスが調理器具を構えた。
「お前も割と野生児だよな」
『ジビエ料理と言って欲しいわね』
まぁ、元が蜻蛉とは言え、体内は鳥に近い構造なので、意外と美味しいかもしれない。
『えびじゃないのぉ~?』
『ごめんね~、たくあん』
「流石に空中の生物に海老の味を求めるなよ……」
何処ぞの地底怪獣と一緒にされては、ラドンも困るだろう。こいつも幼虫時代は土中の生物だけど。
『うきゅぅ~』
《《可愛い》》
一番ダメージを受けているであろうラゴスが、蹲りながら猫撫で声を上げた。ゴロゴロしてあげたくなる。
『ヒヒ~ン……』『キュウキュウ……』
ディオメデスとケリュネイアは、お互いに傷を舐め合って大人しく休憩していた。随分と仲良くなった物だ。あれだけの苦難を共に乗り越えただけあって、種族の壁を越えた絆が深まっているのかもしれない。
『プリ~ン……』
プリ~ン♪
「ま、ちゃっちゃと始めようか。私も皆も腹ペコだからな」
『そうね。体力を回復する為にも、美味しく料理してあげましょう♪』
という事で、クリスは料理を開始した。解体はポダルが担当している。ついでに使えそうな素材は確保しておいた。
『……肉の質感的にソテーにした方が良いかもね』
「フライパンは?」
『甲殻をそのまま使えば良いわよ』
「なるほど」
ラドンの甲殻でラドンの肉を焼くという、実に野性味溢れる方法でソテーにしていくクリス。相変わらずの腕前である。ラドンの脂身を使い、パチパチと焼き上げる。美味しそうな匂いが立ち込めてきた。
『ついでにグリルも作りましょ。ローストは時間が掛かり過ぎるから、今回はスルーね。ポダル、火を見てて頂戴』
「あいよ」
さらに、甲殻で組み上げた竈でグリルも作っていく。ソテーを作っている間に調理しようという算段だ。その辺に自生している食べられる植物を香草代わりに味付けして、ゆっくりゆっくりと炙り焼きにする。香ばしい煙が漂い、嫌という程食欲を刺激してきた。
『あら、尻尾の方は海老に近い身をしているわね』
『えび~♪』
しかも、たくあんにとっては一番嬉しい知らせが。流石は元節足動物、部分的には海老や蟹に近い身を持つようである。良かったねぇ~♪
『……さてと、出来たわよ~♪』
「さっさと集まれ~」
『ぬ~ん♪』『わ~い♪』《《待ってました~♪》》『プリ~ン♪』
そんなこんなで料理が完成。ラドンのソテー、グリル、テールスープと、ラドン尽くしのジビエ料理が並ぶ。太古の遺跡で青空レストランとは、中々に洒落ている。
『ムシャムシャ』『ハムハム』
基本的に活餌しか食べないディオメデスとケリュネイアは、肉の余りと集めた草だ。
『『いただきま~す♪』』《《ごちになりま~す♪》》『プリ~ン♪』
『はい、どうぞ~♪』「私らも食うけどな」
さぁ、皆で揃って頂きまぁ~す♪
『あむあむあむあむあむあむ♪』
『もきゅもきゅもきゅもきゅ♪』
「『可愛いなぁ……』」
頬っぺたを丸くしたたくあんとラゴスからしか得られない栄養分がある!
《相変わらず美味しいですね~♪》《旅に料理は付き物ですよね~♪》
ピグミーたちは見た目だけは可愛いのだけれど……中身がね。
『プリプリプリン♪』
スプリガンに関してはデザートがメインディッシュを食べているようにしか見えない。プリン体が凄い事になりそう。
『『ごちそうさま~♪』』《《ゴチになりました~♪》》『プリリ~ン♪』
「『おそまつさま~♪』」
そして、ご馳走をお腹いっぱい心行くまで食べたたくあんたちは、見張りをディオメデスとケリュネイアに任せて、スプリガンのプルプルベットでゆっくりと休むのであった。
◆エビ
十脚目に属する甲殻類で、蟹やヤドカリ以外の全ての種類が属している。「ヨコエビ」だの「カブトエビ」だの「ホウネンエビ」だのと、名前に「エビ」と付くがエビじゃない奴は結構居る。卵から生まれた幼体はプランクトンとして生活し、脱皮を繰り返して親と同じ姿となる。蟹と違ってプリプリとした身が特徴で、とっても美味しい。




