空の大怪獣
飛ぶぅ~♪
『どらごんふらいだ~』
羽化したラドンを見て、たくあんが呟く。そうだけどそうじゃないだろ。
『ゴォルヴァッ!』
と、究極生物と化したラドンが羽ばたき、舞い上がる。高速で羽ばたいて飛翔する事が出来る辺り、翼竜染みているのは姿だけで、根本的に身体構造が違うらしい。
『ギゴォォヴァヴヴヴゥゥッ!』
『う~わ~ん!』「ズワォッ!?」
その上、低空飛行するだけで衝撃波を発生させる程のスピードと、猛烈な空気摩擦でも掠り傷一つ付かない強靭な甲殻を有しているので、反撃するのは容易では無かろう。
――――――ゴォオオオオオオッ!
そして、この火炎放射だ。悠然と滑空しながら地表を焼き払う様は、まさしく天災である。実にファンタジーでカッコイイが、やられる方は堪った物ではない。
「スプリガン!」『ワイバ~ン!』
『ぼくもとぶぅ~♪』
もちろん、馬鹿正直に火炙りにされる謂れは無いので、ポダルはワイバーンに変身したスプリガンに跨り、たくあんは自力で空を飛んで対抗する。
《僕らも手伝いますよ~!》《ハイヨ~!》
『ワタシも頑張るわよ!』
さらに、地上からはピグミーたちとクリスが援護射撃を行う。ピグミーたちは魔弾で、クリスは自前の弓矢だ。甲殻が硬過ぎて大して効果が無いようだけれど、気を散らすぐらいの意味はある。
ちなみに、ラゴスはケリュネイアが背中に乗せて避難させている。一応は助けられたとは言え、随分と義理堅い奴である。
『ぬんぬんぬんぬんぬん!』
たくあんが火球を連続で放つ。
『ギゴォアアアアヴヴヴゥ!』
『きいてな~い! ひゃ~!』
だが、ラドンにはまるで効いて無かった。やはりマグマの中を泳ぐような奴は耐熱性が段違いだ。たくあんは逆に衝撃波で吹き飛ばされた。
「ギヴェアアアアアアアアアアアアッ!」
『ギヴォァアヴヴヴッ!?』
それならばと、ポダルが大咆哮で貫通ダメージを与えた。甲殻で大分減退されているとは言え、踏ん張りの効かない空中で音波攻撃は辛かろう。
『【κεραυνός】!』
そこですかさずたくあんの雷魔法が発動した。流石に電気は通じるようで、ラドンが大きく怯む。
《今だ!》《発射ぁ!》『食らえ!』
そして、ピグミーたちが放った閃光弾をクリスが寸分違わず射抜き、ラドンの眼前で炸裂させた。バランスを崩した所に目晦ましを食らい、ラドンはとうとう地へ墜ちる。
『ゴヴァアアアアッ!』
しかし、一方的にやられてばかりのラドンではない。ヤゴ時代にも使っていた尻尾の鞭を振り回し、たくあんたちの追撃を防ぐ。
『ギギャヴォオオオッ!』
《ベヘッ!?》《モスゥ!》
さらに、視力が回復した瞬間、ラドンが飛翔しながらサマーソルトを繰り出し、ピグミーたちを尻尾でホームランする。
『ガヴォオオオオッ!』
『きゃあっ!』
そして、グルリと円を描くように火炎を吐き、クリスをも戦闘不能に陥らせる。これで四人も欠員が出てしまった。
「この野郎!」
『ギゴヴァアアアアヴヴッ!』
「何ィッ!? ……ぐぉあっ!」『ギェエエッ!?』
しかも、ポダルの爆裂パンチにも耐え切り、ムーンサルトの尾撃で叩き落した。こいつ、かなり強い。究極生物の名は伊達では無いのだろう。まさか、たくあん一行がこれ程までに追い込まれるとは。
頼みの綱は……たくあんのみ!
『ぬぅぅぅん……!』
すると、たくあんが力を溜め始め、
『【σπίθα】!』
『ゴヴォァゥッ!?』
ギリギリまで引き寄せた後、眩く輝きながら突っ込み、ラドンの胸部をぶっ貫いた。そこは今までポダルたちの攻撃が当たり続けた場所であり、蓄積したダメージによって脆くなっていたのである。
『ふにゃ~ん……』
「ヤ、ヤバかったな……」
『死に掛けたわ……』
《《もう駄目~》》
『プリンプリ~ン……』
こうして、どうにかこうにかラドンを倒す事は出来たが、全員ズタボロだった。今日はこれ以上、一歩も動けない。旅の続きは、また明日にするとしよう。
それじゃあ皆、お休みなさ~い♪
◆翼竜
中生代に生きていた飛翔性の爬虫類。鳥でも無ければ恐竜でもない、史上初の飛翔した脊椎動物。その為、翼の構造は鳥類よりも脆い(皮膜を指一本の骨で広げているから)。後に登場した鳥類とはある程度共存していたが、「K-Pg境界」の大量絶滅を生き延びる事が出来ず、姿を消した。




